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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
24 美少女探偵アカシテリカ編!
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575 “居場所”

「離れる、隙を......!?」


「そうそう、今みたいにね」


 ムノーデス刑事はコロコロと、右手の上で紫色の球を弄びながら。


「だと言うのに、キミたちときたら、いつも仲良く隣にいてさ。まるで、大切なバディ、みたいな感じでさ。ボクはキミのことが......本当に......本当に、本当に本当に本当にッ!!」


 そしてその小さくて丸い瞳を憎悪で濁らせ、怒声をあげた!


「羨ましく妬ましくッ!!消えて欲しかったッ!!我が神は......ボクに、そこまでの“居場所”を、与えてくれなかったのにッ!!」




「『我が神』......!?」


「は、は、は!......そう!ボクの神様だ!信じてもらえるかは、わからないけど......実はボクは探偵神様の“使徒”なんだ。使徒って、知っているかい?ボクは神様に、選ばれし人間なんだよッ!!」


 私はその独白を聞いて、ムノーデス刑事に対する警戒を数段階引きあげた。

 握った拳が、じわりと汗で湿る。


<道理で、全く鍛えている様子の見えない肉体に、不釣り合いな程の魔力が宿っているわけですね。彼は、探偵神の使徒として、かの神より力を授かっているのでしょう。この地下道で迷わずエミーのもとにたどり着いたのも、探偵神の持つ人探しの権能を与えられていたと考えれば、説明がつきます!>


 私の脳内で推測を並べるオマケ様の声にも、緊張がにじむ。


 でも、強まる私の警戒とは裏腹に、ムノーデス刑事は私にすぐさま襲いかかってくるような真似はしなかった。

 この小太りのおっさんは、目を爛々と輝かせながら胸をはりどこか自慢げに、叫ぶように語り始めた!




「ボクは、もともとは見ての通りの落ちこぼれだった!パパもママも、お兄ちゃんもお姉ちゃんも妹も、皆優秀なエリートなのに......ボクだけが出来損ないで、落ちこぼれで、無能だった!勉強も運動も魔法も......全部ダメ!何したって、ダメだったッ!ボクにだけ......“居場所”がなかったッ!!」


 ムノーデス刑事は、怒鳴るように叫んでいる。

 その声に込められた感情は、当然、怒りだ。

 しかし今の彼は、私を見ていない。

 どこか、虚空を見つめている。

 その怒りは......私ではない、何か別のものに対する怒りのようだった。


「でもねッ!ある時、探偵神様がさ......ボクのことを、認めてくださったんだッ!!『仕事のできないうっかり者で、構わない。むしろそんなきみこそが、必要だ』って!!ボクを、ボクのまま......無能なボクのことを、無能なままで認めて、“居場所”を与えてくれたんだッ!!」


「“居場所”......?」


「そうッ!!神の愛し子、美少女探偵アカシテリカのサーガを彩る、“三枚目刑事”......それこそがボクの演ずるべきキャラクターであり、物語上のポジションであり......ようやく与えられた、ボクの“居場所”だったんだッ!!」


 怒りだけが込められていたムノーデス刑事の声色に、ここで初めて喜色が混じった。

 相変わらず虚空を見つめながら目を細め、小太りのおっさんは語り続ける。


「ボクはね、頑張ったよ!何か事件があれば、それは無理をしてでも全てアカシテリカちゃんに丸投げして、彼女の活躍の機会を増やしたッ!そして今まで以上に自分が無能に見えるよう......そして特徴的なキャラクターになれるよう、常日頃の行動にも気を配った!わざと毎日寝ぐせを作ったり、だらしない体型を維持したり、そこまで好きでもないイカを常時食べ続けたりねッ!ボクの努力を、探偵神様は褒めてくださったよ!本当に、嬉しかったッ!!......それなのにッ!!」


 ここで、ムノーデス刑事の視線が私へと戻る。

 ムノーデス刑事は、怒りで震えながら、私のことを睨みつけた!


「何なんだよ、キミはッ!!ぽっと出の癖に......アカシテリカちゃんの、隣にッ!!ボクよりも、良い“居場所”にッ!!転がりこみやがってッ!!それは......ボクがなりたくても、なれないポジションなのにッ!!」


 そしてムノーデス刑事は、今まで以上に声をはりあげて、怒鳴った!

 あまりの声量に、地下通路の空気がビリビリと震える!


「黒髪黒目の癖に......黒髪黒目の癖に、探偵神様にも、認められやがってッ!!『帽子とサングラスで隠すなら、問題はない』だって!問題は、大ありだよッ!!キミがバディ気取りでアカシテリカちゃんの隣にいたら、ボクの出番が減るんだよ!?それは、ようやく......ようやくできたボクの“居場所”なのにッ!!それを、キミは、奪おうとするんだッ!!」


「そんなことは......」


「そんなことは、あるのッ!!そりゃ、わかるよボクだって!明るくて頭脳明晰な美少女探偵とミステリアスで強い美少女バディは、絵になるものッ!!そんなバディに出てこられちゃ、三枚目のおっさんはどうすることもできないよッ!!ただただ、“居場所”を奪われていくのを、見ていることしかできないよッ!!ああ、ああ、ああああああッ!!こんなことならやっぱり、アカシテリカちゃんとキミが出会ってすぐに、キミのことを消しておけば良かったんだ!無理をしてでもッ!!ああああああッ、不覚ッ!!」




 ムノーデス刑事は私の発言を許さず、勝手なことを延々と喚き続けた。

 私は、彼の言葉を聞いているうちに、だんだんと......。


 イライラ、してきた。




「......ごちゃごちゃ、うるさい」




 ひとしきり叫び、ぜえぜえと息をするムノーデス刑事に、声をかける。


「言いたいことは全部、言った?」


 思わず冷たい声が出る。


「結局、お前は私が邪魔。だから、殺したい。そういうことでしょ?」


 神に力を与えられたムノーデス刑事の、実力は未知数。

 だけど、もはやそんなことは、関係がない。




「なら、お前が死ね」




 こいつは、私の敵なんだ。

 敵は、殺す。


 全身に、殺意と魔力が漲る。


 私は、先手を打ってムノーデス刑事の頭を殴り潰してやろうと、拳に力を込めた。


 でも。




「ボクを殺せば、キミはアカシテリカちゃんの敵だッ!!」




 ムノーデス刑事はニヤニヤと笑いながら、そう言い放った。


 私は......動くことが、できなくなった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  ???(´⊙ω⊙`)いつものエミーさんなら敵認定で殺処分に一直線だったのにムノーデスのセリフに動きが止まるって……エミーさんこれまで内心で語っていた以上にアカシテリカの事を気に入って…
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