転機
宜しくお願いします。
いつの時からか、惑星、または惑星間での戦争が続いた。
その戦争に終わりはない。どちらか一方が物資を使い果たし、相手の惑星の統一や惑星内部の統一などをしようものなら、相手も抵抗・迎撃・漁夫の利を狙うことは目に見えている。
惑星を統一する目前で内部からのクーデターが起こり、滅んだ皇帝も居た。
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ある惑星では、内戦が各地で起こっていた。
少年ライトは数ヶ月前に右足を負傷した。
その足は最早使い物になりそうもない。
彼は荒廃した住宅街の内に入り、近づいて来る重みのある足音をやり過ごす。
彼の住む惑星では毎日のように爆撃音や銃撃音、押し寄せては遠ざかる人々の群れの音が至る所で聞こえてくる。
紛争地帯に住む一般民衆が争いに巻き込まれることは珍しいことではない。
半年前から、類稀なる才能と人望で各地を統一してみせてことで、賢王と呼ばれるようになった皇帝ウィーズマンに対し、およそ三千万人の軍人を従える第一軍部師団の元帥バイゼルによって、新兵を含む三千万超の軍人によるクーデター(クーデタ)が勃発した。
この時、賢王ウィーズマンは彼らの暴走の抑止に励んだのだが、具体的な策を取ることができずに王都は陥落する寸前までに追い込まれていた。
その為、その国内の秩序は乱れに乱れ、最早纏まることさえも儘ならない状況に置かれていた。
話は戻るが、少年ライトは半年前のクーデターによって両親を失った。今居るのは医者の叔父のみである。
叔父は田舎に暮らしており、既にクーデターのことは知っているはずだ。
ライトが巻き込まれているかもしれないと慌てているかもしれない。
心配かけまいとどうにかこうにか、叔父の住む町を目指して歩こうとするものの、脚がどうにも言うことを聞かない。
彼は痛みに麻痺してしまったせいか、まるで死者になったかのように呻きながら歩こうとしている。
彼にはもう気力は無い。
逃げ回ることで精一杯だった彼の神経は擦れ、限界だったのかもしれない。
「….ヴィ..ク.....ト...ル..............」
彼は薄れていく意識の中で、意に介せず叔父の名を口にした。
生への執着故か。はたまた、縋ろうとしているのか。
「おい餓鬼。おい!チッ、こいつを手当てしてやってくれ。今なら間に合う。」
「お前が人助けか....。どうかしちまったのか?お前はそんな奴じゃな.......」
「口じゃなくて手を動かせ!!そいつはDr.の親族かも知れねえ!!見殺しになんかしたら、顔も合わせらんねーだろうが!!」
「あ!?こいつが...!?わかった!お前も手を貸せ!とにかく止血から先だ!」
数十分後...
「うっ.........、」
「やっとか。一時はヒヤヒヤしたぜ。よくあんな状態で生きてたなコイツ。とんでもねえ気力だな。さすがはDrの親族ってところか。」
「まだ意識がちゃんとしてないな。血が足りてなさそうだな。ちょっと輸血させてくれ。」
「は、は!?ふざけんな!血ならすぐ戻るだろ!」
「そうも言ってられる状況じゃないのはわかってるだろ!ここは紛争地帯もいいとこだ。今起こってる紛争の中心地だぞ!このままこいつをほっとけば、俺たち諸共死んじまうぞ!」
「そんなの知らねーよ!!俺にはそんな義務はな...」
「それに、彼の血液型に対応してるのはお前だけなんだぞ!今こいつをほっとけば、見殺しどころじゃないぞ!お前が注射を嫌がって結果的に殺した事になる!それでもいいのか!?」
「チッ......くそッ........ん.....、オイ、早くしろ!!」
彼は意を決し、腕を捲って前に突き出した。
「あ、ああ、わかった。」
その事に呆気を取られるるもすぐに我に帰り、輸血の準備を進める。
◇
「....と言うわけで君は今生きているんだ。感謝するなら彼にしてくれ。死ぬほど嫌いな注射を自ら(嫌々)やってくれた。君はこれを借りだとか思ってくれなくていい。これは僕たちのDr.ヴィクトルへの恩返しさ。...そんなやつれた顔してないで、君自身から言ってやってくれよ。君は一応彼の恩人なんだ。」
「あ、ああ...わがってるよ!!」
「全く....うるさいなぁ。」
「黙れ!...おい小僧。お前のジジイの名はなんだ。言え。」
突然のことで状況が掴めない。
錯乱状態に陥った僕は訳もわからず質問に答え続けた。
「やっぱテメエはDrの孫だったのか!」
「まさかだよね....。Drもクーデターが起きたのを知ってからいつも心配そうに言ってたからね。....Drには少しでも恩返しになったかな。じゃあ君の名はライトで間違いないね?」
僕は頷いた。
まさかこの人たちがお爺ちゃんの知り合いだったなんて....
僕は久し振りにまともな会話をした事で、お爺ちゃんや家族の温もりを思い出してしまった。
もう絶対に思い出さないって決めてたのに....
「お、おい!テメエ何泣いてんだよ!!」
「....もう大丈夫だよ。君をDrのところへ連れて行ってあげよう。君をDrが待ってる。」
僕は幸運な事に命を繋ぎ止めた。
もしかしたら、この人達がウソを言っているかも知れない。
でも、なんだかこの人達を怪しむなんてことは僕にはできなかった。
この国、この世界の命運は傾き始めている。
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