6 初めまして、私エミーです!
やっほーみんな、こんにちは~っ!
私の名前はエミー!5歳の女の子だよ!
前世は藍原瑠奈っていうさえない女子高生だったんだけど、色々あって、『神の器』であるオマケ様と一緒に、このアーディストっていう異世界に転生したんだ!
今世の私は、フェノベン村っていう寒村(直球)に住んでいる......うん、住んでいる、普通(だと思いたい)の村娘なんだ!
黒髪黒目で、ただの村娘だっていうのに肌は白くて、自分で言うのもなんだけど結構な美少女なんだよ!えへへ!
あ!おとなりの農家さん、ランドおじさんだ!
こんにちは~~!
「......ちっ!おいガキ!うちの畑に近づくんじゃねぇ!」
ランドおじさんは足元の小石を拾い、大きく振りかぶって......投げた!
さっと横に小さく跳んで、避ける。
まったくもう、危ないなぁ~!
ランドおじさんったら機嫌悪いのかな?
普通5歳児の美少女に石なんか投げるぅ~?
当然、そんなへなちょこな投石、当たんないけどね!
調子に乗って反復横跳びで挑発してみる。
「この、クソガキがァァァーーーーーーッ!!」
あっやべっランドおじさんマジギレした!
鎌持って追いかけてくるぞ!退避退避~っ!
◇ ◇ ◇
「はぁっはぁっ......!くそ......あの呪い子、どこ行きやがった!?」
はい、あなたの頭上、木の上です。
オマケ様のアドバイスに従って、私けっこう鍛えているからね?隠密行動もお手の物なの!
最近中年太りが気になり始めたおじさんひとり巻くくらい、わけないのよ!
さっさとどっか行け!......行ったな。
するすると木からおりて、目的地へと歩みを進める。
まったくもう、ランドおじさんにも困ったものだよね?
あの人、私のこと勝手に芋泥棒認定してくるんだよ!?そんなことしてないのに!
私はどんなにひもじくても、森の中の草の根っことか食べて飢えをしのいでるっていうのにさ?
というか、フェノベン村の中で言うならうちが一番貧しいのだから、芋の一つや二つ、融通してくれても良いんじゃないの?
あぁ、呪い子ってのは、私のことね。
このあたりだと黒髪黒目っていうのは珍しい(両親すら黒髪でも黒目でもない。隔世遺伝かな?)ってのと、私がボロばかり着て薄汚れていること......。
それと今世の私ってどうも表情筋死んでるみたいで、無表情だし......人と接し慣れてなくて無口なんだよね。
喋りたくなったら頭の中でオマケ様としゃべってたから、その辺がちょっと悪かったのかも!
まぁ、とにかくその辺の理由から、私ってば村の大人たちから結構不気味がられているんだよね!
だから呪い子っていうよくわかんない蔑称で呼ばれてるんだ!
ほら、あっち見てよ!
村の子供たちが遊んでるでしょ?
私もせっかく転生したんだし、今世こそはいっぱいお友達作ろうと思ってたんだけどねー......。
私のことを嫌いな大人たちが、私を他の子どもに近づけないようにしてるんだ!
大人たちは自分の子どもに、私のこと『呪われるから近づいちゃだめ』だのなんだの誹謗中傷を吹き込んでいるみたい!
失礼しちゃうよね!
それどころか、子どもたちが遊んでるところには必ず一人は大人が付いていて、危ないモノが子どもに近づかないか見張ってるんだけど......。
私はその『危ないモノ』にカテゴライズされているみたいなので、物理的に阻まれて近づけないの!
例えば、あそこでみんなの中心になって遊んでいる赤い髪の男の子......確かトーチくんっていうんだけど、彼なんて私と同い年で幼いから、私の存在すら認識してないんじゃないかな?
......うん。
それはそうと、これまでの話の流れでなんとなくわかってると思うけど、実はうちってそれなりに貧乏なんだ。
次はみんなに、私の家族を紹介するね!
ほら!ちょうど見えてきた、村はずれの今にも倒れそうなあばら家......あそこが私の今世の実家なんだ!一応。
壁の隙間から気配を消して、そーっと中を覗いてみるね......いたいた。
「がー......ぐがー......」
真昼間だというのに酒飲んで大いびきかいているあそこの男が、今世の私のお父さん、コーディ!
無精ひげまみれの顔面と散らかしっぱなしのゴミ屋敷を見てわかるとおり、ものすごくだらしない大人だよ!
なんでも昔は『冒険者』とかいう職業についてて、魔物を退治してお金を稼いでいたんだって!
ちょっと足を怪我しちゃって冒険者は引退したんだけど、それでも一般人よりは戦えるから、このフェノベン村の用心棒をやっている(ことになっている)んだ!
平和だから仕事してるところなんて見たことないけどね!
村の人たちからは「ゴクツブシ」って陰口叩かれているよ!
かわいそうだね!
え?私のお母さん?
お母さんも冒険者だったらしくて、けっこう美人な人だったんだ!
引退したお父さんにくっついてこの村にやってきたんだけど、ちょうど私の離乳食が終わったころ、村にやってきたイケメン行商人お兄さんにくっついて、私を置いて村を出て行っちゃった!
死ね。
......おっと、いけない。
ついあふれ出るやり場のない殺意!
隠さなきゃ隠さなきゃ!
幸い、私の中にはオマケ様がいてくれるから、食べられるもののアドバイスとかをもらって、私はなんとか生き延びることができたんだ!
実はこの世界、栄養価が高い虫とかが、結構いろんなところから採れるんだ!
みんなそのことを知らないから、村とか近所の森の虫は、私が食べ放題なの!
おかげで、実は私、貧しいながら栄養状態は結構良い自信はあるよ?
オマケ様、様々だね!
あっ、もしかしてランドおじさんが私のこと芋泥棒だと思い込んでるのは、私が畑のミミズ(っぽい虫)をほじって食べてるとこ、見られたからなのかも?
さて、と。
そんなことはどうでもいい。
コーディが寝ている間に、とっとと目的を果たすとしますか。
こっそり、こっそり......。
家の中に散らばるゴミを避け、音をたてないようにしながら、ハエ(っぽい虫)がたかっている台所へ進む。
......あった!お塩発見!
こういう調味料は森の中では手に入らないからね。
どうせコーディは自炊なんてろくにできないんだから、もらっていきましょう。
バレない程度に。
いや~、私、実は今この家じゃなくて、近所の森に拠点を作って、そこに住んでいるんだ!
コーディはこんな状態で子育てなんかしようとしないし、目が合うと殴ってくるし、村人たちは私のこと不吉な存在扱いしてくるから、村に居づらくてさ......。
基本的には森で狩りや採取をして、自給自足の生活を送っております。
そんな5歳児です(真顔)。
あ、オマケ様のアドバイス+ある程度成長済みの人格と前世の知識ありきで出来ることなので、通常の5歳児は決して真似しないように!
私ですら何度も死にかけてるからね。
普通は死にます。
......さてさて、これで今日やろうと思っていたことはおしまいですね。
暗くなるまではまだ時間もあるし、早く森に帰って狩りでもしようかな!
異世界アーディストでの私の生活は、こんな感じ!
大変なこともいっぱいだけど、全力で生きています!
とっても充実した毎日です!
これからも無事生き延びるため、頑張るぞ~~~~~っ!
..........................................。
ってなんだよこのサバイバル幼少期はァァァァーーーーーーーーーーッ!!!
前世より状況悪くなってんじゃねェかァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!
心の中で大号泣した。
でも相変わらず、私の表情筋は死んでいる。




