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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
29 巨獣の台地の小さな魔物編!
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677 【醜い魔物の成り上がり】森の底の果実

「ンエーーー......」


 彼は、薄っすらと目を開けた。

 するとその視界に映るのは、高い高い樹木の......枝。

 風に揺れる、大きな葉っぱ。

 そしてその葉の隙間から零れる、木漏れ日の光である。


(あ、生きてる......ボク、生きてる......)


 力なく首を動かしキョロキョロと目玉を動かしてみれば、どうやら彼はこんもりと分厚く育った巨大スギゴケの上で、仰向けになって倒れていた。

 何とか翼を、パタパタと動かしてみる。

 痛みはない。

 コケの塊がクッションとなり......彼の軽い体をふわりと受け止めてくれたらしい。




(はああーーー......)


 自らの無事を確かめ、次いで彼が内心でこぼしたため息......それは、安堵に由来する物ではない。

 それが意味するのは、心の中からあふれた無力感だった。


 今、彼の脳裏で繰り返されているのは、突発的な事故に巻きこまれたにも関わらず、見事風を掴み巣立っていった、兄弟姉妹達の姿だ。

 いや......もしかしたら、火を吹いたり風を起こしたりする、あの不思議な能力......その発現する瞬間こそが独り立ちの契機であると......彼の種族は本能に、そう刷り込まれているのかもしれないが。

 とにかく彼の兄弟姉妹達は、見事にやってのけた。


 彼とは、違って。




(“結局”、ボクは人間でなくなっても、落ちこぼれかぁ......)


 『結局』と、彼はこぼしたが。


 つまり彼は、かつて日本という国に暮らす“晴馬情”という人間であったその時も......『自分は落ちこぼれである』という自覚を持っていた。


 勉強もスポーツも、彼は苦手だった。

 どちらも好きではなく、努力する気も起きなかった。

 苦手な物に労力を割く気概もなく、気づけば彼は、さらにそれらが嫌いになっていた。


 趣味もなかった。

 『どうせ、ボクだし』という無力感が作る分厚い壁が、彼に“何かを始めること”を拒絶させた。


 友達も、いなかった。

 いつだって他人は、自分のことを蔑んでいる。

 そんな被害妄想が、ずっと彼の頭の中にこびりついていた。


「ンエーーー......」


 それでも、前世は恵まれていたのだと、今になって思う。

 何せ彼は、人間で。

 家族仲も、良い方ではなかったけど......食うに困らない毎日を送っていた。


 それに、学校に行けば。




 『こんな自分でもバカにして見下して良い人間がいて、そいつを相手にうっ憤を晴らすことができた。』




「......ンエ?」


 ここで。

 彼はすらりと心の中から吐き出された言葉に、違和感を覚えた。


 バカにして良い?

 見下して良い?


 ......どうして?




「ンエーーー......」


 しかしその違和感は、現在の彼の苦境の打開には、何ら関りのない問題である。

 彼はすぐに、空腹に由来するめまいに襲われ、その思考を中断。

 仰向けのまま、力なく首を横に捻った。


「......ンエッ!?」


 すると、その視界の先......何もかもが巨大な、森の底に。

 木漏れ日を浴びてルビーの如く光り輝く、果実が転がっているのを、彼は見つけた!


 その果実を簡単に描写するならば、肥大化したヘビイチゴ。


 彼の体よりも大きな赤いイチゴが、ゴロゴロと大量に、地面に転がっているではないか!


「ンエッ、ンエッ、ンエッ......!」


 彼は居ても立ってもいられず、力の入らぬ全身に鞭打ってバタバタと翼と足を動かしながら、ヘビイチゴと思われるその果実へと必死に這って行った。

 そしてそれを、くちばしでつつく。


(あ、あ、あ......あまいぃーーーーーーッ!!)


 それは、彼が人間であった時を含めたとしても、最上級においしいと判断できる果実であった。

 しかも貪るにあたり、人間としての感性が拒否反応を示さない!

 1個、2個、そして3個と。

 彼は夢中になってその果実を食べ続けた!




 しかし。




 彼は野生生物として、口に入れる物に対してもう少し警戒感を持つべきであった。


 何故、かように美味なる果実が、他の生き物に食われずに残っているのか。


 考えるべきであった。




(あ......れ......?)


 気づけば。

 彼は全身の筋肉に力が入らず......地面に横たわる己の姿をぼんやりと自覚した。


(麻痺......?毒......!?)


 そう。

 彼は前世の記憶から、その果実をヘビイチゴだと推測したが。

 その実、それは全く別種の植物であり。

 人間はそれを未だ“発見”していないので、名前はまだないが......。

 とにかく、その果実は強力な毒を持っていた。

 有毒植物だったのだ。


(あ、あ......)


 そこから、彼が意識を失うまでは、早かった。

 彼の小さな体には、あっという間に毒が回りきり。


 彼は。




 途端に、死んだ。




◇ ◇ ◇




<<<対象の、死亡を確認>>>


<<<クライアントの神気を注入し、即時復活処理を行います>>>


<<<神気に耐えうるよう、魂及び肉体の変異を開始します>>>


<<<今回の死因に基づき、変異の方向性を決定します>>>




 ......彼は、“死んで”いたので。


 彼の魂に対してそんな、機械的な囁き声が流れ続けていたことは知らないし。


 彼の体が......その間ずっと、黄金色に輝き続けていたことも、知らない。




 それは、“物語”として語られるべきストーリーの、行間。


 暗転中の、出来事だ。

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― 新着の感想 ―
クライアントとか言う言葉が出てきるし、神が直接関わってない感じかな 配信としてはどういう内容になってるんだろこれ
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