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208話:クオン VS 黒帝≪こくてい≫

「今や『AtoA』でお前だけが持つ“不老の血”を、俺に寄越せ!!」


 霧幻城の閉じられた部屋で、黒帝≪こくてい≫が動いた。

 背中から黒い翼を生やし、滑空するようにクオンへと近づいて来る。

 その反対側には、同じく滑空する形で近づいて来るバグ――“黒鷲”の姿も確認出来る。


(黒鷲とは別で、自分の身体から翼を?)


 唐突な前後から挟み撃ち。

 獣人族の少女:テテフは「わわっ!?」と驚き、迎え撃つクオンは戸惑いつつも大筆を振るう。


絵空事えそらごと染料弾バレッタ


 筆を振るって一回転。

 その軌跡に沿って色取り取りの“銃弾”が生まれ、近づいて来る黒帝≪こくてい≫と黒鷲を、襲撃!!


 しかし。

 一人と一匹はカラフルな銃弾を翼で弾き、返す翼から無数の羽を打ち出す!!


(ま、そうなるわよね)


 相手はビッグファイブ。

 簡単に打ち勝てる相手ではなく、「ならば」とクオンは胸元から葉書を取り出し、真上に掲げる。


絵葉書えはがき染料布カーテン


 掲げた絵葉書から染料が溢れ出し、二人を覆う壁となった。

 その流れる壁に無数の羽が「ドドドドッ」と突き刺さるも、勢いに負けて床へと流れ落ちる。


(とりあえずこれで凌いで、次の手は――)



 斬ッ!!



 羽を防いだと思ったのも束の間、染料の壁が前後から斬られた!!

 黒帝≪こくてい≫及び黒鷲、一人と一匹の翼が染料の壁を打ち破る結果となり、クオンは肩を竦めて降参のポーズを取る。


「やだやだ、いきなり襲って来るなんて野暮な男ね(狐ちゃん、動いちゃ駄目よ)」


「おう?」


 クオンの指示に疑問符を浮かべるテテフだが、彼女がまた「諦めていない」とわかって、とりあえず頷く。

 そのやり取りを見ていた上で、黒帝≪こくてい≫は二人の背後にいた“黒鷲”を呼び寄せ、自分の肩に止める。


「カラフルなマジックショーは今ので終わりか? 無駄な抵抗は辞めて、さっさと血を差し出すことを勧めるが」


「えぇ、“次”で駄目ならそうするわ」


「ふんッ、まだ抵抗するか」


 黒帝≪こくてい≫は容赦しない。

 肩に止まった黒鷲をクオン目掛けて飛ばし、それを迎え撃つは「彼女の秘密兵器」。

 クオンは再び胸元に手を伸ばし、そこから“巻物”を取り出した。


「抵抗するのは貴方よ――“解放リリース”」


 巻物の紐を解き、広げられた巻物から飛び出したのは「白い髭の老人」。

 それも、お茶を片手に饅頭を頬張ろうとしている、どう見ても休憩真っ最中のグラハムだった。


「千年卿!?」「ジジイ!?」


 突然のグラハム登場。

 黒帝≪こくてい≫とテテフが驚き、


「むッ!?」


 グラハム自身も驚きつつ、しかし咄嗟に手にした白い杖で“黒鷲”を叩く!!



 ――斬ッ!!



 刃も無い杖に、真っ二つに斬られた黒鷲。

 しかし別れた身体をすぐにくっつけ、弧を描く様に黒帝≪こくてい≫の肩へと戻る。

 結果、グラハムと黒帝≪こくてい≫が相対する構図となり、とりあえずの危機を回避したクオンが「ふぅ~」と一息つく。


「それじゃあグラハム、後は任せたわ」


「いやいやいや、説明が足らな過ぎるじゃろ。ワシを呼び出すのは“ここぞという時”にしておけと、そう言った筈じゃぞ?」


「だから貴方を呼んだのよ。その為にわざわざ絵の世界で待機させてたんだから。それともここで“私の全戦力”を黒帝≪こくてい≫にぶつけろとでも?」


「……まぁよい」


 黒帝≪こくてい≫から視線を外さず。

 グラハムは食べかけの饅頭をモグモグと頬張り、最後にズズッとお茶で流す。

 その一挙手一投足を逃さず見ていた黒帝≪こくてい≫は、饅頭が全て喉奥へ消えたのを見計らってから口を開いた。


「俺が言うのも何だが、千年卿がそう簡単に姿を見せていいのか?」


「ホッホッホッ。ワシはお前さんが思うとるほど姿を見せない訳ではないし、そもそも簡単に出て来た訳でも無い。クオンは我が組織の最大戦力、そう簡単にくれてやる訳にはいかんのじゃよ」


「ふんッ、何が最大戦力だ。どうせ“自身を除いて”の話だろう?」


「さぁ、それはどうじゃろうな。そんなことより、ドラノアの件は受けてくれるという認識でよいな?」


「ちょっと、何が“そんなこと”よ」とクオンが不満を露わにするも、それを意に介するグラハムでもない。

 話の主導権はとっくに白髭の老人へと移っており、それを察した最年少のテテフが「大人クオたん、お前は十分よくやったぞ」と偉そうに彼女を励ます。


 そんな“ガヤ”の会話に耳を傾けることなどなく。

 是非を問われた黒帝≪こくてい≫は、黒鷲を肩に止めたまま真っ直ぐにグラハムを見据える。


「“あのチビガキ”がそんなに大事か? アンタという保険があったにせよ、貴重な吸血鬼族を使いに出すとは理解に苦しむ」


「だが、それ故にこちらの本気度も伝わるじゃろう? お主にとっても悪い話ではない筈だ。“とあるバグ”を探しておるなら尚のこと」


「……チッ」


 舌打ち一つ。

 その後に黒帝≪こくてい≫は“黒鷲を肩に沈め”、致し方なしとため息を吐く。


「――入獄と脱獄、その2つの安全を確保しろ。それが最低条件だ」



*次話、一気に時間が進んで「パルフェの公開処刑日」です。

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