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冒険の中に生く~冒険に憧れたプレイヤーは、現実となったゲームの世界を攻略なんて無視して冒険する。家、武器、道具、鎧そして料理。全部作るから街には戻らない。世界の果てを見てきてやる~  作者: 天野 星屑
第2章:強者集う闘技大会、そして浮遊大陸へ

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97.魔法都市ネクサス-1

夜遅くになってから入ったネクサスで宿を取って休んだ翌日、早速街の中を歩き回ってみる。


先日宿を取るときにも感じたが、ネクサスはルクシアと比べて貴族の住んでいるような屋敷が多いようだ。ルクシアはしっかりとした作りながらも簡素な石造りの家が多かったので、レンガ造りや漆喰で塗り固められたここの町並みは新鮮に感じる。


そんな建物に面した通りの中で、他のプレイヤーたちはルクシアと何ら変わらない様子で行動していた。マップを見た所ルクシアの中央広場ほど広い広場がないようだ。


そのため、広い通りや小さな広場になっているところで露店を開いているプレイヤーが多いようだ。


また、ときどき建物と建物の間に人の通れそうな隙間がある。おそらく奥にはあまり表立って営業出来ないような店や、魔法使いの住居が広がっているのだろう。


とりあえず町並みを観察しながら、タリアに言われていた図書館へと向かう。


マップで見た所、街の中央付近に冒険者ギルド、教会と隣接してあるらしい。教会がある、ということはここからもプライベートエリアにアクセス出来るのだろうか。


所々で営業している大地人の店では、水晶や結晶、杖、様々な薬草など、魔法や錬金、調合に関係しそうなものが多く置いてある。名前から察するに、新しく発見された4つの街はそれぞれ異なる特徴を持ち、それぞれに対応するスキルを持つプレイヤーが必要とするものを入手するのに向いているのだろう。


15分ほど歩いて街の中央にたどり着いた。ルクシアと比べてはっきりとした大通りというものがなく、通りが広いと思ったらすぐに突き当りでそこを曲がると細い道になっていたりと、入り組んだ構造をしていた。これなら屋根の上に登って移動したほうが早そうだ。


もちろんそんなのは無粋なので、急いでいない限りはやらないが。


図書館は、今まで見てきた中でも特に大きな建物であり、城と塔をかけ合わせたような外見をしている。


正面の扉は大きく細かな装飾がなされているが、押すと全く音をたてずに静かに開く。魔法がかかっているのかずいぶん軽く、押す手を離すとピタリとその場で止まった。


俺が中に入ると後ろで扉が静かに閉まる。正面に受付があり、その左右と奥の階段から本がある場所へと進めるようだ。


とりあえず初めて図書館を利用するので、受付の女性に話しかけて、利用法に関して説明を受ける。


彼女から受けた説明をまとめると、



・本を図書館内で読むのは自由

・本を借りたい場合は特殊な魔道具を使用する

・貸し出した本は1週間で消滅する

・正規品が欲しい場合は受付まで行って声をかければ、費用を払って複製してもらえる



とのことだ。特に本の貸し出しは特殊なようで、その場にある本を持っていくのではなく、特殊な道具を使用すると、使用者のMPを消費して本を複製してくれるらしい。その期限が1週間というわけだ。


また正規品を入手したい場合には、複製に一日以上かかるらしい。とりあえず色々と本を探してみよう。伝承のような物語を読めるものと、バターなど俺の知らないものの作りかたがのっている本の正規品がほしい。


特に生の食材を加工する際は、手順通りにやらないと成功しないのでそれがわかる本がほしい。後は色々なアイテムがのっている本も探してみよう。特に毒など矢に特殊な効果を付与するものを作れそうなアイテムと、弓に使えそうな素材がのった本があるとありがたい。


案内によると左側がスキル、武器、生産などプレイヤーの実益関連の本が置いてあって、右側には伝承や騎士物語など読み物が置いてあるようだ。階段の奥は生物学や物理学など、あちらの世界にもあった学問に関する本が置いてあるらしい。


この世界なら科学を駆使して存在しないものを作ったりできそうな気もする。鉄砲や核が出てくるとゲームとして壊れるのでそれは基本的に作れない気がするが、例えば俺が先日作った漆喰も、科学を利用した建築素材の一つだ。そういったものは生産に関する本にものっていそうだが、アイテムとしてのレシピではなく科学的な面から見れると調整がしやすいだろう。


とりあえず右側の部屋に行って生産関連の本を探す。スキル関連で面白いスキルがのっている本もありそうなのでそれも後で確認しよう。


棚には、様々な生産スキルの名前を題名にした本や、『革鎧の制作方法』『剣の構造』といったより特定のものに特化した本が並んでいる。


また同じものを題材にしている本でも、作り方だったり、種類の紹介、その道具に適した素材の紹介など様々な観点から書かれたものがあり、それぞれの組み合わせでかなりの数の本が存在する。


しばらく本棚の間を回って、面白そうな本を探してみる。俺の他にも数名のプレイヤーがいて、同様に棚の間を歩きながら本を見ている。


ゲーム内の本なので大したものでは無いかと思ったが、なかなか完成度が高い。


例えば弓づくりの手順書のうち木を素材とした単弓の説明。単純に武器の形を木材で作るだけでなく、どんな木材弓に向いているのか、またその木材のうち特に弓に向いている部分はどこか、や、弓を作る際の手入れにパーツごとの呼び方、どこをどう改造するとどう性能に影響するかなど、事細かにイラスト付きで書いてある。


おそらく他の本も同じレベルで出来ているのだろう。読むのが楽しみになってきた。


しばらく歩き回って、6冊の本を選び出す。


まずは料理に関する本。バターやチーズなど乳製品の作り方が乗っている本と、パンやピザなど小麦を使った主食の作り方が乗っている本。そして、鰹節など保存の聞く出汁や調味料の作り方がのっている本を選んだ。いずれも、作ってみたい、もしくは今後の向こう側のエリアでのソロ探索で利用したいものだ。


次に竈、燻製器の作り方がのった本。これは他にも料理器具の作り方がのっている本だ。燻製器は絶対に使うし、竈は今のところは薪ストーブで代用できそうだが、作り方を知っておきたいのだ。


後はアイテムとして利用できる植物の性質がのっている本。これは具体的な使いみちではなく、その性質ばかりを特集している本だ。


ちらっと見たときに興味が湧いたので、様々な種類の木の家という本も買うことにした。


本をまとめて受付のところに持っていき、複製の依頼をする。


「一冊あたり2万ゴールド費用が必要となります。また完成まで一日いただきます」


「わかった」


高い、が、知識を得るためだ。それにあちこちに動き回るので、一週間では絶対に足りない。しっかりと金をかけておこう。


12万ゴールドを支払い、本の複製を依頼する。


「こちらの本は、カバーをつけますか?」


「カバーっていうのはどんなのだ?」


受付の女性が棚から革製のカバーを取り出してきて、実際に本につけてみてくれる。


「このような感じです。一冊に付き一つ、大きさを調整しておつけします」


本はハードカバーで固い表紙をしているが、ただならつけてもらったほうが安心だ。


「カバーもつけてくれ」


「わかりました。それでは明日の12時以降に、こちらの魔法鍵を持って受け取りに参ってください」


「わかった」


魔法鍵と呼ばれた、カード型の魔法道具を受け取る。なくさないようにインベントリにしまっておこう。


受付の女性に礼を言って、今度は物語伝承の方の部屋へと入る。題名は古めかしいものばかりでライトノベルのようなものは当然のように無かったが、棚の中から面白そうなのを2冊選ぶ。それも先程と同様に複製を依頼しておいた。


冬ごもりで外は雪が吹きすさぶ中、ストーブの近くで暖かい煮物を食べながら本を読んだりのんびりするというのをやってみたいのだ。


本の依頼を終えた後は、夕方まで街の中をあちこちと探索してみることにした。街周辺で戦えるモンスターはおそらく昨日戦ったので全てだろうし、冒険者ギルドには入るつもりがないので依頼をこなして時間をつぶすことも出来ない。


ウッドゴーレムから取れたアイテムはいじってみたいと思うので、それは夜にしよう。


ここにはルクシアと違う料理を出すレストランもあるだろうから、それも楽しみだ。本を眺めているうちに大きく昼を回ってしまっている。まずは食事を取れるところを探そう。

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