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冒険の中に生く~冒険に憧れたプレイヤーは、現実となったゲームの世界を攻略なんて無視して冒険する。家、武器、道具、鎧そして料理。全部作るから街には戻らない。世界の果てを見てきてやる~  作者: 天野 星屑
第2章:強者集う闘技大会、そして浮遊大陸へ

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95.始まりの街ルクシア-24

「普段はこのゲームってワープみたいな移動手段って無いでしょ?」


「ああ、無いな」


「でもそれだと武闘都市リンシアに闘技大会の日にみんなが集まるっていうのが難しいから、それぞれの街とリンシアをワープゲートで行き来出来るようになってるの。あとはおまけで、以前行ったことのある街へもワープゲートを使えるようになっているわ。広場の大きな青い結晶に触って街の名前を言ったら転送されるから試してみると良いわ」


「なるほど。それはイベントの間だけなのか?」


「冒険者ギルドがそう発表してたからそうだと思うわ。たしか『イベント期間のみ臨時措置として』って言ってたと思う」


イベントが終わったら、また街と街の移動にはテントを使うことになるのか。


俺自身はワープゲートがあろうと自分の足で行き来したいと思うが、他のプレイヤーにとってはもう適正レベルの遥か下のエリアを一日以上かけて進むのは面倒くさいのではないだろうか。俺はそっちの方が風情があっていいと思うのでむしろ歓迎ではあるが。


「あまり転移で楽に移動というのはしたくないから時間があったらやめておく。どうせ闘技大会も3日目以降しか見るつもりはないしな」


「うん?」


注文していた料理を受け取っていて背を向けていたタリアが、そう疑問の声を上げる。彼女が注文したのは唐揚げのようだ。米があったらぜひとも唐揚げを食べたいのだが、パン、か。合うのだろうか。それを言えばトンカツもなのだが、カツのほうがまだパンに合いそうな気がする。


「ムウくんって闘技大会参加しないの?」


「いや、ありがとう。いや、別に参加するつもりはないぞ。というか俺はソロでの戦闘は得意分野じゃない」


「そうだっけ?一人であんなにアイテム持ってくるからソロで戦うととても強いんだと思ってたけど」


届いた料理をパンにはさみながら、タリアの疑問に答える。


「いや、あれぐらいならソロで倒せるが、それぐらいじゃあ強いと言わないだろ」


俺の中でのソロの強いの基準はフォルクやトビア、シンといった仲間たちだ。カルマは置いておいて、他の10人は本当に強い。力や速度、技術、勢い、戦いの運び。それぞれに得意とする武器と戦い方で強くなろうとしている。


あれを見てしまうと、自分がソロで大会に出るのもどんなものか、と思ってしまうのだ。どうせ大会ならフォルクたちが出てくるだろう。


今はまだ、俺の戦闘力は彼らに及ばない。彼らの斬撃を弾けるようになったら、鉈の攻撃も脅威に出来るようになったら、もっと的確に足を捌けるようになったらそのときこそソロPvPに全力で挑んでみよう。


「そっかあ。ムウくんの基準がすごい高い気がするんだけど。まあ、それぞれだもんね。3日目以降は見に来るんでしょ?」


「そのつもりだ」


闘技大会の日程は全4日。明記はされていないがトーナメント形式だろう。だったら最終日付近に強いプレイヤーが出揃っているはずだ。それを見れれば満足だ。


「じゃあさ、当日会ってもらいたい人がいるんだけど、どうかな?私の入ってる生産職集団のリーダーやってる人で、あっちのエリアについてムウくんに直接聞いてみたいって。あ、別にムウくんの名前は出してないよ。そういう人がいる、って言ったらぜひ会いたいって言ってるの。どうかな?」


生産職集団のリーダーか。タクに聞いた所タリアは相当有名なプレイヤーらしい。その彼女の属している生産集団のリーダーなら、かなりの人物だろう。


「闘技大会を観戦しながらなら会いたいな。面白そうだ」


「わかった。そう伝えとくね。また詳しいことは日が近づいたら連絡するよ」


「ありがとう」


「うん、それじゃ食べよっか」


「ああ。いただきます」


「いただきます」


ソースをかけたカツとオニオリングを挟んだパンにかぶりつく。


「美味い」


「でしょ?」


カツの肉は柔らかく、しっかりと歯ごたえがあるのに口の中で溶けるようになくなる。油が多いのか。オニオリングも油っぽくなく爽やかな美味しさだ。


「それにしても、ソースとケチャップがあるのか」


「まだプレイヤーには再現できてないから大地人の店でしか食べれないけどね。ムウくんのやろうとしてるバターとかと同じで、今料理人たちが躍起になって取り組んでるの」


「違いない」


人それぞれ様々な楽しみ方や感性があるが、上手いものを食べたいという欲は万人共通だ。食べ物の旨さというのは、どこの世界もどんな場所でも変わらず人々を笑顔にするものなのだ。


「あ、ところで、ムウくんも浮遊大陸の方のイベントは参加するんでしょ?」


「ほうらな」


「何?ちゃんと飲み込んでから喋ってよ、ふふっ」


タリアに笑われた。口の中のものを飲み込む前にとりあえず答えたのだが、うまく言えなかったのだ。口の中のものを飲み込んで改めて答える。


「そうだな。どっちかというとそっちに参加したいのがメインで戻ってきた」


「そっか。どんな場所なんだろうね。あとイベント期間は一週間、って話だし、その間こっちに残って攻略を進めたいって人も結構いそうだよね」


「いるだろうな。俺には他のプレイヤーの心情は察せないが、まだ早くこの世界から脱出したいっていうやつはいるんだろ?」


「まあ少数派だけどね。大半の人はゲームを楽しめる気分に戻ってきてるのよ?浮遊大陸イベントの実施中と終わったあとに新人プレイヤーをクランに勧誘して育てたい、スタートダッシュを助けるって人も結構いるし」


「クランか。今回はギルドじゃないんだな」


「クランはプレイヤーが勝手に言ってるだけよ。だって冒険者ギルドが存在してるしね」


「なんだ、まだクランは出来てないのか。システム的な問題か?」


「うーん、何かしら条件を満たして無いみたいなのよね。ポテトもらっていい?」


「良いぞ。なるほど。まあでも、新人プレイヤーへの手助けをする奴らがいるなら俺たちの時みたいにみんなへこまなくてもすむだろうな」


「あのときはひどかったからね。ゲームマスターも少したってから説明するし。最初に説明されてたらもっと楽しもうって思えたわよ」


「あまりに凹んでる奴が多くてゲームマスターも驚いたんじゃないか?せっかく理想の世界を作ったのに、って」


俺がそう言うと、ジトーっとタリアが睨んでくる。


「そんな風に思えるのはムウくんだけだから。普通は怖いもんだよ」


「まあ、そうだろうな」


「とにかく、新規プレイヤーの方はプレイヤーみんなで気にかけようって話になってるから、ムウくんもよろしくね」


「俺が気にかける分には別に構わないが、プレイヤーの中には雑魚にかまってられないっていうやつもいるんじゃないか?」


俺はどうせイベントが終わったらログハウスに直行だ。新人プレイヤーと関わることもないだろう。それより、懸念したほうが良いのは新人プレイヤーに対して心無い言葉をかけるプレイヤーの存在だ。


「もちろんそう言う人もいるでしょうね。だから一応そういう人に対しては、関わらないようにしてくれ、って言ってるわ」


「それが妥当か」


元々新人プレイヤーを助けるつもりのない奴らは、興味そのものが無いだろう。だったら関わらなければいい。もちろんあえてきつい言葉をぶつけてそれを楽しむクソ野郎もいるだろうが、そういうやつからは他のプレイヤーが守ってやればいい。



******



その後色々と話して、食事を終える。


新しいスキルについてや、有名なプレイヤーやパーティー、クランについて。色々と面白そうな話が多かった。早くPvPが出来るぐらいの技術を整えたいと感じた。


また三匹は今は別々でいることがわかった。ナツがジントたちと一緒に冒険中で、フユはユーリのところに、アキはマーシャの作ったベッドで四六時中寝ているらしい。


あいつらのことも一時期話題に上がったが、農業都市で大地人からの依頼をこなしているうちに“調教”スキルを入手可能になったプレイヤーがいたのでうまくその話題に隠れることが出来たらしい。掲示板は見ていなかったが、俺が三匹を連れて街に戻った頃から少しずつ話には上がっていたようだ。まあ隠していなかったのでそれも仕方ないだろう。


「今日はありがと。色々と話せて楽しかったよ」


「こちらこそ。街の情報には疎いから助かった」


「ちゃんと掲示板も見て自分でも情報収集しなさい」


「はい」


タリアののりに従って素直に答えると、彼女はふふっと笑う。はっきりとは聞いてないが、以前あった独占問題も解決したのだろう。せっかくこんな世界なのだから、心は笑顔で楽しまなければ嘘というものだ。


「それじゃあ、おやすみ」


「ああ、おやすみ。また闘技大会の日に」


「ええ。連絡するわ」


タリアと別れてプライベートエリアに戻る。今日はもう少しだけ矢を作ったら寝よう。明日は北の魔法都市に向かって出発だ。名前は忘れた。まあつけば自ずと分かるだろう。ボスエリアよりも奥には新しいモンスターもいるだろうし、楽しみだ。

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