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かげぼうし  作者: 雨世界
1/1

1 ずっと遠くに行ってしまう、君を思う。

 かげぼうし


 登場人物


 山本笹 十四歳 中学生


 前田千代 十四歳 中学生


 浦島誉 十四歳 中学生


 プロローグ


 もう一度、君に会いたい。


 君は不器用すぎるくらいに、まじめでまっすぐな人だった。

 君の姿を見るたびに、私の心はときめいた。

 いつの間にか、私は君に恋をしていた。


 本編


 ずっと遠くに行ってしまう、君を思う。


 あなたのことを考えると、胸が張りさけるくらいに、私の心は痛くなります。


 真っ赤に紅葉した紅葉や楓がとても色鮮やかで綺麗だった。山本笹が初めて浦島誉くんと出会ったのは、二人が中学生のときだった。

 中学校の行事でみんなで旅行に行った秋の山の中で、転んでしまった笹の手を「大丈夫?」と言って握って、起こしてくれた浦島くんの手のぬくもりを笹は今もまだ、(あのときの透き通るような青空と綺麗な秋の紅葉した色鮮やかな風景と一緒に)とても鮮明な記憶として覚えていた。

「どうもありがとう」とにっこりと笑って笹は言った。

 すると浦島くんもにっこりと笹に笑い返してくれた。

 それが本当に嬉しかった。


 それから浦島くんは「それじゃあ、僕はこれで」と笹に言って、すぐにどこかに行ってしまった。

 笹は「笹ちゃん、大丈夫? なんだかぼーっとしてるけど」と声をかけてくれた友達の前田千代ちゃんの言葉もあんまり頭の中に入らないくらいに(一応、「うん、大丈夫」と返事はしたけど……)遠くに歩いていく浦島くんの背中に見とれていた。


 それから笹はずっと浦島くんのことを目で追いかけるような生活をするようになった。

 笹は自分が浦島くんに恋をしていることを自覚していたのだけど、恋の告白をすることはできなかった。


 本当にたまに浦島くんと目と目があうと、浦島くんは笹ににっこりと笑顔を返してくれた。

 その瞬間、本当に一瞬だけ、世界の時間が止まった気がした。

(でも次の瞬間には、「どうかしたの笹ちゃん?」と言って友達の千代ちゃんがちゃんと笹の時間を動かしてくれた)


 そんな幸せな時間が一年間くらい続いた。

 笹の幸せな時間が終わるきっかけになったのは、浦島くんの引越しだった。浦島くんの引越しの話を聞いて、笹は本当に世界が終わってしまったような気持ちになった。

 実際にそんな表情を笹はしていたのだろう。そんな笹のことを見て、千代ちゃんはとても心配そうな顔をしていた。(それこそ、世界が終わってしまったみたいな顔だった)


 浦島くんは笹と千代ちゃんと浦島くんの育った海辺にある田舎の街から引越しをして、ずいぶんと遠くにある都会の街に引越しをするのだという。


 その日、笹は波の音の聞こえる家の近くにある浜辺に座って、ぼんやりとただ繰り返しては消えていく波の風景に目を向けていた。

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