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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
29 巨獣の台地の小さな魔物編!
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691 【醜い魔物の成り上がり】乱戦の決着と覇者の乱入

「ン、ンエーーー......」


 彼は、上空をプカプカと浮かびながら、真下に広がる惨状......飼い主の大暴れの結果を眺めながら、呆然としていた。


 大怪獣、と言って差し支えないサイズの、巨大魔物達が、ビームっぽい光線を吐いて。

 でも、それを受けてもエミーは死ななくて。

 キレて。

 ......上空に漂う彼にも、エミーの怒気は伝わってきて、思わず気絶しそうになったけど、なんとか意識を保って。


 それで、次に生じたのが、エミーを起点とする、瘴気の大津波だ。


 巨大虎と巨大蛇は、瞬く間に瘴気にのみこまれて。

 それが薄まり、辛うじて視界が晴れ始めた数十秒後。

 巨大魔物達は。




 ......バラバラに切り分けられた、肉塊へと変貌していた。




 つまり、勝者は彼の飼い主エミー。


 一応、味方が勝ったのだから、それは喜ばしいことだ。

 だけど、更地になった森と、巨大魔物達の肉塊を見ると。

 それをなしたのが、あの小さな美少女であることを考えると。


 喜ぶよりも前に......理解が追い付かず、彼は呆然としてしまうのだ。




「ドクゲーゴンッ!!!」


 と、ここで。

 地上で飼い主が、彼の名前を大声で呼んだ。


「ンエーーー......」


 彼は呆然としながらも、条件反射的にその声に従い、ゆっくり地上へと降りていく。

 エミーはすぐに彼の所在に気づき、無表情のまま片手を振る。

 もう片方の手には、巨大蛇から抉り取った肉の塊。


「ここ、多分一番おいしい。たくさんあるから、特別に分けてあげる」


「ン、ンエーーー」


 無表情ではあるが......先程無差別に漏らしていた殺意も害意も【威圧】もなく、今のエミーは持っていないらしい。

 むしろ、ケンカを売ってきた魔物を殺せたからか、機嫌が良い。

 この少女は、表情は動かないが、良く見ていればその感情は察しやすいのだ。

 それがわかる程度には、彼のエミーとの付き合いは深まっていた。


「さ、お食べ」


(いや、ボクは生肉はちょっと......はは、いや、ボクの意志なんて関係ないですよね、今さらですよね、ははは......)


 内心ではぐちぐちとつぶやきながらも、彼はエミーの言葉に従い、ちびちびと肉をついばみ始めた。


「おいしい?」


(生臭いです......)


「おいしいよね?」


(あ、いや、おいしいです......)


「良かったね?」


(はい、良かったです......)




 彼の、前世を引きずっているが故の心理的抵抗はともかく。


 少しずつ、肉をついばむ彼と、その彼の頭を優しくなでるエミー。

 そこには、確かに、ゆっくりとした時間が流れていて。


 その雰囲気は悪くないと。

 彼は内心で、苦笑した。




 ......しかし、その時だ。


 ふわりと、冷たいそよ風が吹いた。


「......?」


 何かを感じとったエミーは彼をなでるのをやめ、風の吹いて行く方向......未だ木々の残る森の奥へと、視線を向けた。




 すると、次の瞬間!




 ズオオオオオーーーーーーッ!!!




 そんな、掃除機の稼働音を何千倍にも増量したような音と共に、突如としてそよ風が突風に変わった!

 凄まじい風圧!

 重たいはずの倒れた木々、そして巨大魔物達の死骸が!

 フワリと宙に浮き、風の力で運ばれていく!


「ンエーーーーーーッ!」


「ドクゲーゴンッ!?」


 当然、彼の小さな体も、風で飛ばされていく。

 エミーはすぐさま【黒触手】を伸ばして彼に巻きつけ、自身のことも地面に触手を突き刺すことで固定し、身を守る!


 十秒、二十秒、三十秒......。


 突如として発生した突風はすぐには止まず、終いには未だ根をはる生きた大樹すらも吹き飛ばし、そして......。


 それが止んだその時、彼とエミーの周囲には、何も残っていなかった。

 ただまっさらになり、視界の開けた、大地だけが残っていた。


(な、な、何が起きたのぉ!?)


 触手によって引き寄せられエミーの胸に抱かれていた彼はもぞもぞと動き、慌てて周囲を見回した。

 そしてすぐに、エミーがある一点を見つめていることに気づく。

 恐る恐る、彼は自身の視線を、その方向に向け......そして。


 凍りついた。




 そこにいたのは。


 彼がいつぞや、見たことのある。


 山のように大きな......陸クジラの、姿だった。




 陸クジラは、今しがた“吸いこんだ”木々や巨大魔物の死骸をバリバリと噛み砕きながら。

 睨みつけた。


 彼の敵を。


 彼の縄張りを荒す侵入者......エミーのことを!




「ボアアアアアーーーーーーッ!!!」




 ようやく、見つけた!

 ようやく、この時がきた!

 ようやく、侵入者を殺すことができる!


 陸クジラは怒りと喜びがないまぜになった咆哮をあげた!




 グラグラと、まるで怯えるように......大地が震えた!

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