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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
29 巨獣の台地の小さな魔物編!
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707 【神々のお話34】魔物神エネミリガと技術神スキルイ

「いやー、とにかくですね、私としてはですね、今後も異世界転生配信業界をより一層盛り上げ、ステータス制及びスキル制の普及促進に尽力して参りたいと!まあ、そんな風に考えているわけでしてね!」


 ペラペラ、ペラペラ......立て板に水といった様子で、男がしゃべり続ける。

 その男の名前は、スキルイ。

 ずんぐりむっくり、筋骨隆々とした体形をタイトなスーツで無理やり覆い、本来であれば厳めしい顔つきに胡散臭い笑顔を浮かべるその男は、このアーディストという世界の技術神。

 神々の一柱である。




「............」


 そして、スキルイの長話を、だらりと横たわりあくびをしながら聞いている女性もまた、神である。


 その名を、魔物神エネミリガ。


 一軒家よりも巨大な雌獅子の体の首から、大部分が獅子の毛で覆われた巨大な人間女性の上半身が生えている......そんな姿をした神である。

 ちなみに二柱が今いるのはエネミリガの神域であり、丘の上に建つ朽ちた遺跡を模した空間であった。




「そのためにも、ですね!ぜひとも魔物神エネミリガ様にも異世界転生配信に参加していただきたく!この度私、参上いたしました次第でありましてですね!」


 長かった前置きが終わり、ようやくスキルイが本題を切り出した。

 ......まあ、話半分に聞いてはいたが......流れ的に、この胡散臭い男が何を目的にしているのか、エネミリガは理解していた。

 故に、言うべき答えは既に決めていた。




「断る」


「実は魔物神エネミリガ様に最適なプランを......へ?なんですって?」


「妾は、魔物神ぞ?魔物の、神ぞ?人の子らを傷つけ、殺す......それが創造神様より与えられし、我が使命ぞ?」


 アーディストにおいて、魔物とは“人類の敵”である。

 神々の視点から見れば、人類に試練を与え、魂を鍛錬し、虚無を漂う魔素を取り込み世界を大きくするために、必要な“器官”である。


 そんな魔物の象徴であり、管理育成を司る存在......それが魔物神エネミリガなのだ。

 だから。


「異世界転生配信と言えば、人の子らが、“チート”なるものを振りかざし暴れる茶番じゃろうが。何故妾がやらねばならぬ。妾がすべきは、人の子らを殺すことじゃ。異世界転生配信でなすべきこととは、真逆のことじゃ」


 エネミリガはそう語ると、面倒くさそうにあくびをした。


 言葉を聞いても態度を見ても、それは完全なる、スキルイに対する拒絶であった。


 ......が、しかし。




「いえいえいえ、いーえいえいえ!お待ちください魔物神エネミリガ様!どうやらあなた様は、大いなる誤解をしていらっしゃるようだ!」


 エネミリガがそう回答するであろうことを......スキルイは事前に想定していた。

 彼は技術神ではあるが、営業業務も厭わず行う男神だ。

 つまり、経験を積んでいる!


「誤解、じゃと?」


 どうやらまだ話をやめる気のないスキルイにうんざりとしながら、エネミリガはため息をついた。


「何も異世界転生配信とは、人間が主人公でないといけない訳ではないのですよ!『魔物転生』というジャンルがありましてですね!狼だの、ゴブリンだの......果ては、この世界には存在しない種ですが、スライムまで!多種多様な魔物を主人公とした作品が、数多く作られているのです!」


「じゃから妾に、それをやれと?しかし、中身は人の子の魂じゃろ?それじゃと、人の子と敵対しない魔物が生まれてしまうのでは?」


「ええ、まあ、はい......それは、ケース・バイ・ケースですね」


「では、ダメじゃ。『魔物は人を害する』。それがこの世界の、理じゃ」


 そう言ってエネミリガは、四肢に力を入れ立ち上がった。

 実際のところこの世界には、“従魔師”という職業を筆頭に、魔物と人が共存している事例は数多く存在するし、エネミリガもそれを黙認している。

 要は、今彼女が言ったことはあくまでも原則論であり......単に話を、打ち切ろうとしているのだ!




「いえいえいえ、いーえいえいえ!それなら別に、『人殺しへの忌避感』だの『倫理観』だの、そういったものを取り除いた上で主人公を転生させれば良いだけですので、何も問題はないというわけなんですね!『魔物に転生した主人公が、人の思考を持ちながらも、魔物の本能に従い人間を虐殺する』......それもまた、『物語』だ!そういった“ほの暗さ”を好む神々もいらっしゃるわけでですね、そう、つまり、需要がある!」


「不道徳じゃのう......」


 これだけ拒絶してもなお食い下がるスキルイに、エネミリガは眉をしかめた。

 彼女は無駄話としか思えないスキルイの話を、既に三日は聞き続けていた。

 いい加減、我慢の限界が近づいている。


 とはいえ、スキルイも神だ。

 格下とは言え、気軽に食い殺して良い存在ではない。


「ねえ、どうでしょう魔物神エネミリガ様!この度私、エネミリガ様にぴったりのプランをご用意しているんですよ!要は、あれでしょう?煩わしいですよね?配信の準備やら何やら!」


「............」


「そこでご提案です!魂の準備、プロットの作成、動画編集だの作品投稿だの!全て私スキルイが担当いたします!魔物神エネミリガ様には、お持ちでいらっしゃる膨大なマナの内、ほんの少しを、原資としてお支払いいただくだけ!そうすれば異世界転生が配信され、広告料による収入が発生いたします!」


「............」


「そこからいくらか、私にいただければなと、ですね!そういうビジネスプランであるわけですね!魔物神エネミリガ様は、何もせずとも広告料がもらえて嬉しい!私は、異世界転生配信を通じてステータス制及びスキル制をこの世界に普及できて嬉しい!つまり、ウィン・ウィンの関係!さらには、視聴者は新しい異世界転生配信を見れて嬉しい!なんと、三方良し!」


「............」


「これはもう、お得を超越した超お得!いかがですか魔物神エネミリガ様!さらに付け加えるとすれば......」


「あぁ、もうッ!!わかった、わかったからもう黙れいッ!!」


 ここでついに、エネミリガに我慢の限界が訪れた!

 エネミリガは本気の殺意を向けながら、スキルイに叫んだ!




「つまり、妾が貴様にマナを払えば、貴様はここからいなくなるんじゃなッ!?素晴らしいッ!!とっとと契約して......疾く失せよッ!!!」




 上級神から殺気を浴びせられ、スキルイは冷や汗をかいて顔をひきつらせたが......それでも満面の笑顔を浮かべて、頭を下げた。


「ご契約......ありがとうございます!」




 その後、スキルイはよほどエネミリガの殺気が恐ろしかったのか、配信にかかる全ての作業をあっという間に終わらせ、すぐさま彼女の神域を去っていった。

 さすがは神であり、その作業速度は人知を超えている。




◇ ◇ ◇




 それから数年が経って。


「はあ......」


 エネミリガは朽ちた遺跡の中で、スキルイの置いていった冊子をパラパラとめくっていた。

 契約書に、異世界転生配信の入門書、それとスキルイが作り上げたエネミリガ用の企画書等々......。


 興味はなくとも、時間はある。

 マナを支払う以上は、それらの一言一句全てを覚えておきたい。

 恐ろし気な見た目と世界における役割とは裏腹に、エネミリガは根が真面目なのだ。


 そんな彼女の現在の心情を簡潔に表すなら、『やってしまったな』という後悔である。


「............」


 ちらりと、石畳を割って伸びた大樹の洞に目をやる。

 そこには本来あるべき暗闇はなく、卵を温める巨大なカラスのような魔物の姿が映し出されていた。

 それは下界の映像であり......その親鳥が温める卵の内の一つに、エネミリアの“主人公”の魂が宿っているのだ。


 ............正直、配信に関しては全てをスキルイがセッティングしていったので、もともとは思い入れも何もなかったわけだが......。




「それでも......のう」


 パラりと、エネミリガは物語の企画書をめくった。

 その表紙には、【醜い魔物の成り上がり】というタイトルが、視認性の高い太めのフォントで大きく印刷されている。

 その企画書の内容を簡単にまとめるならば、弱く、小さく、そして醜い魔物として生まれた主人公が、強敵を打ち倒し、強くなっていくストーリーだ。


「不憫じゃのう......」


 スキルイが選んだその物語の舞台は、エネミリガの管理地である巨獣の台地。


 エネミリガにしてみれば、『よりにもよって、そこを選ぶのか』とため息をついてしまうような場所だ。


 巨獣の台地は蟲毒によって強靭な魔物を作り上げ、ストックするための養殖場。

 かつて起きた“滅びの日”を繰り返さないため......適切なタイミングで、人間の文明を破壊する。

 そのための“敵役”を養成するための土地なのだ。


 ......とてもじゃないが、弱々しい......しかも、もとは人の子であった雛鳥が、まともに生きていける環境ではない。


 企画書の注釈によれば、スキルイの組み上げたシステムによって、物語半ばで主人公が死ぬことは決してないとのことではあるが......。

 きっとだからこそ、この主人公には、いっそ死にたいくらいの地獄が続くのではないか?

 というか、続く。

 スキルイの残した企画書には、そんな展開が書き記されていた。


 ......エネミリガは人類の敵であることを世界に求められているが、人類が憎いわけではない。

 世界にとって必要であるから、殺すだけだ。

 人や魔物を苦しめて愉悦に浸るような趣味はないのだ。


 だからこそ、苦難を宿命づけられた主人公の人生......いや、心が人のものであるけれど、正確には魔物生か......が、哀れに思えて仕方がなかった。


 実を言うと、主人公の肉体はスキルイのシステムによって手を加えられているので、巨獣の台地の他の魔物のように、『蟲毒器官』を持っていない。

 蟲毒器官はタガの外れた成長をもたらす代わりに、その持ち主を巨獣の台地に縛り付ける。

 巨大魔物達が世界中に散らばり好き勝手に暴れたら、人類は神々の計画にはない、壊滅的なダメージを負うだろう。

 それを防ぐための措置だ。


 とにかく、ここで言いたいのは......蟲毒器官を持たない主人公は、自由に巨獣の台地の外に出ていくことができる、ということだ。


 逃げることができるのだ、仕様上は。


 しかしそれが実現できるかと聞かれれば......まず難しいだろう。

 何せ、スキルイの持ち込んだ物語のテーマは、『成り上がり』。

 主人公は、最初は、弱いのだ......。

 そんな主人公が生まれる場所は、巨獣の台地のほぼ中央。

 魔物達の目を盗んで、広大な森を横断する?

 無理だ......。


 しかし今更、なかったことにはできない。

 主人公が卵として生まれて、既に何年もの歳月が経過している。

 あの鳥は、孵化するまでの期間が、とても長い種族なのだ。


 既に下界に何年も存在している生物を、ただ『かわいそう』という感傷だけで殺すのは、重大なルール違反である。

 もちろん、あれこれと手を加えて、ルールの裏を突くこともできる。

 できる......が。


 エネミリガの仲が悪い神々の派閥が現在進行形で、それと似たようなことをしているのだ。

 連中と同じ穴のムジナには、なりたくなかった。


 本来ならすぐに加護でも与えて能力の底上げを図るが、成り上がりストーリーを企画したスキルイの契約により、お手軽な強化は禁じられている。




「せめて......見届けるかの」


 結果的にエネミリガは、傍観を続けることを選んだ。


 あのやかましい男と早く離れたいばかりに、エネミリガは主人公を、無責任に下界へと放り出してしまった。

 その罪悪感を晴らす手段を、エネミリガは持ち合わせておらず。

 彼女は己の軽率さが生み出した、背負う必要のない苦しみを、せめて見つめ続けることに決めたのだ。


 何も解決しない、自己満足で傲慢な贖罪ではあるが。


 知らないふりをして、忘れ去る......それだけは、してはいけない。




◇ ◇ ◇




「ククク、ハハ......アハハハハハッ!!!」


 そんな魔物神エネミリガだが。

 現在......彼女は、大爆笑していた。


 木の洞に映し出された映像には、主人公ドクゲーゴンと彼の飼い主エミーが力を合わせて打ち倒した陸クジラの死骸が横たわっている。


 そう......陸クジラ。

 巨獣の台地で作り出された“人類の敵”の中でも、上澄み中の上澄み。

 蟲毒器官の助けがあるにせよ、亜神にまでその魂の格を鍛え上げた、バケモノだ。


 そんなバケモノを、彼らは、倒した!


 それは、エネミリガにとっては最上級の駒を潰されたことを意味する。

 当然、腹立たしさもあるが、それ以上に......褒めたたえるべき快挙!

 エネミリアは心の底から笑い、ドクゲーゴンとエミーを称賛した。




「ハハハ......ふう」


 そして一息ついてから、指をパチンと鳴らす。

 映像に映し出された陸クジラの死骸から、黄金色の光が湧きあがり天へと昇っていく。

 膨大すぎて環境に悪影響を与えかねない陸クジラが蓄えた魔力を、回収したのだ。


「......良かったのう、ドクゲーゴン......本当に」


 陸クジラの魔力が届き、彼女の魂を少しだけ満たしたことを確認したエネミリガは、思わずぽつりと、そう言葉をこぼした。




 ドクゲーゴンは、強くなった。

 肉体は、まだまだぜい弱。

 しかし、毒が、魔力が......何より精神が、強くなった。


 たかだか一年ちょっとで、これ程の成長を見せてくれた。


 これは、スキルイの描いたシナリオを、大きく逸脱した結果である。

 あの男神のシナリオでは、主人公はもっともっと長く、苦しみを味わい続けるはずだった。

 そしてついに壊れて、最後に残った人間性の欠片を手放し、身も心も魔物に変じて初めて......ようやく、彼の『成り上がり』が開始する予定だったのだ。


 企画書に描かれた......歪みきり、毒で苦しむ獲物の姿を嘲り笑う主人公の姿は悍ましく、切なかった。

 なお企画書の注釈には、『ようやく力を手に入れて、しかし“大切なもの”を失ってしまったその姿が、エモい』だのなんだの、わけのわからぬ妄言が印字されていた。

 スキルイは、エネミリアの人類に敵対するスタンスを参照してこの主人公像を作り上げたのかもしれないが......ふざけるなと怒鳴りつけてやりたいものだ。




 そんな、毒と死と絶望に彩られた未来予想図を覆したのは誰か。


 それは。


「エミー......」


 もちろん、ドクゲーゴンの飼い主、旅人エミー・ルーンであった。


 唐突に巨獣の台地に出現した正体不明のこの少女は、技術神の悪趣味なシナリオを意図せず捻じ曲げ、フラグを叩き折った。

 彼女のおかげで、ドクゲーゴンはシナリオとは異なる未来の姿を、つかみ取ることができたのだ。




「ククク......愛い、愛い......愛いのう......」


 エネミリガは、ドクゲーゴンだけではなく、エミーに対しても、愛着を感じていた。

 信じられないことに生物のカテゴリとしては人の子であるにも関わらず、である。


 彼女の気に入らない連中が定めた呪い子としての容姿を持ちながら、しかし美しい。

 何より、まるで神代の......未だ世界の仕組みがぼんやりとしていて、バグの多かったあの時代の英雄のような、タガの外れた強さ!

 エミーは、暴力の行使に対して、何ら躊躇しない。

 命を奪う行為についても同様だ。

 その割り切った精神性も、魔物神エネミリガの好むところである。


 巨獣の台地はエネミリガの管理地とは言え、普段は四六時中その中の様子を確認しているわけではない。

 ドクゲーゴンのことを気にかけていたからこそ、エネミリガはエミーの存在に気づけたのだ。

 その一点だけをもってしても、スキルイに付き合ってやった価値はあった。

 ......とにかく、そう思うくらいには、エネミリガはエミーの存在を気に入っていた。




 しかし一体全体、どうしてこんなにも安定した時代に、あのような異物が発生してしまったのか?

 わからないが......エネミリガにとって、そんなことはどうでも良かった。

 人の世の秩序を守るべき神々からすれば、おそらくエミーの存在は大問題だ。


 ......が、エネミリガにとっては、そうではない。

 エネミリガは、魔物神だから。

 人類の、敵だから。




 エミーはいずれ、人間社会に破滅をもたらすだろう。


 それが、何を理由にして起こり、どの程度の規模になるのかは、わからない。

 しかし、あれだけの力を持っていて、そして敵には容赦しないあの性格で。

 何も起きない、わけがない。

 どこかで、爆発するはずだ。


 もしも、どこぞの神がエミーを使徒にでも任じ、制御できるならば話は別だが。

 おそらく、それはない。

 何故ならばエミーは、理由はわからないが......加護を受け付けない。

 上級神であるエネミリガが試みても、無理だったのだ。

 彼女の魂の性質が理由なのか、それとも神々の加護を妨げる何者かの思惑があるのか......それはわからないが。

 とにかくエミーは、直接的に神々から干渉されにくい性質を持っている。

 どういうわけか、しっかりと注視していないと、認識することも難しい時すらある......。




 閑話休題。


 とにかく、魔物神エネミリガは、エミーを非常に気に入っている。

 あれは間違いなく、人類の敵として、最上級の器を持っている。


 待ち遠しい。

 エミーが、その暴力性を全力で人の子らに向け、世界を破滅させるその時が、待ち遠しい!

 その時にはきっと、数えきれない程の人の子らが死に絶え。

 悲しみ、絶望し。

 そしていずれは再起し、その魂をより逞しく、鍛え上げていくことだろう。


 その様を思い浮かべると、エネミリガの胸中は、ぽかぽかと温かくなった。


 しかし同時に、気を引き締める。

 そのような破壊は、絶対に神々の制御下で起こさなければならない。




「......それにしても」


 ここで、下界の映像を眺めながら、エネミリガはふと、思いついた。

 そして異世界転生配信の入門書を、パラパラとめくる。


「あの胸糞悪い黒髪黒目の呪い子システムは......対外的には非公開が徹底されていたはずじゃが......」


 そして、見つける。

 『黒髪黒目の人間は削除要因』という、記述を。

 少しでもそんな人間が映り込めば、動画を編集して、それを消し去らなくてはならないのだ。


「............」


 しかし。

 エミーは、基本的にドクゲーゴンとずっと行動を共にしていて。

 『編集で消し去ればどうにかなる』レベルの接触を、超えている。

 つまりは。


「この、ドクゲーゴンの動画は......お蔵入りにせざるを得ないのでは?」


 まあ、それを判断するのは、もう少ししたら編集のために一旦録画を回収に来るスキルイであるわけだが。

 正直、その可能性が高いなと、異世界転生配信に疎いエネミリガですら、気づいた。




 が、しかし。




「ククク」


 エネミリガにとっては、そんなことはどうでも良かった。

 配信できないということは、広告料がエネミリアに入ってこないということ。

 つまりは、マナ収支で言えば、赤字である。


 しかし、エネミリガは、ドクゲーゴンとエミーに出会えた。


 それが、彼女にとっては、何よりも素晴らしいことだった。


 何しろ、魔物神エネミリガは上級神。

 蓄えているマナは膨大だ。

 多少の赤字など、気にもならない。


 ......技術神スキルイとは違って。




 技術神スキルイは、エネミリガの配信をするにあたり、何やら借り入れまでしてマナを準備していたようだが。

 動画を配信できないということは、その資マナを回収できない、ということである。


 その事実を知った時、技術神スキルイは、一体どんな顔をするのだろう。




 魔物神エネミリガは、それを想像しながら......邪悪な笑い声をあげた。

【技術神スキルイ】

 第22章にて初登場。

 自ら異世界転生配信を撮影するのではなく、他の神々に営業し、異世界転生配信に係る諸業務に関する委託を受け、マナを稼いでいるようだ。

 また、何らかの理由から、本作の舞台である異世界アーディストに、ステータス制やスキル制といった仕組みを導入しようとしている。


【魔物神エネミリガ】

 雌獅子の首から人間女性の体が生えるという、異形の女神。

 根は真面目で決して残虐ではないが、必要に応じて暴虐を振るうタイプの、人間視点からすれば悪神。

 エミーのことはお気に入りであり、極力管理下に置きたいと思っている。

 しかしこの後エミーは巨獣の台地から突然失踪した。

 エネミリガは大いに慌てふためいた。




 以上をもちまして、第29章を終了いたします。

 書き終えるまでにやたらと時間がかかってしまったけど......待っていてくれた人がいるなら嬉しいです。


 第30章の再開まで、また準備のお時間をいただきます。

 今後とも、よろしくお願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
やっと神様らしい神様でてきてほっとした。 こういう広い視野でものごとを見て、手を出さずに見守るってうのがいい。 上級神まですすまないと権限やらが大きすぎてなれない視点なんだろうけど、この世界にもまとも…
やっとついた味方の神という感じ
我欲に負けた俗っぽい神ばっかの中で、世界の健全な運営にまじめに取り組んでくれてるだけでエネミリガ様の好感度がすごい 人間だったとしたら絶対仕事出来るタイプの人だ……女社長って感じ
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