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65.コリナ丘陵-5

今回も生産です。

「よし、組み立て開始だ」


目を覚まして朝食を適当に食べ、薪をくべて焚き火を明るくしてから昨日の作業の続きを始める。まだ時刻は午前5時で岩柱の中は日がさしておらず、焚き火がなければ真っ暗だ。


一番下、地面と接する部分にまずは半分に割った丸太を寝かせる。その上に接着剤を塗り、交差する向きで二本丸太を乗せる。後はこれを繰り返すだけだ。ひたすらに丸太を抱えては上まで積み上げていく。


ある程度積み上がったところで、扉にする部分の木をノコギリで切り取る。扉は後で適当に作るつもりだ。金具も“細工”スキルを使えば簡単に作れる。


扉の部分を切り抜き終わったところで、更に上へと積み重ねていく。高さは2メートルぐらいにするつもりだ。


上の方になると俺の身長を越えて乗せるのが辛かったが、丸太が細かったことや、身体能力が上がっていることもあってなんとかなった。


割とぶっつけ本番でやっているが、上に丸太を上げるのに必要であれば台を作るつもりだった。どうせ小屋の中で使うかも知れないので後で作るつもりではあるが。


目標の高さまで木材を積んだところで、今度は屋根を作る。


最初は丸太の屋根を作ろうと思っていたが、想像するに不格好な気がしたので屋根用に持ってきた丸太を板へと変えていく。捨てる部分を作らないでいいように、厚めの板にしながら全て一番上に並べていく。隙間は接着剤で埋まっているし、屋根板には防腐剤も塗っているので、上からの雨にも強いだろう。


五時間ほどかけておおよその形ができあがった。丸太は全て同じ大きさというわけではなく歪みもあるので多少の隙間はあるが、まあ初めて作ったにしてはいい出来だと言えるだろう。


後は扉作りと、アイテムや素材を保管しておくための箱、棚、踏み台などを作るだけである。


「あ、窓作ってない」


このままでは中に光が入らない。忘れていたことだがせっかく思いついたのですぐに作業する。作業といっても適当な位置にノコギリを入れて穴をぶち開けるだけだ。俺は硝子工ではないのでガラスも作れないし、本当にただの穴としての窓しか作れない。


「よし、こんなものでいいか」


扉がある一番光が当たりそうな一面に窓を開けた。他の面には棚をつけるつもりなのでそのままだ。


その後、再びズタ袋を担いで採取に出る。細い木を切ってその場で皮をはぎ、割って板にする。太い木を切れないせいで、棚に使う板も全て細い板から作らないといけない。小屋一つと備品を作るだけで相当な木材を使っている。


作りかけの小屋に戻った後、まずは鍛冶セットを取り出す。箱や棚、ドアを作る前に、それぞれに使う釘や蝶番を作る必要がある。それらの作成は鍛冶師よりは俺のような細工師のお手の物だ。ついでに、後で使う金属製の部品も作る。


鉄鉱石を携帯炉で溶かした後、赤く熱された鉄塊を細かく分ける。


今度は一つ一つの小さな塊を細い棒に伸ばして先端を尖らせる。いつ使うかわからないので、少し多めに作っておく。正直な話釘は釘の形をしていればいいので、作業量は多いもののそれほど大変ではない。


おおよその形ができあがったら、今度は先端をヤスリでけずって尖らせる。これで鉄釘は完成だ。早速その釘を使って小さな木箱を作り、残りの釘をそこに入れておく。


後は扉用の蝶番だ。


蝶番を作るには色々道具が必要になるのだが、俺は金槌やコテ、ペンチといった基本的な道具しか持っていないので、これでなんとかする。


具体的には、扉に取り付ける板状になっている部分と、棒にはまって稼働する際に動く部分を別々で作るのだ。そして、後から溶接する。これなら、道具が足りなくてもなんとかできる。


板の部分はさっと作り上げ、輪の部分は木の棒に巻くことで作り上げる。道具は足りないがこのあたりは創意工夫でなんとでもなる。強度に対する信頼性はわからないが。


扉を付ける部分も加工して、蝶番の設置を終える。後は扉を作るだけだ。


持ってきた木材を適当に横に並べ、接する部分を接着剤で貼り付ける。後は、四方を囲うように枠を付けて、真ん中には横向きに棒を一本、そして上下それぞれの正方形に斜めに木の板を貼り付けて扉がバラけないように固定する。見た目は多少不格好だが、味があっていい。扉の表面や角をしっかりとヤスリで削れば、見苦しくもない。


扉を取り付けたところで、一歩下がって小屋全体の様子を見る。全体的に木材は特に色を塗っておらず防腐剤にも色はないので、明るい色調である。窓を取り付けたおかげで中に光も入っているし大丈夫そうだ。


ナツ、アキ、フユが物珍しそうに窓や扉から出たり入ったりしている。後は中に棚を取り付けて、木箱を作って置くだけだ。


棚を大雑把に作って壁際に起き、木の箱を作って床に置く。箱の中には主に鉱石や骨系統を、棚にはモンスターの素材や入手できた数の少ないアイテムを置いておこうと思う。とりあえずは、今外に散らばっている鉱石系統や木材系統のアイテムを棚に、薬草などのアイテムを壁の棚に並べる。


後は生産道具も小屋の中に並べておく。これでアイテムの整理はついた。すでに昼食の時間だ。まあわかっていたことではあるが、これほど大規模なものを作るとそれなりの時間がかかる。


俺がのんびりと水を汲んできて昼食用にスープを作ろうとしていると、三匹が近寄ってきた。


「お前ら、自分で獲物を取ってこいよ。狩りならできるだろ」


いつもとは違って、三匹には肉をやらない。しばらくすると、三匹は俺が肉をくれないことを悟って外に出ていった。


やがて、俺が食事を終える頃に戻ってきた。三匹とも口にはそこそこの大きさの鴨のような鳥を加えている。


やはり、獲物は自分で取れるのだ。ならば、俺に頼る必要はあるまい。


俺がそう思い鍋と皿を洗っていると、三匹が魚をくれたときのように鳥を押し付けてくる。


「お前らが自分で食えばいいだろう」


そう言うが、聞き入れること無く押し付けてくる。もしかして、俺に鳥をくれる代わりに干し肉をくれと言っているのだろうか。試しに鳥を受け取って干し肉を渡す。すると、干し肉にはうまそうにかじりついた。


干し肉がうまいのかそれとも俺に気を使っているのか。それほど俺になついてくれているのであればありがたい話だが。


とりあえず、受け取った鳥に加工スキルを使って、皮を剥いだ後の鶏肉に変える。


どうやらこの三匹が取ってきた時点でこの鳥はモンスターから加工前の食材という状態に変わるようだ。こんな形でモンスターと仲良くなったときに、モンスターの素材を取ってきてもらうのは無理なのかも知れない。


鶏肉はそのままでは腐ってしまうので、せっかくだから俺も干し肉を作ってみることにする。昼からは他に作るものがあるので、肉を干すための設備もついでに作れば良い。


鶏肉を干しておくための台と屋根を作る。干し肉は直射日光に当てないほうが良いらしいのだ。


作ったことはないが、作り方は知っている。


“料理”スキルで生肉を干し肉に短時間で加工することは可能だが、そのためには専用の生産設備が必要になるようだ。そのため、今の俺は自力で作ってみるしか無い。


“料理”スキルの補正で完成はうまくいくかも知れないが、時間の方は掛かりそうだ。


今から使うものとして、肉を干しておくための台と屋根、それに長めの棒を作成する。


とりあえず干し肉は作成に時間がかかるので、先に外に干しておくことにする。場所はこの岩柱の上の台地だ。そこそこのスペースが有ったので干し肉を作るぐらいのスペースはある。台も風に煽られないように全体的に低く、地面に引っ掛けるかぎもしっかり作った。


鶏肉を細かく切って塩水につけた後、それを持って一旦外に出て台の上に登る。上からの見晴らしは絶景で、雲の多い今日は昨日とは違う風情がある。


岩柱の上の広場に台を置き、バラバラに切った鶏肉を干す。内臓は干し肉にはできないので、三匹に与えておいた。


干し肉製造機の設置も終わり、次は最後に作っておくと便利だろうものを作る。必要な部品のうち一つは先程作った長めの棒、後は今から作る金属の部品だ。


“細工”スキルは武器を作っても“鍛冶”スキルと違って性能の良いものは作れないが、金属を扱うこと自体は同等にできる。そのため、少々大きめの金属部品だって作れるのだ。


鉄鉱石を溶かしてインゴットにし、そこから形を変えていく。薄く伸ばしたあと岩に押し付けながら外側を折り曲げていき器のようにした後、器の端から棒が何本も伸びているようにし、その部分を残して余計な部分を落としていく。


落とした鉄屑はもう一度溶かして、残りのパーツを作るのに使う。器を三つ作り終えたところで、今度は先程残した皿の端の方と交差するパーツを作る。このパーツを合わせて完全な網の状態にするのだ。


完成すると、底の方は全面を覆う器になっていて、上の方は網のようになった器が出来上がる。


器が完成したら後は組み立てるだけだ。


長い木の棒三本を金属の輪っかに通し、三本を同じ方向にひねって三脚を作る。その上に先程作った器を乗せたら完成だ。


そう、俺が作りたかったのは篝火だ。テントを張っている岩柱の中の広場はそこそこに広く、俺の焚いている焚き火だけでは端の方が暗いままなのである。


篝火を今いる広間の端と、外に繋がる道の途中に一箇所ずつ、外には明かりがもれないように設置する。もう一つは今日作ったばかりの小屋の前だ。ここは倒れたときに燃え移ると困るので、十分に距離を取って設置する。ここに明かりがあれば、夜でも十分に小屋を利用できる。


「やっと完成か」


随分と、拠点の準備を整えるだけで時間がかかった。だが、設備は十分以上に揃ったと言える。今後更に奥地に拠点を移した際にこれほどの物を作るかは未定だが、最低でも小屋は作ることになるだろう。そう考えると、そのための練習としても良いものが作れた。


外では、もう日が傾いているだろう。中もかなり暗くなってきたので、作ったばかりの篝火に薪を入れ火を着ける。暖かな光だ。せっかくなので三箇所全部につける。幸い薪の入手には全く困らないし思い切りよく使っても構わないだろう。


拠点の設置が終わったところで、今日は少し早いが夕食を作ることにする。夕食といってもいつもと代わり映えのしない肉のスープとパンを一欠片。三匹には干し肉を上げておいた。俺が獲物を求めているとわかったのか、食事後にいなくなってまた鳥を捕って帰ってきてくれた。


食事前だったら今日は新鮮な肉が食べれたのだが、それも干し肉にするための加工をしておいて外に干してきた。


今日できる作業は大体終わったわけだが、まだ眠るには少し早い。せっかくだし、じゃれ付いてくるナツとフユと遊んでおこう。アキはもうテントの中に潜り込んで眠っているようだ。


いつものように座っている俺の膝にじゃれ付いてくるナツを抱えあげて膝に乗せる。


頭や腹、背中などをなでてやると気持ちよさそうに目を細める。フユが俺もかまってくれとナツの隣に登ってくるので、一緒に撫でてやる。


その後しばらく二匹と遊び、テントに入って眠りにつく。明日からはようやく探索を始められる。このあたりにはどんなモンスターがいるのか、どれほどの強さか。それに、ダンジョンは見つかるのか。まだ一つも見つかっていない。こちら側にあってもおかしくはないだろう。楽しみだ。

ムウがやった作業のうちいくつかはスキルとMPを消費すれば時間をかけずにできます。

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