697 【醜い魔物の成り上がり】届かないドクゲーゴンの本心と無茶な飼い主の命令
さて、死んだと思っていたエミーは、生きていた。
陸クジラに潰される前に、地面に潜って難を逃れていた。
その事実が明らかになった今、ドクゲーゴンの胸の内に沸々と......強い意思が湧き上がってきた!
(......良し、もう逃げようッ!!!)
今までは......自分らしからぬ勇気を振り絞って、必死に戦ってはいたけれど......。
それは、エミーを失ったことが、悲しくて、悔しくて、怒りで頭がいっぱいだったからだ。
でも、エミーは生きていた!
で、あるのならば......。
『命が一番大事』......うん、エミーの言うことは、何も間違ってない。
さっきまでの......意地でも戦おうとしていた、自分の態度!
あれこそが、大間違いです!
逃げよう、今すぐに、逃げよう!
「ンエーーーッ!ンエーーーッ!!」
......そんな意味を込めて、羽をばたつかせながら......ドクゲーゴンは必死で鳴いた。
「............」
エミーはそんなドクゲーゴンの声を聞き。
少しだけ、思案し。
「......わかった」
ゆっくりと、うなづき。
「どうしても......戦いたいんだな」
静かに......覚悟を決めた声で、そう言った。
「ンエェーーーーーーッ!?」
(あああーーーーーーッ!?違うぅーーーッ!?)
ドクゲーゴンは心の中で、絶叫した!
(そうだ......そうだった!いつも致命的に、ボクのこと読み間違えるんだこのヒトッ!!)
「なら......うん、私のギリギリまでは、付き合ってあげる......!」
(いや、結構ですって!逃げましょうって!)
「私より弱いドクゲーゴンが......命をはってる。それなのに、私だけ逃げる?......ありえない!!」
(違うの一緒に逃げようって言ってるのぉ!!)
「......違うッ!ドクゲーゴンは、逃げたがっていないッ!私にはわかるッ!!」
(何もわかってないよぉーーーーーーッ!!)
「らああッ!!」
ドクゲーゴンの切実な思いは......一切合切、エミーには伝わらなかった!
エミーは突如として叫び声をあげると......自らの体を持ちあげていた触手をブンと振り回し、自分自身を放り投げた!
「ボアアッ!?」
その行先は、陸クジラの口元!
あまりのエミーの速さに、陸クジラもフジツボも、クジラジラミも反応ができない!
「らあああああッ!!」
そして陸クジラの口元にはりついたエミーは、すぐさま2本の【黒腕】を展開!
「あああ......」
そしてそのどす黒い巨腕で、陸クジラの口の上唇と下唇とでも言うべき部位を掴み!
「あああ、あああーーーッ!!!」
無理やり、こじ開けたではないか!
そして2本の【黒腕】は陸クジラの口を大きく開ききると、1本の巨大な棒と化し、陸クジラが口を閉じることを妨げ始めた!
そう......これこそは、この状況を打開するためエミーが新たに生み出した新必殺技!
「【黒つっかえ棒】!!!」
......新、必殺技......!?
「さあッ、ドクゲーゴンッ!!早くッ!!」
ここでエミーは、口を閉めようとする陸クジラの顎の力に必死で抵抗しながら、呆然と宙にたたずむドクゲーゴンを振り返った!
「たまに、土から顔を出して、見てた......!ドクゲーゴンは、このムダデカクジラの体内に毒を入れたい!そうでしょッ!!」
「ンエッ......!!」
エミーのその言葉に、ドクゲーゴンは我を取り戻した!
そうだ......今のこの状況は、エミーが作り出してくれたノーリスクハイリターンな、千載一遇の攻撃チャンス!
今の内に......できるだけ多くの毒液を、陸クジラの体内にぶち込むのだ!
「ンエーーーッ!!」
ドクゲーゴンはすぐさま周囲に毒液の砲弾を生成!
そしてエミーには当たらないように注意しながら......それを陸クジラの口内に撃ち込んだ!
「オアアーーーーーーッ!?」
触れるだけで肉を溶かす毒で口内を攻撃され、苦しむ陸クジラ!
その様を見て、エミーは......!!
「こらーーーッ!!ドクゲーゴンッ!!何をやってるーーーッ!!」
何故か、きれた!
(なんで、きれるの!?)
「口の中に毒を撃つ程度で、このムダデカクジラが死ぬわけ、ないッ!!」
エミーは歯を食いしばり陸クジラの顎と全力で力比べをしながら!
「もっと、体の奥の......何か、重要な部分ッ!そこを、やらなきゃダメッ!!」
まっすぐに......ドクゲーゴンのことを見つめ!
「私がッ、口をこじ開けている間に、飛びこめドクゲーゴンッ!!体の中から、毒で......このムダデカクジラを、倒せッ!!!」
「ンエーーーーーーッ!?」
また......無茶苦茶なことを言った!
エミーの台詞はドクゲーゴンと会話しているように見えても、独り言だったり別の方と話していたりします。




