表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
17 なぎ倒せ、エミー!花と夜明けと死神編!
326/720

326 (元侯爵)自分勝手で、自暴自棄な男

「はあ、はあ、はあ......」


 アーシュゴー国王都、その華やかな大通りから離れた裏通りの奥の奥、ゴミ捨て場を乗り越えた先から入ることのできる下水道のトンネルの中。

 臭気たちこめるその場所で今、荒い息を吐く男の姿があった。

 歳のころは、40代ほど。

 ボロ布のようなローブを身にまとい、がりがりにやせこけ、しかしその目は爛々と輝いている異様な風貌。

 その男の名は、マケテラ・ロッテン。

 かつてはこの国で侯爵位すら拝命していた人物である。


 そのような男が何故、みすぼらしい恰好をして、下水道に潜伏しているのか?

 端的にその答えを語るならば、現在彼はお尋ね者の身であるからだ。




 長らく王位が空席であるこの国は、この黄金大陸内では非常に珍しいことに、貴族たちで構成される議会により運営されている。

 何故かと言えば、先代の国王が暗殺されているからだ。

 その二人の息子も暗殺を恐れて逃げ出し、消息を絶っている。

 つまり、王を継ぐべき血筋の者がいない。

 王家の血が流れる南の公爵も......暴虐の支配者として恐れられた先代国王からも疎んじられるほど、その、何と言うか、政治には不向きな人物だ。

 そして彼にも、子どもがいない。

 故に50年近く、この国はこのような政治形態を保ち続けてきた。


 だが、しかし。

 暴虐の王による民への仕打ちを反面教師とし、正しい政を志していたアーシュゴー国議会ではあるが......どんなに清い水も、時間が経てば淀むものである。

 次第に腐敗が進み、貴族による様々な不正が、まかり通るようになってきたのだ。


 その腐敗の象徴こそが、彼、マケテラ・ロッテン元侯爵である。


 かつてマケテラは一大派閥の長として権勢をふるっていた。

 自分の思い通りにならないことはないと、まるで王のように振舞っていたことさえあった。


 法?

 道理?

 それが、なんだ?


 好き勝手に、自分の利を増やすため、傲慢に、横暴に日々生きてきた彼は、ある時とある人物との取り引きに応じた。


 それこそが、魔王軍中級指揮官、巨漢のドデカボンボ!


 ドデカボンボは、武力だけではなく知略にも優れたこの魔族は、マケテラに囁いたのだ。

 『お前を、王にしてやろう』と。


 思いあがっていたマケテラは、思った。

 それが、正しき姿であると。


 王位に目がくらんだマケテラはかくして魔王軍の内通者となり、徐々にこのアーシュゴーという国を切り崩し始めたのだ。


 しかしこのマケテラの暗躍に、待ったをかけた人物がいた。

 それこそが、たまたまこの国に訪れていた、聖神が選びし勇者、トーチである!


 なんやかんやあってマケテラの敵対派閥の貴族たちと知己を持った勇者トーチは、マケテラの背後に潜む魔王軍の影にいち早く気づいた。

 そしてなんやかんやあってマケテラの内通が日の下に晒され、彼は破れかぶれでドデカボンボと共に勇者トーチ一行へと立ち向かったが、敗北。

 あえなくお縄についたのだ。


 だがしかし、このマケテラ、それで諦める男ではない。

 若い頃は一流の魔法使いとして活躍していたマケテラの魔法の腕は......決して衰えては、いなかった。

 火事場の馬鹿力の助けも借り、マケテラはある時牢獄から逃亡。

 そのまま姿をくらまし、今に至る......と、言うわけだ。




「ああ......くそ、くそくそくそッ!!」


 ごみをあさり、泥をすする!

 この屈辱の日々を思いながらマケテラは地団駄を踏みつつ、悪態をついた。


「だが、しかし......ぐふ、ぐふふ......!」


 そしてその次に、突然よだれを垂らしながら、不気味に笑い始めた。

 一体彼は、どうしてしまったというのか?


 マケテラはおもむろにボロボロのローブをめくり、骨と皮ばかりになってしまった左腕を胸の高さまで持ち上げ......その手首につけた、腕時計のような装置のボタンを押した。


 次の瞬間!

 腕時計型の装置から下水道の壁へと光が放射され、そこに......ノイズまみれの映像が、投影された!

 映像の精度が悪く、判別できるのは大まかなシルエットだけではあるが、そこには......椅子に座る一人の人物が、映し出されていた!

 映像通信である!


「おい!言われた通り、仕込んできてやったぞ!」


 マケテラは映像の人物に対し、悪態をつきながらそう叫んだ。


『オーダー通り、大通りの第一広場に?』


「ああ!ぐふふ、私は、魔法の天才だ!衛兵共から姿を隠してあの紫色の球を広場に隠すぐらい、わけないことなのだ!」


『その割には、息が荒いようだが?見つかりかけて、慌てて逃げて来たのでは?』


「うるさい、うるさいッ!黙れッ!決して、そのようなことはないッ!!」


 図星をつかれてマケテラは激昂した。

 しかし、映像の人物はそんな彼の怒りを気にかける様子も無く、ゆったりと椅子に腰かけたままだ。

 この映像ではその表情まではわからないが......間違いなくこの人物は、マケテラに対して嘲笑を向けているのだろう。


「おい!私は、言われた通りやったんだ!これで......これで、この王都は、本当に滅びるんだろうな!?」


 そしてマケテラは、映像の人物の嘲りに気づかないまま......そんな、恐ろしい言葉を発したのだ!

 なんとこの、マケテラという男は!

 己が権力を失った、その腹いせに!

 何の罪も無い民を巻きこみ、この王都を、滅ぼそうとしているのだ!


『もちろんだ、マケテラ殿!貴殿に仕込んでいただいたあれは、我々が誇る魔導技術の粋を集めて作り上げた、転移魔法の起点球!そこの町のように、魔力的な防御が構築されている都市内部にも直接軍勢を送りこめる、我らが切り札よ!後は我らに任せておけば、全てがうまくいく......』


「そう言っていたあのドデカボンボとやらは、大して役にも立たず、死におったが!?」


 マケテラがそう悪態をついた、次の瞬間である!

 映像の人物は、押し黙り......身じろぎをした。

 そして翼を......威圧的に羽ばたかせた!


 そう、その人物には、背中に竜のような、翼が生えているのだ......。

 左右の側頭部には鋭利な角も生えており、その両手は異常な程大きく、ごつごつと尖っている。

 ノイズまみれの映像ではその詳細まで把握できないが、シルエットだけでもその人物が、異形の姿を持っていることがわかる。


 そんな異形の人物が、突然押し黙った。

 そこに、マケテラは怒りの感情を感じとり、映像通信先の相手のことであるにも関わらず、恐怖し、顔を青くして冷や汗を流した。


「と、とにかく......後はまかせたぞ。他に、私がすべきことは、ないのだな?」


『......そうだな、いや、一つだけある』


 映像の人物は、その内面の怒りを面に出すことは無く......その異形の右手を顎にあてて思案してから、次のように言葉を発した。


『はちみつだ』


「......は?」


『作戦決行は、貴殿らが言う、三日後の『夜明けの日』の前の、深夜だ。その時に、貴殿は、王城を守る城壁のどこかに、はちみつを塗りたくれ』


「は?何故?」


『理由など、貴殿が知る必要は無い。何しろ、貴殿の脇の甘さのせいで、ドデカボンボの計略は崩れた。残念ながら、貴殿に多くの情報を与えるのは、危険であるようだからなぁ』


「ぐぬッ......」


 先程の己の悪態に対してそうやり返され、マケテラは悔し気に呻いた。


『とにかく、マケテラ殿。貴殿は私の言う通りに、動いておれば良いのだ!さすれば望み通り、アーシュゴー国王都など、滅ぼしてくれようぞ!』


 映像に映し出されている人物は、そんなマケテラの様子を鼻で笑いながら、その異形の左手で顔の左半分を隠している前髪をふわりとかき上げ、宣言した!


『ククク......クカカカッ......クカカカカカカカッ!!』


 そして、哄笑しながら!

 名乗りを、あげたのだ!




『この魔王軍中級指揮官......魔操のデオガンダイがなぁーーーッ!!!』

【魔操のデオガンダイ】

 魔王軍中級指揮官。

 魔物を操る術に長けた人物。

 出世欲が強く尊大で、性格が悪い。

 かつて勇者とかに邪魔され、城塞都市リヒエドの攻略を失敗している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 第五形態覚醒済みデオガンダイじゃないかッ!
[良い点] このお話に出てくるキャラのネーミングセンスが独特で好きなのですがドデカボンボは格別に好きです
2022/07/14 03:25 退会済み
管理
[良い点] こんなところに謎の甘味が… エミーさんが狂喜乱舞するだけの予感しかない
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ