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7.異変-1

本日二話目です。

しばらく狩りを行ったことで、スキルのレベルもだいぶ上がった。特に上がったのは“弓”スキルや“鷹の目”スキル、“発見”スキル、“魔力”スキルであり、他にも時々使用したため、“ステップ”スキル“跳躍”スキル“登り”スキル“木工”スキルが上昇した。


この世界では一度に10個のスキルしか装備することはできないが、それ以上の数のスキルを取得して状況に応じて装備するスキルを変えることができる。


そして新たにスキルを取得するためには、SPスキルポイントというものを消費しなくてはならない。


これは、それぞれのスキルが10レベル上がるごとに獲得することができるものだ。俺の現在のスキルでは、戦闘中には他のスキルに取り替えておきたいものがいくつかある。特に“木工”スキル“細工”スキルがそうだ。


“木工”スキルや“細工”スキルのDEX(器用度)補正によって矢が当たりやすくなっているのは事実だが、そこは他のスキルのDEX補正と自前の腕で補ってしまえばいい。


生産活動においては、DEXが不足するというのはそれだけで生産失敗になってしまう厳しいものだが、武器の扱いに関してはその限りではない。扱いが難しくなるなら、難しくても扱いきれる技量をつけてしまえば良いのだ。


逆に攻撃力や機動力が低いことの方が弱点としては大きいので、それをカバーできるスキルを付けたほうが良いのだ。


「そろそろ街に戻るぞ。少し予定がある」


「そうだね。もうだいぶ稼げたし、そろそろ戻ろう」


「えー、まだあんまり奥まで探索できてないのに…」



今までの戦闘に出てきたのは、ウルフにマンキー、闘鶏という多少獰猛になった鶏もどきと、ロットバードという大きさはカラスに近い鳥、それに草食獣というモンスターだ。


二種類の鳥型モンスターからは尾羽根を入手できたので、あとで矢の作成に使いたい。他にもくちばしや皮なども入手できた。売ってゴールドに変えておこう。俺の生産技能では使用しないのだ。他の仲間に使ってもらうことはできるが、入手の簡単なアイテムはそれほど必要としないだろう。


まだそれほど脅威となるモンスターに出会えていないことを考えると、十分な探索を行えていないのだ。


「そういう冒険は、シズクさんたちといっしょにしましょう」


残念そうにするマーヤをカナが慰めている。


「そうだね!早くルカちゃん達に会いたい!」


途端に元気になるマーヤ。テンションの上がり下がりが激しい子だ。βテスト時代の仲間だろうか。


「街に戻るぞ」


帰り道も見かけたモンスターを倒しながら進むが、すぐに街に戻ってきた。回復魔法を使える人間がいないため、連続して戦闘を何回も行うことはできず、休憩しながら戦っていたが、やはりあまり進めていなかった。


「トビア、マーヤ、またな。行こう、カナ」


「はい」


事前に、あっちの世界での友人に会うとは二人にも説明していたので、すんなりとパーティー登録を解散した。


「タクさん、懐かしいですね」


「俺は毎日顔合わせてるがな」


「タクさん最近遊びに来ないじゃないですか」


タクとカナは現実での面識がある。あいつがコアなゲーム持ってきては俺といっしょに攻略してるときに、参加したりしていた。どちらかというとファンタジー系しかしない俺よりも、カナの方がタクと一緒に遊んでいた気がする。


タクとの待ち合わせ場所は街にある武器屋にしようと約束していたので、アルトの窓でマップを開き武器屋を探す。


どうやらこの街には稼働している武器屋が一箇所しかない。かわりに、鍛冶工房があるようだ。おそらくここで生産活動の基本を習ったり設備を利用したりできるのだろう。


この世界ではプレイヤーが武器を生産できるので、NPCによる武器の販売は需要が低いのだ。生産設備に関しても、最初は利用する人が多いだろうが、店舗を持つ人が増えると自分の生産設備を持つ人もあらわれるだろう。


カナと話しながら武器屋へと向かうと、店の壁に堂々ともたれかかっている男が見える。剣を腰に刺さずに、背中に斜めに吊っているその姿には見覚えが合った。


「タク、きたぞ」


その男が顔を上げると、やはり特に懐かしくもない顔だった。


「よっ、ムウ。それにカナちゃんかな、久しぶり」


「久しぶりです、タクさん」


ペコリとカナが頭を下げる。


タクはβテスト時代にはトップクラスのパーティーのリーダーとして活躍していたらしい。


一方のカナも、似たレベルのパーティーの一員としてプレイしており、交流もあったそうだ。


何を持ってトップクラスなどと言っているのかはわからないが。βテストの頃はギルドのような、プレイヤー同士の大規模な集団がなく最大の集団がパーティーだったので、その中でトップと言えばまあ聞こえは良い気はするが、βテストの閉ざされた世界でトップを決めても仕方ない気がする。二人にいっても仕方ないことだし、二人は特に意識していないだろうが。


「申請送っといたから登録しとけ」


タクとカナが話している間に申請を送っておいたので、タクが拳を上げたのを無視する。


「いいからムウ」

と、拳を降ろさないので、仕方なく拳をぶつけてやる。テンションが上がっているのはわかるがつい昨日学校でもしたばかりだ。昼休みに今日を待ちきれないタクと話して、別れ際に拳をぶつけ合ったのだ。今思えば、現実でするには恥ずかしい行為である。


カナがタクとまだ話したいことがあるようなので、二人にそこで待っておいてもらって武器屋へと入る。店内はそれほど広くなく、武器もそれほど多く並んでいない。同じ形の剣があるところから見ると、量産品なのだろう。奥のカウンターらしきところには、初老の男性が黙々と剣を磨きながら座っていた。


俺は基本的に弓矢は自分で作ろうと思っているため、購入する必要はない。だが、金属系の武器は別だ。


トビアに言えば打ってくれるだろうし、仲間には他にも打ってくれるやつがいるだろうが、ひとまず当面使うための武器は買っておこうと思う。


武器種は、武器と言ってよいのかわからないが、鉈を使おうと思っている。これを武器屋で買うのは、“木工”スキルで使うための木材を入手するのに加えて近接用に使えないかと考えているためだ。

店の中を見て回っても鉈がないので、店主であろう男性に聞いてみる。


「こんにちは」


「…なんだ」


無愛想な老人だ。見た目通りだ。


「武器について相談したいんだが」


「ふむ。ちょっと武器をおろしてまっすぐ立ってみろ」


そう言われたので、大人しく武器をおろしてまっすぐ立つ。老人は手にしていた武器と布を置くと、立ち上がってじっくりと俺の体を見る。


「あまり筋肉はついてないようだな」


「戦闘スタイルが筋力を重視しないものだからな。ほしいのは鉈なんだが」


「待っておれ」


そういった老人が奥へと戻っていく。おれは弓を背負い、矢筒を装備する。


「ほれ」


初老の男性が渡してきた鉈をつかむと、かすかに違和感を感じる。


「これのグリップを少し細いものに付け替えてもらえるか。これだとおれの手に余ると思うんだが」


俺が違和感をそう伝えると、老人がニヤリとした。


「おう、すまんすまん、こっちじゃったわ」


そう言って渡してきたのは、一回りグリップが細い鉈だ。手にしっくり来る。


「人が悪い」


そう言いながら少し苦笑すると、カッカッカと楽しそうに笑う。


「少し試しただけじゃ。冒険者としてやっていけるかをな。だめそうじゃったら教え込んでやるつもりじゃったわ」


「あんたは、いや、名前はなんと言う?俺はムウという」


「ユーロじゃ」


「じゃあユーロ。あんたはそのためにここで店を?」


「当たり前じゃい。わしは冒険者たちが成長していくのを見るのが楽しいんじゃよ。ここからな。強くなってここにこんくなるならそれで構わん。街に出てみれば見えるでな。冒険者ギルドからも情報は回ってくるし、だめな奴らが送り込まれてくる。退屈はせんわい」


「楽しそうな仕事をしてるんだな。俺は合格なのか?まだ何もあんたに見せてないと思うが」


「合格も合格じゃ。黙っとるわしに怖気付かずに話しかけた上に、ちゃんと自分の扱う武器を気にかけている。わしの仕事は武器をあつかうことだからな。よっぽどに見えんければ不合格にせんわ」


冒険者、つまりプレイヤーたちを影で支える存在か。こんな人物こそ、良い人物が多いのだ。多くのプレイヤーは、彼のことをNPCだから所詮プログラムにすぎないというのだろう。だが、彼はたしかにここで生きている。俺は決してプログラムだとは思わない。そう思わないようにしよう、とかではなく思えないのだ。ここをもう一つの現実と捉えているからだろう。


「そうか、もう来ないと思うが、何かあればよろしく頼む。その時は武器の話でも聞かせてくれ」


「こんでええわい。早く新人を卒業せい。ああそれと、これは合格祝じゃ」


そう言ってユーロが放ってくれたのは、一つのバッグだった。


「マジック・バッグか?」

マジック・バッグは、上限の存在するインベントリを補うためのものだ。アイテム・インベントリは、βテストの頃は、スキルレベルの和をもちいた計算によって上限が制限されていたが、今は種族レベルの二乗分の重量のアイテムを持てるようだ。おそらく単位はキロであっているはずだ。


「そうじゃ。初級じゃがの。駆け出しには十分じゃろうて」


「感謝する」


じゃあな、とユーロに告げて店を出る。又どこかであうことがあるだろうか。もうあわないかもしれない。


「待たせたな、カナ、タ…」


店を出てまだ話している二人に声をかけようとした所で、視界が霞んでいく。次第に闇に包まれる光の中で、驚いた顔で互いを見ているカナとタクの顔が、妙に印象に残った。

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