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冒険の中に生く~冒険に憧れたプレイヤーは、現実となったゲームの世界を攻略なんて無視して冒険する。家、武器、道具、鎧そして料理。全部作るから街には戻らない。世界の果てを見てきてやる~  作者: 天野 星屑
第2章:強者集う闘技大会、そして浮遊大陸へ

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103.揉め事

後書きで評価について書いています。

「これがワープゲートか。転移結晶って名前に変えたほうが良いんじゃないか?」


今日は11月5日。武闘大会の3日目だ。


南の武闘都市へワープで移動するため、初めてワープゲートを使ってみる。中央の広場にある大きな青い結晶に手を当て、武闘都市という単語を想像する。すると、暗かった結晶が青く光り始めた。


やがてその光が収まると、ネフト、ネクサス、ルクシアのいずれとも全く違った町並みが目に入る。木でできた家に藁葺の屋根。地面も石畳ではなくむき出しの地面だ。


「さてと、コロシアムの方角は…」


アルトの窓で地図を確認しようとしたが、その必要はないようだ。周りを歩いている人の足が、全て同じ方向を向いている。


この武闘都市リンシアには城壁が一切無いようで、視界は大きく開けている。周りのプレイヤーが向かっている方向の先に、大きな建造物が見える。あれがコロシアムだろう。


それにしてもかなりの大きさのようだ。まあ1万5千人を収容する必要があるのだから当然だろうが。


タリアとの約束の時間は11時なので、まだ3時間ほどある。武闘大会の始まるのも9時なのでまだ時間はあるはずだが、周りのプレイヤーはどんどんコロシアムへと向かっている。見たい組み合わせがあるのか、なるべく良い席を取って近くで見たいかのどちらかだろう。


確かコロシアムの外では食べ物の屋台をやっているという話だったし、俺もそこでのんびり何か食べながら始まるのを待つことにしよう。


先日出会った少年、ウミも大会に出るとは言っていたので、見る機会があれば応援したいと思っている。俺が本当に応援したいと思っているのは彼ぐらいだろう。


フォルクたちや、カナ、タクももちろん頑張って欲しいとは思っているが、どちらかというと彼らがどう戦うのか、どれぐらいやれるのか、という好奇心の方が強い。


だが、ウミに関しては違う。彼は、本当に空を飛んだのだ。珍しく感動してしまった。そしてある程度飛べるようになったから、先のエリアに進めるように戦う練習をしているのだという。


飛んでみたいとは俺も考えたことはある。だが、この世界の飛行魔法はお世辞にも飛んでいるとは言えないものだった。だが、彼はどうしてか自由に空を飛び回っていた。俺はその努力というか決意というか、飛ぶということに対する執念がすごいと思ったのだ。


周りのプレイヤーの流れにのってコロシアムに近づくと、いい匂いが漂ってくる。どうやら屋台はもう活動を始めているようだった。


そちらに近づいてみるとずらりと屋台が並んでいる。コロシアムの入り口への道は邪魔しないようにその両側からコロシアムを囲むように円形に屋台が並んでおり、それぞれの店が内側を向いている。


朝食は干し肉を適当にかじっただけなので、何か美味しそうなものを探すことにする。先日市場で野菜を買ったり街中の工場でベーコンを買ったり、街中の八百屋でも野菜を買ったりと食材はあるのだが、すべてログハウスまで持っていこうと思っているので食べなかったのだ。


そのため、今は美味しいものが食べたい。


屋台の正面が見える内側に入ると、多くのプレイヤーが食べ物を買っている。おそらくコロシアムの中に持っていって観戦しながら食べることも出来るのだろう。


最初の頃に街で売っていたような串焼きやサンドイッチを売っている屋台に加えて、冷たい飲み物だったりシチュー、中にはピザなど、色々なものを売る店が増えているようだ。中には揚げ物を売っている店もある。どうやら油も見つかっているらしい。


「どうするか」


色々とあって何を食べようか悩む。シチューも揚げ物も街では食べれたのでここはピザにしておこうか。それほど冷え込んでいるわけではないし、冷たい飲み物を買うのも良い。


「ムウくん?」


買うものに悩んでいると、後ろから声をかけられる。振り返ると、タリアがいた。以前ルクシアで着ていた装備と比べると幾分暖かさそうな胸当てをしていて、何より服をその下に来ている。


「なんだタリアか。おはよう」


「おはようございますー。なんだは酷くない?」


「特に他意はない」


「それ本意があるって言ってるようなものじゃない」


「まだ武闘大会も始まらないこんな時間に誰が声をかけてくるものかと思っただけだ」


「そ。まあ許してあげる。それにしても、随分早い時間に来たわね」


タリアがため息をついて話を変える。


「屋台があるという話だったから、朝食をかねて食べに来た。さっきリンシアについたばかりだ」


「なるほどね。そう言えばネフトとネクサスに行くって言ってたわね」


「ああ。ネフトに行ったら時間が足りなかったから、ワープゲート、で…」


タリアの後方から叫び声が聞こえる。俺は言葉を切って耳をすます。タリアも気づいたようで後ろを振り返っている。


「おい、警備班いないか!?スタッフでも良い!」


叫び声がした方から人が走ってくる。その後ろでは人だかりが出来ていて、誰かが争っているようだ。


「ごめん、私ちょっと行ってくるわ」


「俺も行こう」


「ありがと」


人だかりの方に走り出すタリアを追って俺もそちらに走っていく。人だかりの向こうからは二人のプレイヤーが言い争う声が聞こえた。


「自分が負けたからと俺のパーティーメンバーをけなすな。自分の腕を見直せ」


「せこい真似しといて何言ってんだよ!普通にやったら俺があんなやつに負けるわけねえだろ!」


落ち着いた男の声と、若い男の声。


「どいて!スタッフよ!」


タリアがそう言うと、人だかりが別れて言い争っている二人のプレイヤーが目に入る。一方は盾と剣を背負い重厚な鎧をまとった剣士。長髪を頭の後ろでくくっており、厳しい顔つきをしている。


もう一方は、片手剣を背中に背負った軽装の戦士だ。茶髪にイヤリングをしており、先程の話し方もあいまってヤンキーと言うか随分と軽薄な人物に見える。


茶髪の男の方は随分と怒っているのか唾を飛ばす勢いで喋っているが、長髪の男は静かな声で話している。俺から見ればあれで十分に格の差がわかると思うのだが、なぜ茶髪の男はあれほどまでに執拗に絡むのだろうか。


「ではお前は俺に何を求めているのだ。それすら言わない相手に仲間を悪し様に言われて許すほど俺は優しくないぞ」


「はあ!?なんで俺が許されなきゃなんねんだよ!せこい真似したのはそっちだろうが!」


話が噛み合ってないように思う。なんというか、茶髪の男の方はただひたすらに苛立ちをぶつけているだけのように見える。まるで子供が駄々をこねているようだ。


いよいよ茶髪の男が掴みかかりそうになったところで、タリアが割って入る。


「二人とも、言い合いはよそでやりなさい」


「あん!?うっせんだよ引っ込んでろババア!」


「私は武闘大会の運営スタッフよ。文句があるなら運営に言いなさい。それとも、この場に憲兵呼ぶ?」


タリアがそう告げると、茶髪のプレイヤーがうろたえたように一歩下がる。憲兵、というのがそれほど恐ろしいのだろうか。


「こっちの人には悪いけど、他所で、街中で人の迷惑にならないように揉めるなら文句は言わないよ。でもここは武闘大会の会場なの。大会を見に来てる人も、この雰囲気を楽しんでる人もいるの。あなたが好き勝手に騒いでいるだけで周りが迷惑だし嫌な気分になるのよ。それにその場所だと屋台の邪魔にもなるしね。わかった?」


「~~~~うっせえよクソが!運営にすり寄ってズルしやがってよ!」


「あなたは、現実でも警備員に騒がないでくださいって言われたらそう言い返すの?」


「知らねえよ!死ねよカスが!」


捨て台詞のように言いおいて男は逃げていく。まだ怒りが収まらない様子だが、タリアの目のあるところで通行人に噛みつかないだけの分別はあるようだ。


「はーい、他の人も解散して。とりあえず解決したから」


タリアは野次馬たちを解散せて、絡まれていたプレイヤーに話しかける。


「あんな言い方しちゃってごめんなさい。事情を聞かせてもらえますか?」


「いえ、武闘大会のスタッフとして出来ることは武闘大会関連だけなのはわかっています。むしろ止めてくれたことに感謝します。昨日の予選で私の仲間が彼に勝ったのですが、最後まで隠していた魔法を最後の瞬間に出して不意を突き勝利を掴みまして。彼にはそれがずるに思えたらしく、私にそれを言ってきて答えているうちに言い合いになってしまいました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」


「事情説明ありがとうございます。まあ、騒ぎになってしまったのは仕方ないと思います。彼はおそらくクラウドというプレイヤーです。常習犯と言いますか。他のプレイヤーに言いがかりをつけては喚き散らしているプレイヤーですので。一応、今後あの方に同様に絡まれた場合はすぐにスタッフを呼んでください。それでは、失礼します」


「感謝します。それと…」


タリアは話が終わったのでその場から立ち去ろうとするが、当の男性プレイヤーはまだ話したいことがあるようだ。


「タリアさん、ですよね?有名な鍛冶師の」


「…ええ、まあ、はい」


「あなたの武器には感謝しています。こいつも手に馴染んで扱いやすいですし。と言っても、カスタム品は俺には手が出せませんが。その礼が言いたかっただけです。ありがとうございます」


「…ありがと。そういうことなら、次カスタム品を作るとなったら値引きしようかな」


「え?」


「ふふ。私達生産職にとっては、使ってる人から直接礼を言われるのって嬉しいのよ。すごく。だからその御礼に。もちろんそんなにたくさんは値引きしないわよ」


「なるほど…。また武器を新調するときには伺います。今日はありがとうございました」


「いえいえ。仕事だしね。武闘大会楽しんでね」


「はい。そうさせてもらいます。では」


軽く頭を下げて男性プレイヤーはコロシアムの方へと去っていく。


「あんなのもいるんだな」


「うん、困ったことにね。あの人は特に自分が一番じゃないと気がすまないみたいで、結構悪い評判が立ってるのよ」


「なかなかプレイヤーの手では蹴り出せないし、難しい問題だな。本当にお疲れ様だ」


「そうなのよね。それよりムウくん、朝ごはんまだだよね?」


「ああ、まだ買ってないが?」


「私、疲れて喉かわいちゃったな」


言葉をかけてくれるぐらいなら何か飲ませてくれと言っているのだろう。仕方がない。


「ついでに買っておこう」


「やった。それなら、あっちの店がおすすめだよ」


タリアに案内されながら、屋台をめぐる。武闘大会の前に嫌なものを見てしまったが、タリアのおかげで嫌な気分にならずにすんだ。もしかしたらそこまで考えてたかってきたのかもしれない。


「いや、ないな」


「ん?どうしたの?」


「なんでもない」


おそらく単純に喉が渇いただけだろう。そんな深い考えがあるようには思えない。これを買ったら、中に入ろう。そろそろ大会が始まる頃だ。

【評価について】

評価とは、今小説を読んでいるこのページを下にスクロールしたらある星のことです。クリックすると評価が付きます。後で訂正も出来ます。


面白くなかったら1を、なんとなく面白いかな~と思ったら2や3を。次が読みたいと思ったら4や5を押して頂けるとありがたいです。


作者にとっては、読者の方に読んでもらっているという実感が湧くことが一番力になります。好きの反対は無関心というように、面白くない、の評価すらいただけないのが一番つらいので、面白くないな、と思ったら星1をつけていただきたいです。もちろん面白ければそれ以上を。


私の小説に限らず、読んだ場合にはとりあえず星を押しておいてもらえると作者の元気になります。ので是非お願いします。

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