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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
29 巨獣の台地の小さな魔物編!
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689 【醜い魔物の成り上がり】彼の前世への気づき

「キャイーーーッ......!?」


 エミーによるアッパーカットを受けた巨大狼は、悲鳴をあげながらひっくり返り、巨木をなぎ倒しながら仰向けに転がった。


「ヴウウーーーッ......!!」


 しかし、まだ生きている。

 巨大狼は無様に転がりながらもその瞳を怒りに染め、鼻をスンと動かした。

 それはチビのくせに自分を殴り飛ばすという、不敬で誅すべき極小生物の居場所を掴むための、本能的な行動である。


 しかし、結論から言えばそれは、全くもって無駄な行動であった。

 何故なら次の瞬間には......エミーはその、巨大狼の鼻先に。


 ストンと......空から降って来て、着地したから。


「思ったより、硬かった」


 突然のことに驚きキョトンとする、巨大狼。

 エミーはそんな狼の呆けた顔......その額の辺りに向かって。

 ギュッと握ったその右拳を。


 鼻先から跳びはね......叩きつけた!




 パアアアアアンッ!!!




 刹那、響きわたる大轟音!


 エミーの振り下ろしたその拳は、明らかに物理法則を無視した威力を発揮し、巨大狼の頭部を消し飛ばした。

 後に残るのは、首から上を失い動かなくなった巨大狼の死骸である。


「............」


 地面に一度着地してから跳びあがり、巨大狼の肉の上に降り立ったエミーは、無言のまま全身から触手を展開し、“触手のバケモノ”とでも言うべき姿へと変じる。

 それら触手の形状は、大まかに分けて二つ。

 一つは、鋭い鉤爪のような器官を先端に備え、死骸に突き刺さり魔力を吸いあげる通常の【黒触手】。

 もう一つは、ガチガチと牙を鳴らしながら、死骸の肉に食らいつく【黒伸顎】。

 無数に伸びるそれらが、巨大狼の死骸を覆いつくし、通常の生物の“捕食”とは異なるアプローチによって、瞬く間にそれを食らい尽くしていく......。




「ンエーーー......!」


 彼はそれを、震えながら眺めていた。

 それをなしているのが、彼の“飼い主”を名乗るエミーであるにしても。

 何度見ても、怖い物は怖いのだ。


 しかも、触手を用いた捕食スピードについてだが、これは彼がエミーに出会った時点と比べても、明らかに速くなっている。

 エミーも、成長しているのだ。

 出会った当初から、規格外なのに。


(本当に、あのヒト、“何”なの......?)


 常軌を逸した膂力。

 殺しを何とも思わぬ精神性。

 さらには、一切の毒が効かず、自由自在に触手が伸びる。

 しかし併せ持つ、神々しいまでの美貌。


 彼はエミーのことを人間であると、判断する材料を持ちあわせていなかった。

 しいて言うなら、通常形態が人型であることくらいだ。

 きっと人型の魔物とか、そういう類の存在なのだろうと。

 今生きる世界の常識に乏しい彼の推測は、その程度の結論くらいしか用意できない。

 考えるだけ無駄というやつだ。

 得体が知れないのだ。


(怖い......)




「巻きこまれてない?大丈夫?」


 と、ここで、エミーの本体が触手の塊の中から、ぬるりと現れた。

 その背中からは未だに数えきれない程の触手が伸び、巨大狼の肉体を貪っているが、それと同時並行的に本体も自由に動けるらしい。

 エミーはスタスタと彼に近づき怯える彼を両手で持ちあげて、じっと見つめた。


「もう、怖いのは、いないよ......よしよし」


 そして彼のことをぎゅっと抱きしめて、頭をなでた。




(怖いのは、あんただよぉ!?)




 色んな意味で口にできないそんな本心を胸に秘めたまま、彼はなされるがままになでられた。

 彼が解放され、ジャイアントイエロートポポロックの上に置かれたのは、それから1分後のことである。


 何しろエミーの膂力は、異常なので。

 ちょっと力加減を間違えば、彼の脆弱な肉体などひとたまりもないのだ。

 その緊張から解放され、彼は深く深く息を吐いた。


 しかし。


「............」


 優しく頭をなでられる、あの感触。

 決して、不快なものではなかった。


 エミーは。


 どれだけ自分が毒液塗れ、ゴミ塗れであったとしても、気にしない。

 彼との間に壁を作らず、接してくれる。




(............ボクの、前世の家族も)




 そうであって、くれれば......と。




 彼はふと、そんなことを思い。


 今さら詮ないことと、首を振り。




「............」


 もう一つ、ようやく気づいてしまった、彼が“見たくもない事実”については、目をつむった。

 そして黙って......ジャイアントイエロートポポロックの肉をついばみ始めた。


 しかし、その時だ!




「グオオーーーーーーッ!!」




 またしても周囲に、獣の叫び声が響きわたった!

 そして巨木をなぎ倒し、ズシンズシンと地響き鳴らし、彼の眼前に現れたるは巨大虎。

 そのサイズは、先程の巨大狼とほぼ同じ。

 見あげる程の高さ!




「シャアアーーーーーーッ!!」




 しかも、それだけではない!

 巨大虎の反対方向から現れて鎌首をもたげたのは、真っ黒な巨大蛇だ!

 その胴回りは一軒家を丸のみできそうなくらいには太く、その体は森の奥まで伸びており、どれだけ長いのか想像もつかない!

 その瞳は戦意に燃え、冬だと言うのに冬眠する気配は微塵も感じられない!




 そしてさらには、巨大ノシテルケッチまでもが出現!




「ンエーーーーーーッ!?」


 なんで、突然、どうしてこうなった!?


 彼は全身から盛大に毒液を噴き出しながら、恐怖に震えた!


 結論から言えば......巨大魔物達は、彼やエミーの鳴らした戦闘音に、引き寄せられて来たのだ。

 先述した通り、餌の少ない冬は巨大魔物達にとっても厳しい季節だ。

 戦闘音のあるところには、必ず敗者という名の肉がある。

 そして運が良ければ、傷つき弱った勝者という名の肉もある。

 ......乱入、しない訳には、いかないのだ。


 卑怯とは、言うまい!

 これは生き残るための、至極真っ当な戦略である!




「......良いだろう」




 ......しかし!


 彼とは違い、複数体の巨大魔物達に囲まれても、彼の飼い主エミーは、少しも揺るがない。

 魔物達に負けない程の......いや、それを上回る程の【威圧】を周囲にまき散らしながら。


 エミーは堂々と......叫んだ!




「......皆殺しだッ!!!」

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エミーちゃん ペットと一緒でイキイキしてらっしゃる。w
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