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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
16 平らげろ大海原!パネッモ沖のカイセン編!
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319 哀れなフジツボの最後

 さて、時を少し遡る。

 【エミー砲】がフジツボ・ガロズグの殻を突き破り、水巨人を消滅させた、その直後のことである。


「ピュルルルルーーーッ!?」


 ザラトプはエミーを回収するため、彼女の落下地点まで大慌てで移動していったため、気づかなかったが。


 ぼちゃん、と。


 後から海面に、落ちてきた存在があった。




<<<あ、あ、あがあああ......痛い、痛い......!>>>




 ......ガロズグだ。


 殻をぶち壊され、体の大部分を吹き飛ばされながらも......ガロズグは未だ、生きていた。

 残存する神の魔力を用いて必死に生命維持を行い、ボロボロになりながらも、未だその精神は健在であった。


<<<痛い、くそ、あああ......くそおおおお......!>>>


 そして、彼の心の中には......彼をずっと支配していた妄執が失われた、今。

 新たな......新たな感情が、芽生え始めていた。

 他人の妄執に作られたものではない......彼自身の心が生み出した、感情である。




<<<よくも、よくも......よくもおおおおお......!>>>




 それは、怒りであり、憎しみだった。


 彼は憤っていた。

 自分が何故、こんな、痛くて惨めで恐ろしい思いを、しなくてはならないのか、と。


 もとはと言えば、たまたまガロズグに入りこんできた、あの宝珠が悪いのだ。

 あの宝珠に染みついていた妄執が、ガロズグに支配への欲求を抱かせた。

 ガロズグは、操られていたようなものだ。

 自分だって、被害者なんだ。

 自分は悪くない。


 それなのに。


 それなのに、何故自分ばかりが、こんな目にあうのか。


 許せない。


 許せない!


 この世の中の不条理が、許せない!


 あの、イソメが許せない!!


 陸上生物が......絶対に許せない!!!




 ガロズグは心の内に復讐の炎を燃やしながら、ゆっくり、ゆっくりと、海の底へと沈んでいく。

 彼にはまだ、神の魔力が残っている。

 いずれ体を完全に再生し、殻を作り直すこともできるだろう。


<<<その時が来たら......覚えて、いろよ......!!>>>




 だが、しかし。


 結論から言えば。


 『その時』が彼に訪れることは、決してなかった。




<<<ぐ......!?>>>




 海中を沈んでいく、ガロズグ。

 彼はふと、悪寒を感じ。

 体の再生に魔力を集中するため行っていなかった、魔力による周囲の感知を、再開した。


 そして気づいた。


<<<な!?>>>


 彼は現在、数えきれないほどの海の生き物たちに......包囲されているということに!


 それらは、多種多様なエビであり、イカであり......ボラだった。


<<<なんだ、貴様ら......なんだ、その目は!余に対して......不敬!不敬であるぞ!!>>>


 ガロズグは虚勢をはり、周囲を【威圧】するが。


「............」


 エビ、イカ、ボラは無言。

 当然だ。

 エビやイカ、ボラが喋るわけがない。

 彼らは、ただの海洋生物だ。

 本能で動く、野生生物だ。




<<<ええい、鬱陶しい!散れ......散れッ!>>>


 ガロズグが【威圧】を放っても、辛うじて残っていた蔓脚を振り回しても。

 彼らがガロズグから、離れることは無かった。


 それどころか。




<<<痛いッ!?>>>




 ......その中の一匹のボラが、ついに先陣を切って、ガロズグに噛みついた。

 その、ガロズグからしてみれば小さな体をぶんぶんと振って、弱りきった彼の体を、引きちぎる!


 そしてそれが、合図となったのか。


 エビが、イカが、ボラが!


 一斉にガロズグの体に......群がり始めたではないか!




<<<ああああああッ!?痛い、痛い痛い、痛いーーーッ!?>>>


 泣き叫ぶガロズグの【念話】など、彼らは気にもとめない!

 一心不乱にガロズグの体を、食いちぎっていく!


 大量に魔力を含むガロズグの体を食べることで魔力中りを起こし、息絶える者も多い。

 しかし、仲間のそのような死に様を見ても、決して彼らは止まらなかった。


 齧られ、齧られ、齧られ!


 どんどん、ガロズグの体が、小さくなっていく......!




<<<や、やめろ、やめろおおおおッ!は、離れろおおッ!!>>>


 ガロズグは叫んだ!


<<<知恵持たぬ、雑魚のくせに!!>>>


 叫んだ!


<<<余に対して、不敬であるぞ!!>>>


 必死で、叫んだ!


<<<余は、王なのにッ!!選ばれし、フジツボなのにッ......!?>>>




 最後に。


 彼は最後に、そんな妄言を吐いて。


 すぐさまそれが、妄言であると、自分で気づいて。


 そして、それ以上何かを思う間もなく。




 死んだ。




 鎧を失い、敵に群がられて、死ぬ。




 それは。




 王として見るならば、壮絶な最後であったと言えるかもしれない。


 しかし、海洋生物として見るならば、割とありふれた最後であったと言えるかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  海原はすなわち大自然、弱肉強食の掟が全てを制する。(*´-`)眠れガロズグ、フジツボの幸せとは宝珠に出会う前の大魚と共に生きていたあの頃だった事に気づかず虚しく眠れ……。 [気になる点]…
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