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夕飯は焼き魚にしよう!!

 ロアの突き出した槍が、ゴツゴツとした鱗の隙間を縫うようにして、その巨大な体へと滑り込んでいく。

 ビクッと一跳ねし、すぐにぐったりと力尽きる魚型のモンスター。どうやらロアの一突きは、急所を的確に破壊したようだ。


 私たちは新しい魔導具の試用で、野営地の近くの川に来ていた。


「いい。凄く、いい」と眼鏡型の魔導具のブリッジの部分を軽く持ち上げ呟くロア。


 今のロアの動作で魔導具は異能封印モードに移行したはず。

 どうやら満足するまで、眼鏡型の魔導具の性能は確かめられたようだ。


 裾をたくしあげ、槍を片手に、川の中で仁王立ちするロア。その背後の川岸にはどれも一突きで息絶えた魚型のモンスターが山積みになっていた。


 すべて同じ種類の魚で、アーリ曰くアーマーサーモンと呼んでいるらしい。鱗が異常に発達していて、ゴツゴツと岩を纏っているかのような見た目だ。相当硬い鱗らしく、カリーンの怪力でも一撃で割れない程らしい。


 どうも池の主だったナマズ型のモンスターをヒポポが倒したことで、最近、川を大量に遡上してきているらしい。


 そんなことを考えていると、裾を戻し足を拭いたロアが靴を履き終えたようだ。

 あんなに大量のアーマーサーモンを倒したのに、ほとんど服はぬれてないようだ。


 こちらに歩いてくるロア。私は二人の魔導具の微調整用に用意した各種道具を広げて、ヒポポと一緒に待っていたのだ。やはり実戦で使ってみると色々と改善して欲しいという要望が出るかと想定して。


「良かった」とロアは一言だけ告げる。


「えっと……。何か不都合はなかった? 各種モードの切り替えとか。戦闘時に眼鏡がずれるとか」


「ない」


「ロア、それじゃあルスト師に失礼ですよ。ちゃんと伝えなさい」とアーリが取りなしてくれる。


 なにやら考え込む様子のロア。顔を覆っていた布は完全にまくり上げた状態で固定され、そのやや丸顔気味の顔が、よく見える。

 魔導具のスクエアタイプのフレームの奥で、じっと何かを見つめるかのようなその瞳。


「魔眼の発動を望み通りに抑えてくれるから、凄く世界が見える。透視モードと遠視モードの切り替えも、スムーズ。切り替えの音声操作は便利だけど、接触操作の方が安心。右手は槍を使う。出来たら全部、左のつるの部分で操作したい」と左側のフレームと耳の間の金属部分を指差して話すロア。


「わかった。今直すから貸してくれるかな」と口添えしてくれたアーリに感謝しつつ、私は応える。


 顔を布で再び覆い、眼鏡型の魔導具を手渡すロア。


 私は手早く用意していた器具に魔導具をセットすると魔導回路を書き換えていく。とはいっても手直しするのは左右に分けていた接触操作を片側にまとめるだけ。あっという間に終了する。


「はい、出来たよ」とロアに魔導具を手渡す。


「試してくる」と眼鏡型の魔導具をかけると再び顔をおおっていた布をめくり上げ、靴を蹴飛ばすように脱ぐロア。


 なんだかおもちゃを貰った子供のようだ。

 あっという間にロアはまた川へと飛び込んでいく。


 その様子に、隣にいたアーリと互いに顔を見合せ苦笑する。

 アーリも顔をおおっていた布はまくり上げ、その左目には片眼鏡型の魔導具をつけていた。

 アーリの未来視の魔眼の宿る左目を完全に覆うように大きめの丸型のフレーム。


 次の瞬間だった。アーリは槍を突き出す。その槍の穂先にまとわせた魔素がするすると伸びていく。

 伸びた魔素の先に吸い込まれるようにして現れたのは、水面を割って飛び出してきたアーマーサーモンだった。

 開いたその口から真っ直ぐに尻尾まで、魔素の槍で貫かれるアーマーサーモン。

 どこに飛び出して来るか見えるアーリにとっては見えたままに行動した結果なのだろう。


 私がちらりと横をみると、その表情はどこか楽しげだった。


 ──やっぱり姉妹なんだな。


 思わずそんなことを考える私の方を、軽く睨んでくるアーリ。


 ──あれ、もしかして戦闘以外にも未来視の魔眼が発動しているのか? 私が口を滑らせて内心を漏らしてしまった場合の未来が見えている?


「いえ。でも少し正解ですよ」とアーリに澄まし顔で私の内心の声に返事をされてしまった。











 前話でやらかしてしまったお詫び(?)に、用語説明・設定等です。本編には多分あまり関わってこない部分について。


・武の心得

魔素を体、及び武器、防具にまとわせる技術。

第一段階として魔素をそのまま、第二段階として魔素を属性変化させて戦闘に使用する。

対モンスター戦においては第一段階は必須。そのため武の心得を持たない者は、対モンスター戦において魔法銃等の装備が必要となってくる。

対人戦において第一段階は威嚇の意味が強い。魔素それ自体は人体に害がないため、武器そのものと変わらない威力となる。

十六話でルストとロアの遭遇時にロアが槍に魔素をまとわせていたのは、ルストへの牽制、白とかげへの殺意の発露となる。


・ロアの眼鏡型の魔導具

片目に遠視、もう片目に透視の魔眼を持つロア専用の魔導具。

開発コンセプトは、片方のフレームごとに独立して魔眼の異能を封印することが出来るという物。

その封印のオンオフを短いタイムスパンで繰り返し、異能を制御する。眼鏡のフレームの左右それぞれで、コンマ秒単位までタイムスパンを変更することが出来る。その結果、ロアから見た、遠視&透視の映像の見え方としてはコマ送りから高画質まで、自分の意思で自由に選べるようになった。

また、遠視だけ見る『遠視モード』、透視だけ見る『透視モード』、両方同時に完全に封印する『休憩モード』、『全解放モード』等のモードがある。

ちなみにルストのあげた封印のスクロール、完全に要らなくなったが、ロアは大事にとってある。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 取り敢えず、職場での美人姉妹度は跳ね上がったよねw 今までは顔丸隠しでしたし。少なくともコミカライズでは顔全体を覆う布でしたし。
[気になる点] 普通の眼鏡タイプは戦いに不向きだろ思う。 汚れたりずれたり。
[良い点] 楽しく読んでいます [一言] 更新ご苦労さまです
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