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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
24 美少女探偵アカシテリカ編!
580/720

580 【神々のお話24】探偵神シクレタバーク

 トゥルルルル......トゥルルルル......。


「......はあ」


 事務所を模した己の神域にて......探偵神シクレタバークは焦げ茶色の執務机に頬杖をつきながら、一向につながることのない電話型神器の受話器をガチャリと置いて、ため息をついた。


「うぅーーーん......」


 そして疲れた顔をしたまま、柔らかな執務椅子の背もたれに体をあずけて伸びをしてから......コーヒーカップに口をつける。

 それは、ただのコーヒーカップではない。

 どういうわけか無限にホットコーヒーが湧き出る、不思議なコーヒーカップだ。

 日によって味が変わり、しかも味を選べないのが難点だが、コーヒー好きのシクレタバークにとってそれは、延々と続く毎日に潤いを与える生活必需品だ。


 ちなみに、今日のコーヒーは、どうやら浅煎り。

 シクレタバークとしてはもう少し苦い方が好みだが、爽やかな酸味が実に見事。

 これはこれで、素晴らしい......。




『そんなあああーーーッ!?嘘でしょおおーーーッ!?探偵神様ーーーーーーッ!!』




 すると、その時だ。

 部屋の片隅に置かれた、超古代魔導文明最初期に生産されていたアンティークな蓄音機を模した神器から、何やらザアザアとノイズまみれの男の声が聞こえてきた。

 それは下界から届けられた、“つい先ほどまで”彼の使徒であった男の叫びだ。

 男はあれこれと勝手なことを喚いてから。


『返して、くださいッ!!ボクの力を......“居場所”をッ!!返してくださいよおおおおおーーーーーーッ!!!』


 最後にそう、懇願した。




「......はあ」


 シクレタバークは再度ため息をつき、無言のまま立ちあがると、蓄音機型神器のスイッチを切った。

 するとそれだけで不快なノイズは消え去り、彼の神域は再び静寂に包まれる。


「落ち着いて考えれば......神の考えに従わない使徒の力など剥奪されて当然だと、わかりそうなものですがねぇ......」


 執務椅子に腰かけ足を組みながらシクレタバークはそうつぶやき、胸ポケットから手帳を取り出し、それを開いた。

 この手帳もまた、ただの手帳ではない。

 彼が無造作に開いたページには、もともと何も書かれていなかったが......すぐに文字が浮かびあがり始める。

 それらは、彼の配信している【美少女探偵アカシテリカ!】の視聴者から寄せられた、コメントたちである。


『よくあの古代兵器倒せたな』

『主人公の皇室出身設定、こうやって使ったかー』

『魔導ドローンの形状が気に食わない。やはり時代は、三角錐』


 視聴者たちはシクレタバークの作品に対して好き勝手に、思い思いのコメントを残す。

 その中には。


『サングラスちゃん、大丈夫か』

『さすがにサングラスちゃんの安否が気になりすぎる』

『でもサングラスちゃんだし。きっとその日のうちに帰って来てると思う。屋台で二十人分くらい飯食ってから』


 ......このように、“サングラスちゃん”なるキャラクターのことを気にかけるコメントも多い。

 この“サングラスちゃん”とはつまり、ここ最近主人公アカシテリカのバディ役を務めていたエミーの愛称である。


 顔を隠してもなお伝わる、端麗な容姿

 異常に高い戦闘能力。

 クールでミステリアスだけど、たまに抜けているその性格。


 それらの要素が絡みあい、エミーは割と、視聴者たちからの人気も高かった。


 ......シクレタバークも、最初は悩んだのだ。

 世界のルールで削除対象と定められている黒髪黒目の人間を、堂々と配信に登場させて良いものかと。

 しかし、帽子とサングラスで髪と目の色を完璧に隠せば、意外なことに検閲神は何も文句をつけてこなかったのだ。

 お役所仕事と言うか、検閲神はもとはと言えば魔導人形であることを考えると、仕様の穴とでも言うべきか......。

 とにかく、許可がおりてしまった。

 ならば良いだろうと放置した結果、気づけばエミーはかなりの人気キャラクターとなっていたのだ。


 それなのに、そんなエミーを。


 嫉妬に目がくらみ暴走したあの男は、勝手に転移玉を使って、デレネーゾ大監獄へと投獄してしまったのだ。




「許される、わけがない......」


 常に穏やかな紳士であろうとしているシクレタバークにしては珍しく、ついつぶやいた独り言に苛立ちが混じる。


 そう、許されるわけがない。

 神の判断に背き、行動する使徒など。


 しかもあの男、主人公にも嫌われてしまった。

 もうそうなったら、これまで通り三枚目としての起用は不可能である。

 シクレタバークは、アカシテリカがあの男を冷たく拒絶した、その時点をもって。

 念のために残しておいたあの男の使徒としての力を......全て剥奪したのだ。




「許される、わけがない......」


 そして繰り返された、その言葉。

 眉間に皺寄せ目をつむり、額に手を当て発せられたそれには、今度は焦りが含まれていた。


 デレネーゾ大監獄は、世界に仇なす極悪人を収監するための、神造施設だ。

 そんな場所に、“無実の”人間を、送りこんでしまった。

 探偵神たる己の、使徒であった男が!


「それは......それは明らかに、正義ではない!小生は、探偵神!正義を貴ぶべき善神であるのに!」


 シクレタバークは、嘆いた!


「小生は、正義であることを盾に、犯人を言葉でボコボコに痛めつけてやることが大好きなのに!このままでは......この汚点を抱えたままでは、気持ちよく犯人を追いつめられない!!」


 そしてちょろっと、紳士の仮面で覆い隠した『それはどうなの?』っていう本性も、漏れた!




「とにかく、監獄神に連絡だ!」


 シクレタバークはここで気を取り直すと、電話型神器に番号を入力し、デレネーゾ大監獄の管理を任されている監獄神プロリューズヤンへと通話を試みた。

 手違いで投獄されてしまった被害者エミーを助け出し、無事出獄させなければならない!

 彼が、正義であり続けるためには!




 トゥルルルル......トゥルルルル......。


 トゥルルルル......トゥルルルル......。


 トゥルルルル......トゥルルルル......。


 トゥルルルル......トゥルルルル......。


 トゥルルルル......トゥルルルル......。


 トゥルルルル......トゥルルルル......。


 トゥルルルル......トゥルルルル......。


 トゥルルルル......トゥルルルル......。


 トゥルルルル......トゥルルルル......。


 トゥルルルル......トゥルルルル......。




 ....................................。




 シクレタバークは、待った。

 しばらく、待った。


 しかし電話型神器からは、呼び出し音が鳴るばかり。

 監獄神プロリューズヤンは、全く通話に応じない。


 少し時間をおいてからかけなおしても、やはり応じない。


「......おかしい」


 ガチャリと受話器を置いてから、顎に手をあて、シクレタバークは首を捻った。

 実は彼は、エミーのデレネーゾ大監獄への投獄を知ってからずっと、こうして監獄神に対して通話を試みているのだ。


 それなのにかの神は、何ら反応を示さない。


 監獄神に直接、通話を試みても。

 監獄神の神域に、通話を試みても。

 監獄神がデレネーゾ大監獄に配置しているアバターに、通話を試みても。


 全く、繋がらないのだ。

 監獄神には多くの眷属がいたはずだが......そんな彼ら彼女らが、代理で通話に応じることすらない。


 正直に言って......これは、異常な事態である。


「監獄神に......デレネーゾ大監獄に、一体何が起きているんだ......!?こ、ここ、これは、これは......!」


 ここでシクレタバークは、執務椅子を倒す勢いで立ちあがり、叫んだ!




「うぅーーーんッ!ミィステリィーーーッ!!」

【仕様の穴】

 以前死神は、もともと黒髪黒目であった師匠を物語のキャラクターとして登場させようとしていました。

 それは彼が既に白髪になっていたからであり、今回のエミーに対する『黒髪黒目さえ隠していれば、配信に登場しても問題ない』という判断と、通じるものがあります。

 師匠は黒目を隠してはいなかったですが......黒髪と黒目が、揃うといけないのでしょう。


 さて、以上で第24章を終了いたします。

 次話に閑話をはさんでから、第25章を開始します。

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[良い点]  エミーさんの“呪い子”設定に抜け道があった事に喜びを感じる読者\(^▽^)/だいぶ前の感想に書いたけど「髪の毛染めちゃいましょーよーエミーさーんブロンドとか似合うと思うっす」 [気になる…
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