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5 婚活に賛成?反対?


な、なんなんだろう……。



朝食を食べ終えた私は、大事な話があるからと言われてエリックの執務室に呼ばれた。

私の前には、テーブルを挟んで兄であるエリックとカイザが並んで座っている。


エリックはいつものように真顔、そしてカイザは何故かすごく不機嫌そうな顔をしている。

私の後ろにはイクスが立っているが顔は見えない。



なんなの? この空気……。



「……リディア。お前に確認しておきたい事がある」


「は、はい。なんでしょうか?」



エリックがなにやら慎重に話し始めた。


そんなに深刻な話なのかしら……?



「お前に会いたいと言っている者が……たくさんいるのだ」


「私にですか? たくさん、とは?」



私に会いたがってる人がいる?

そんなの転生してから言われた事なんてないわ。

あっ。もしかして、巫女の私にってこと??



「お前と結婚したいと言う男共だ!」



よく理解していない様子の私にイライラしたのか、カイザが少し怒り口調で口を挟んでくる。

エリックが隣にいるカイザをジロッと睨んだが、カイザは全く気にしていないようだ。



「結婚!? 私と!?」


「お前の……半年間の猶予の話が、何故か広まってしまったのだ。

昨日来たサイロン様からも結婚の申し出がきているぞ」



げっ!!! ウソでしょ!?

あの男、サラに惚れたって言ってなかった!?

小説の中では、遊び人だったけどサラにだけは一途だったはずなのに!


サラを国外追放しちゃったから、その気持ちもなくなっちゃったのかしら!?

あの男に好かれるのは困る! 困りすぎるわ!!



「それは……ちょっと……」


「サイロン様は断っても構わないが、他の方には皆一度は会わせようと思う。

ルイード様と婚約解消をしたなら、どちらにしろ新しい婚約者を探さなくてはならないからな」



エリックの提案に、今度はカイザがエリックをジロッと睨んでいる。



どうやらこの2人の意見は対立しているみたいね……。

でも、新しい婚約者を探す……か。そうよね。

誰かそんな相手を見つけないと、ルイード皇子との婚約も解消されないわけだし……。


でもそんな1人1人とりあえず会ってみるなんて、それこそ本当に婚活みたいじゃない!

まさか異世界でそんな事をするとは……。



「…………」



なんとなく、後ろにいるイクスが今どんな顔をしているのか気になった。



イクスは、エリックと同じで婚活賛成派? それともカイザと同じで反対派?



「嫌なら断ってもいいんだぞ!?」



カイザが少し強めに言ってくるが、なんと言えばいいのかわからなかった。



そりゃもちろん私だって恋とかしたい!

今までは処刑エンド回避ばかり考えていたけど、好きな人と幸せになれるエンドを求めてみたい!

ありがたい事に、私と会いたいと言ってくれてる貴族男性が何人もいるらしいし、願ってもない事じゃない。


好きになれる人がいるかもしれないんだし、全員と会うべき!



……そうするべきだとわかっているのに、何でだろう。

ぜんっぜん気が進まない!!!


貴族男性? 別に会いたくない。

どんな人に会っても好きになれる気がしないのはなんで……?



「リディア?」


「あ……えーーと……」



どうしよう。なんて答えよう。

気が進まなくても、やっぱり会う方がいいんだよね?

今は好きになれる気がしなくても、実際に会ってみれば恋しちゃうかもしれないし!



私が何も答えないので、エリックが不安を取り払うように付け加えて説明してくれる。



「会うと言っても、2人きりで会わせたりはしない。

俺かイクスが必ず一緒についてるし、会うのも1人5分くらいしか会わせないつもりだ」



5分で恋ができるかーーーーい!!!


あっ、いけない。思わずツッコんじゃったわ。

でも……え!? 1人5分!?

売れっ子キャバ嬢かよ!!


エリックから男性に会えなんて言うのめずらしいとは思ったけど、まさか1人5分とは……。

それじゃ会う意味なくない!?

顔と声と雰囲気くらいしかわからなくない!?



「何で俺が入ってないんだよ!」


「お前が一緒ではすぐに邪魔するのが目に見えてるからな」



カイザとエリックがまた口論を始めたので、慌てて返事をした。



「わかりました! とりあえず皆さまと会ってみます」


「……わかった。では、これから応接室に呼ぶ事が増えると思う。

嫌だったり、何かあったらすぐに言うんだ。いいな?」


「はい」



私の返事を聞いてカイザは不満そうな顔をしていたが、文句は言ってこなかった。

話が終わったので、イクスと一緒に執務室を出て自分の部屋へと戻ることにした。



「…………」


「…………」



黙ったまま私の斜め後ろを歩くイクス。


イクスは昨日私の部屋から出て行った後、夕方には戻ってきた。

どんな顔して話せばいいのか……恥ずかしくて気まずかったけど、イクスの方は全然平気そうだった。



真顔で淡々とメイと話したりしてたわよね。

私がまだイクスの顔が見れなかったから、私とは話さなかったけど……。

きっと話しかけてても普通に返してきたんだろうな。



私は自分の左手をチラッと見た。



……私だけ気にしすぎなのかな?

今朝も、イクスは特に照れた様子もなく普通だったし。

昨日見た照れたイクスは幻だったの?


夕方戻ってきたイクスは、どう見ても照れてる様子なんて微塵もなくむしろ暗く落ち込んでるみたいだったのよね。



「…………」


「…………」


「……ねぇ、イクス」



名前を呼びながらイクスの方に振り返ると、深いグリーン色の瞳と目が合った。

やはり今日のイクスもどこか元気がなさそうだ。



「はい。どうしました?」


「…………」



あ。ヤバ。何言うか考えてなかったのに、いきなり呼んじゃったわ!

えーーと、えーーーーと……



「たくさんの男性と会っていくなんて、まるで婚活パーティーみたいよね?

まだ16歳なのに変な感じ〜」



あはは……と笑いながら言ったが、態度はすごく不自然になってしまった気がする。

イクスはキョトンとした顔をして、真剣な顔で聞いてきた。



「コンカツパーティー……とは……?」


「……なんでもないわ」



しまった!!!

この世界には婚活パーティーなんて言葉ないんだった!!

焦りすぎて変な事言っちゃったわ。


違う話題! 何かイクスに聞きたい事とかなかったかな!?

えーーと、えーーーーと……



「イクスは私が貴族男性とたくさん会うの、賛成派? 反対派?」


「え……」


「…………」


「…………」



あああーーーー。これもなんか違う!!!

さっき頭で疑問に思ってたことを口に出しちゃった!!


イクス困ってるじゃん!!

そうですよね! そんな事聞かれても困りますよね! どうでもいいわって感じですよね!



「えーーと今の質問もなんでもな……」


「反対派です」


「え……?」



歩いていた足を止めて、イクスがボソッと小さな声で言った。

私も足を止めてイクスを見つめる。



「反対……なの? カイザお兄様と同じ意見?」


「そうですね。

カイザ様と同じように、『そんなヤツらは全員無視すればいい。文句を言ってくるヤツがいたら俺がすぐに殴り込みに行ってやる!』と同じ意見ですかね」



カイザってばそんな事言ってたの!?

貴族相手に……相変わらずめちゃくちゃね!



「というか、エリック様も内心は全く賛成なんてしていないですよ。

ただ家のことやリディア様の将来を考えて、1番いいと思う選択をしているだけです。

カイザ様は自分に正直なだけですよ」



私の将来を考えて……?

確かにここで婚活断ったら、私は望んでいない状態で王宮に嫁ぐか婚約解消できてもその後結婚できないかの2択になる可能性が高いもんね。


エリックは先の事まで考えてくれてるんだわ。


カイザは今のことしか考えてないって事ね。

無視したり殴り込み行こうとするなんて、本当に先の事をなんにも考えてないわ!

……でも私が男性と会うのを反対してくれるのは、大切にされてるみたいでちょっと嬉しいけどね。



「……じゃあイクスは?」


「え?」


「イクスもカイザと同じで自分に正直ってこと?」


「俺は……」



イクスも兄達に負けないくらい過保護なのよね。

反対派ってことは、将来の心配よりもやっぱり今の心配のが強いのかしら?



先程までは元気なさそうな様子で話していたイクスが、何故か少し頬を赤らめて困ったように笑って言った。



「……俺が本当に正直になったら、カイザ様よりももっとひどい事を考えてしまうかもしれません。

リディア様の将来など全く考えず、自分勝手なひどい欲望を……」


「ひどい欲望?」



私が聞き返すと、イクスは急にニヤリ……と悪人っぽい笑みを浮かべて低い声でわざと怖がらせるような口調で話しだした。



「そうですね……。

この屋敷に向かう馬車を全て道中で始末して、誰も屋敷に近づけないようにしたり……。

リディア様を部屋に閉じ込めて誰にも会わせないようにしたり……」


「こわっ!!」


「ははっ。冗談ですよ」



悪人顔から一転、イクスは爽やかに笑ってまた歩き出した。

久々に見たイクスの笑顔にドキッとしてしまう。



さっきの冗談はこわかったけど、イクスみたいな人にならそれだけ執着されてみたいかも……とか少し思ってしまった私はおかしいのだろうか。


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