新しいからって良いとは限らない!!
「旧型の魔晶石ですか。場合によってはご助力出来ることもあるかも知れません。でもどうしてわざわざ旧型を? 理由をお伺いしても?」
私は村長に聞いてみる。
「それは……お気を悪くされないと良いのですが」
悩む様子を見せる村長。しかしこのままでは話が進まないとばかりに口を開く。
「ルスト師も当然、一年前の戦争の時にあった魔法銃の全面的な改革はご存知かとは思います」
「あー。はい。一応は」
私は答える。
──魔法銃、一年前? ああ、なんか武具錬成課のリハルザムが俺の手柄だって自慢していたやつか。なんか威力を向上させたとか言っていたな。
「改革とは名ばかりの、改悪、いや単なるぼったくりだ!」
同席していた、私をここまで案内してくれた壮年の男性が吐き捨てるように言う。
「これ、ザーレ」
ザーレと呼ばれた壮年の男性をたしなめる村長。
「しかし、ザーレの言うことももっともなのです。ザーレ、持ってきてくれ」
村長は何か指示を出す。
「詳しくお伺いしても?」
「はい。そもそも魔法銃は武の心得のない、私たちのような辺境暮らしの者には必須の武器でした。凶暴な獣やモンスターの撃退には欠かせない存在で。一年前までは──」
「今は違うと?」
そこへちょうどザーレが二丁の魔法銃を持ってくる。
「はい。旧型の魔法銃は非常に燃費もよく頑丈で長持ち。燃料となる魔晶石もめったに交換のいらない素晴らしい物でした。まさに辺境に住まうものたちの友と言っても良いぐらいの。特に数年前に開発されたH-32型は本当に頑丈で狙いもぶれず、頼りになったんです」
二つあるうち、一つを前に出す村長。
私はそれを見て、おっと思う。それはちょうど私が錬金術協会に入った頃に、開発に携わった物だった。まだ協会長になる前だったハルハマー師──当時は武具錬成課の責任者だった──が主導して作ったモデルだ。確か開発コンセプトは兵士が最後まで安心して使える物、だったか。
質実剛健、低燃費なコンセプトは当時は地味だとさんざん言われていたが。やはり使う人からの評価は高いのか。流石、ハルハマー師。
私がこっそり感心しながらH-32型魔法銃を見ていると、村長の話が続く。
「それに比べて、このR-001型は……」
「上品に言って、排泄物以下、さっ」
吐き捨てるようにザーレが発言する。
「これ、ザーレ。まあ、その通りなのです。威力は向上しているらしいのですが、すぐに壊れ、暴発もする。何よりも燃費が非常に悪くて。高価な新型の魔晶石を頻繁に交換しなくてはいけないのです」
「威力なんて前のままで十分だったのによ」
ザーレは口出しせずにはいられないほど、不満に思っているのだろう。
「しかもです。旧型の魔法銃と一緒に旧型の魔晶石も生産が中止になってしまったのです。H-32型魔法銃はまだまだ使えると言うのに、対応する魔晶石が手に入らなくなってしまって」
「それで仕方なくR-001型を買ったんだが、何の役にもたたねえ」
口々に告げる村長とザーレ。
「運用コストが高すぎて、R-001型では十分な防衛が出来ないのです。ここぞというときにしか撃てない。しかも撃っても暴発したり壊れたり。その結果、当然、獣やモンスターの被害が増えてしまいまして。特に辺境の村は頻繁にそれらが近づいてくるのですよ。でも追い払う手段がない。もう皆、怖がってしまって。特に家族持ちの方は……」
「皆さん、安全なところへ転出してしまったんですね。そう言うことなら、わかりました」
私は二人へ告げる。
「おおっ、では譲っていただけると!?」
「いえ、手持ちにはありません」
私が言うとがっくりとした様子を見せる村長とザーレ。
「でも、作れますよ」
そう、私が続けて言うと一気に二人の顔が明るくなった。




