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ヒポポに二人乗りしよう!!

「移動しながら詳しく聞かせてくれる?」


 私はヒポポにまたがると、アーリに手を伸ばす。一瞬、ためらう様子を見せるが、すぐに私の手を掴むアーリ。ぐいっとアーリをヒポポに引き上げ、後ろに座らせる。


 ヒポポの肩を軽く三度、叩く。

 ヒポポが野営地へ向けて、走り出す。全速力よりは少し余裕のある速度。八本の足を滑らかにスライドさせて、荒れた大地と移動速度を感じさせない、静かな乗り心地だ。


「リハルザムは一応、錬金術協会の時の同僚だったんだ。私の事が気にくわないのか、よく絡まれてたよ。それで用事は多分、魔晶石関係の話、だと思うんだけど……」と、後ろを振り向きながらアーリに話しかける。


 しかし、アーリの不安そうな表情は晴れない。


「何が気になるの、かな?」と私はそんなアーリに訊ねる。


「よく、見えないんです、未来が。でも、戦いの気配だけは明確に感じられるんです。それもただの戦いじゃなくて。争乱とも言うべき、大きな争いの気配が、見え隠れするのです」と思い詰めた表情。


「その片眼鏡の調子は──?」と言いかける私。


「頂いた魔道具は、完璧です。これがあるから、多分、今見えている戦いの気配も見えるようになったんだと思います」と私の質問を先読みして答えるアーリ。


「ふむ……」辺境の乾いた風がヒポポに乗る私たちの間を吹き抜ける。


「リハルザムと戦いになるかもしれない、ってことか」


「それはほぼ、間違いなく」とアーリ。


「そして、それだけではないと」


「わかりません。こんなこと、はじめてで。ごめんなさい」とうつむくアーリ。


「謝ることじゃないさ。教えてくれてありがとう」と私はアーリに伝える。


 アーリは首をふると、顔を上げる。片眼鏡越しに見える、その未来を見通す魔眼と目が合う。その瞳に、突如、魔素の煌めきが宿る。


「運命の転換点が、来ます。これからそれが来ます。ルスト師の選択──」と見開かれた瞳で、早口に囁くように。どうやら今まさに未来視の魔眼が発動しているようだ。


「──最善の選択も。最悪の選択も。等しく運命の転換点においては等価となります。ああ、運命が断片となって駆けていく……。荒野を吹き抜ける風。二人の男性。呪術師の手──」


 アーリの左目に宿った魔素が高速で瞬く。片眼鏡の魔道具はその魔眼の発動に対して呼応するように魔素の光を帯びる。


 錬金術師としてどこか冷静な部分で私は注意深く魔道具の挙動を追ってしまう。


 ──よし、処理速度、限界ギリギリだが片眼鏡はしっかりアーリの魔眼に対応している。しかし凄いな。想定を大きく上回っている。一体どれだけ先までアーリは視えているんだ?


 不意に、魔眼に宿る魔素が霧散する。


 ふらっと、アーリの体が横に傾く。

 とっさに私は限界まで体をひねり腕を伸ばす。ヒポポから落ちないようにアーリの肩を支える。

 ヒポポがゆっくりと減速してくれる。


「アーリ? アーリ!」完全にヒポポが止まったタイミングで呼び掛ける。


「ルスト師……。ありがとうございます。もう、大丈夫、です」


 私はアーリの顔を覗きこむ。さっきまで虚ろだった表情に力が戻ってきている。しかし、その瞳は暗い。

 私はそっと手を離すと前を向き直り、そのままで声をかける。


「安心していい。運命とやらがどうなろうとも、私が皆を守るよ。家族、だからね」


 普段言わないような事を言ってしまって、気恥ずかしくて後ろが見れない。軽く咳払いをする。


「さて、急ぐから掴まっててね」


 私はヒポポの肩を軽く一叩きする。それに応え、ヒポポは全速力で野営地へと駆け出した。




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― 新着の感想 ―
[一言] 多分、新型魔晶石と新型銃が酷すぎて、魔物にも他国にも攻め込まれるんだろうな・・・ それと呪術師って、タウラに呪いかけたやつだっけ。 うーむ。 リハルザムの死が確実じゃないのが気になるな。
[一言] 行くわけない( *¯ ꒳¯*) しかし、戦争かな?それとも、やらかしで国が?
[一言] えっ?プロポーズ?プロポーズですか?
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