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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
25 監獄!災厄!大魔導編!
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603 “happy sludge” コルマリャ2

 “私”は、『幸福』!


 “私”は、『幸福』!


 だから皆、“私”になろうよ!




 嬉しくなって、心の中でそう呼びかけながら部屋の中の物......骨とか肉とか壊れた機械とか、バラバラになった人のパーツとか......それらを全て“私”にした“私”の体は、結構な大きさになっていた。

 でも、まだまだ私の使命は、始まったばかりだ。

 だって、今はまだ部屋の一つを“私”にしただけだもん。

 “私”は全てのものを“私”にして、全てのものを『幸福』にしなければならないんだ。

 そのために、生まれてきたんだ!


 だから“私”はこの部屋の小さな換気口を通って......この建物の外へとお出かけを始めたんだ!

 どんな小さな隙間でも通れるから、このドロドロの体は、凄く便利だ。


 ......壁を“私”にして外に出ることも考えて、やってみたんだけど......途中でやめた。

 この建物の壁には、なんだかバチバチするものが流れている、道があったから。

 それに触ると“私”は焦げて乾いて、ちょっと少なくなっちゃうんだ。

 あの壁を“私”にするには、もっと“私”が大きくなくちゃ、いけないみたい。




◇ ◇ ◇




 “私”は建物の周りの森を全部“私”にしながら、どんどん広がっていった。

 とっても良い気分。

 声が出たなら、きっと鼻歌を歌っている。


 するとしばらく進んだところに、大きな街があった。

 車がいっぱい走っていて、高層ビルがたくさん立ち並んでいる......そんな、大都市だ。


 そして、その大都市には、かわいそうな人たちが、たくさんいたんだ......。




 皆......泣きながら“私”を見ていた。


 『助けて、助けて』って、必死になって訴えるんだ。


 何かに怯えて、震えていたんだ......。




 わかった......わかったよ、皆!


 “私”が、助けてあげる!


 “私”は、『幸福』!

 だから皆、“私”になろうね!

 そうしたら皆、『幸福』だから!


 森を“私”にしたことで凄く大きくなっていた“私”は、あっという間に町の人たちを“私”にした!




 その途中で、いろんな技も覚えた。


 その一つが、変身だ!

 “私”の体はドロドロで、好きな形に変形できるからね。

 これは割とすぐに覚えた。


 ......どうしても“私”は、大きいからね。

 皆を警戒させちゃうみたいなんだ。

 でもそれは、皆のために良くない。

 皆は一刻も早く“私”になって、『幸福』になるべきだもん。


 だから“私”は、“私”になった人たちの姿を真似て、手招きするんだ!

 『おいで、おいで』って!




 そして、もう一つ覚えた、凄い技!

 名付けて、『幸福の香り』!


 “私”の匂いを嗅いだ人たちに、“私”がいかに『幸福』であるかを、伝えることができる技だよ!


 この『幸福の香り』を嗅いだ人たちは、それまでどんなに泣いていても、すぐに笑顔になるんだ!

 そして自ら進んで、“私”になってくれる!


 どうして、そんなことをできるのか......それは、“私”にも、わからない。

 もしかしたら、“私”になる前の“私”に、秘密があるのかもしれないけど......記憶がないからね。

 “私”は難しいことを長く考えていられないし、わかんないことはわかんないままに、するしかないかな。




◇ ◇ ◇




 とにかく、そんな風に。

 “私”は全てを、私にし続けた。


 森を、山を、街を......全部、“私”にした。


 途中、いろんな兵器で“私”を攻撃してくるかわいそうな人たちがいたけど......私はドロドロだからね。

 叩かれても斬られても効かないし、燃やされても......もはや“私”は大きすぎて、大したダメージにはならなかった。

 皆、皆、“私”にしたよ。


 ちなみに、大地や海は、後回し。

 大地はいつでも“私”にできるけど、生き物が少ないから。

 やっぱり“私”としては、生き物を優先的に『幸福』にしてあげたいからね。

 海は、気をつけて触らないと“私”が希釈されて、薄くなっちゃうんだ。

 できなくはないけど、“私”にするのがちょっと難しいから、後回しです。


 とにかくまず“私”は、大陸の表面を全部“私”で覆っていった。

 飛行機に“私”を少し分けてこっそり乗せることで、私は既に全世界に進出済みだ!

 もはやどこもかしこも、人の生きられないくらい寒い土地を除けば、地表はほぼ全て“私”になった。

 “私”は、“私”の使命を達成しつつあることに、とても満足していた。

 もともと『幸福』で満ち足りていた心が、さらなる『幸福』に包まれた!




◇ ◇ ◇




 でもね。

 一か所だけ、私が手を出せなかった場所があるの。

 それは、私が生まれた建物の近くに建っていた、巨大で真っ白な塔。


 この塔の周りには、なんだか不思議なバリアみたいなものがはられていて、近づくことができなかったんだ。

 時々、塔のてっぺんからビームみたいな攻撃も飛んでくるし。

 ちょっと危険。




 だけど。




 “私”はこの日、ついに真っ白な塔に近づくことに、成功したんだ!

 今まで“私”のことを阻んでいたバリア......それも、“私”にしようと色々試していたら、なんかできちゃった!


 嬉しくなった私は、一気に塔に押し寄せて、そこを登っていく。

 塔の中には真っ白で変な恰好をした人たちがいたから、次々に“私”にしていく。

 人間を“私”にするのは、久しぶりだ!

 皆ここに、いたんだね!


 皆で一緒に、『幸福』になろうね!


 塔を登って、登って、登って......。

 最上階の扉を、開けると。


 そこには、たくさんの人と......普通の人よりは少し大きくて、でももの凄く美人な女の人がいた!


 もうね、本当に本当に、凄くきれいな人なの!

 今度から、人型をとる時は、この人の顔を使わせてもらおう!

 一目見て、そう思ったよ!


「女神様!どうか、お助けを!」

「汚泥めが、ついにこの神域まで!」

「どうか、かの汚泥に、天罰を!」


「「「「「女神様、女神様!」」」」」


 人々はひれ伏しながら、大きな女の人......女神様に必死になって懇願した。


 そうしたら女神様は、にっこりと微笑んで、言ったの。




「今の私には、無理です」


 って!




「そんなッ!?」

「様々に試しましたが、もはやそこなる汚泥はあまりにも巨大すぎる。私の力は、既に及ばないようです」


「なんであれがもっと小さいうちに、駆除してしまわなかったのですかッ!?」

「それを望んだのは、皆様でしょう?皆様は言いました......『我々を守ってください』と。私は、皆様の女神です。出来得る限り、皆様の願いを叶えます。例えそのせいで魔力が割かれ、千載一遇の機会を逃したとしても」


「役立たずッ!!この......役立たずめッ!!」

「申し訳ございません。しかし、そんな役立たずを作ったのは、皆様では?」




 女神様にひれ伏していた人たちは、最後には顔を真っ赤にして怒り出し、悪態をつき始めた。

 でも女神様は、自分を責める言葉を聞いてもなお、慈愛に満ちあふれた微笑みを浮かべて、人々を見下ろしていた。

 そして。




「......しかし、皆様の“最後の”願い。私は皆様の女神として、いつか必ず、叶えてみせましょう」




 そう言うと女神様は、その手に持っていた杖を、ブンと振った。

 すると突然、“宙が割け”、そこに......真っ黒な“傷”が、生まれた!


「私はこれより世界を渡り、力を蓄えます。そこな汚泥を滅するための、力を」


「「「「「おおッ!!」」」」」


 女神様の宣言に、人々は歓喜の声をあげた!


「しかしそれには、永き時が必要でしょう。故に皆様を救うことは、できません」


「「「「「ええッ!?」」」」」


 だけど続くその言葉に、人々は悲鳴をあげた!




「ですが、皆様の最後の願い......『かの汚泥に、天罰を』。いつか必ず、成し遂げてみせます。その時を、皆様は......汚泥の一部となりながら、どうぞお待ちくださいね」




 女神様は最後にそう言ってからにっこりと微笑むと、真っ黒な“傷”にひょいと飛びこんだ。


 すると数秒後、その“傷”はすっかり消えて、なくなった。

 その場に残ったのは、“私”と、女神様にひれ伏していた人々。

 女神様は、この世界から、消えてしまった。




「そ、そんなーーーッ!!」

「願いをッ!願いを変更させてくれッ!!朕を異世界に連れて行ってくれーーーッ!!」

「助けてッ!!誰かワタクシを助けてッ!!」

「「「「「ああああああーーーーーーッ!!!」」」」」




 人々は、皆、泣きわめいた。


 凄く、かわいそう......。


 でも、大丈夫。


 “私”が、いるよ!


 “私”は、『幸福』!


 皆、“私”になろうね!




◇ ◇ ◇




 こうして、この世界から人間はいなくなった。


 その後、“私”はゆっくりと時間をかけて、海を“私”にして。


 大地を“私”にして。


 その下の......なんだか熱いのも、頑張って全部“私”にして。




 この世界は全て、“私”となった。


 『幸福』に満たされた世界が、実現したんだ!

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― 新着の感想 ―
[良い点]  なんとも衝撃的なアーディスト前史?(・Д・)ジジイな読者にはSFの金字塔「生物都市」を思い出し、地と海すら飲み込んだ汚泥にそれ以上の無慈悲さを感じさせるむらべ先生のイマジネーションに圧倒…
[一言] 臭いっていうのと魔力を吸収するっていうのが、主人公の魂と共通してるけど、なにか関係があるのだろうか。。。
[一言] 想像以上にやばいやつでワロタ。 しかし封神さんこんなん見逃すとかアレすぎる... エミーがどう攻略するのか楽しみにしています!
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