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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
16 平らげろ大海原!パネッモ沖のカイセン編!
316/720

316 貫け、【エミー砲】!

<<<は......はあああああッ!?>>>


 ガロズグはその意味不明な行動を目の当たりにして、驚きのあまり思わずその動きを止めた!

 食べた!?

 相棒を、食べた!?

 何故!?

 まさか......あの陸上生物の魔力を、食すことで、取りこもうとでも、言うのか!?


 しかしながらガロズグのその推測、全くもって的外れである。

 そして、ここで動きを止めたこと。

 それこそが、彼の運命の、分水嶺でもあったのだ!




<<<さあ、いくっすよ、フジツボお化けっ!>>>


<<<!!>>>


 そんな、ザラトプの【念話】に引きずられ、数秒間思考に囚われていた意識をはっと眼下に向けると。

 そこにいるのは、その頬を大きく膨らませた、大海蛇である。

 一体何を、しようというのか!?




<<<合体奥義!!【エミー砲】ぉーーーっ!!!>>>




 大海蛇は、ガロズグを睨みつけながら......【念話】でそう、叫んだ。

 そして、次の瞬間!

 彼の口から......超高速の水弾が、ガロズグ目がけて一直線に放たれた!




<<<は、なんだ!それは先ほど、エビに向かって撃っておるところを、見ていたぞ!驚かせおって......>>>


 ガロズグはそれ防ぐため、振り下ろそうと天高く掲げた腕を水弾の軌道上へと動かし......そこで、気づいた。




 あの水弾が......ただの水弾では、ないということに!




 その証拠に、色が黒い!

 そして!


「らあああああーーーッ!!!」


 何やら、叫んでいる!




 そう、エミーだ!


 その水弾には!


 【黒腕】でその身を完全に覆い、どす黒い砲弾と化したエミーが!


 ......内包されて、いたのだッ!!




<<<な、なんだとおおおおおーーーッ!?>>>


 ザラトプの見立て通り、それがただの水弾であるならば、ガロズグはそれが水巨人の体に触れた瞬間に、制御をのっとることができる。

 しかしながらそれは、水弾に内包された、慣性に従って動く殺意に満ち満ちたどす黒い弾丸には、あてはまらないのだ!


 ドッパアアアアアンッ!!


 かざされた水巨人の片腕に、大きく円形の穴が穿たれる。

 水しぶきと殺意と黒い靄をまき散らしながら、弾丸がそれを、貫いたからだ!


<<<おおおおおおーーーッ!?>>>


 慌ててガロズグはもう片方の腕をかざすが、黒い弾丸は止まらない!


 ズパンッ!!


 先ほどより小さな衝撃音を生じせしめながら、やはりその弾丸は、海水を集めてつくったその巨腕を、容易く貫通してしまった!


<<<待て、待て、待て......待て待て待てッ!?>>>


 よく見ればその弾丸、形状が、初めの頃とは変わっている。

 円形ではなく、より空気抵抗の少ない、槍のような円錐状へと、その姿を変えている!

 そして!


「らあああああーーーッ!!!」


 何やら絶叫をあげながら......超高速で、回転している!

 どういう、ことなのか!?

 ......簡単だ。

 エミーが、あのどす黒い弾丸の中で、体をひねりぐるぐると、回り始めたのだ!




 ギュルルルルルルーーーッ!!!




 空気とこすれあいながら、凄まじい音を鳴らしてガロズグへと進み続ける、殺意の塊!




<<<調子に......乗るな、陸上生物がーーーッ!!>>>


 しかしそれに怯え、逃げ出す。

 そんな選択を、ガロズグは取らなかった。

 何故なら、彼は王だから。

 王としての矜持が、無意識の内に恐怖に蓋をする!


 彼は激昂し、吠え叫び......水巨人の体を操作して、弾丸を阻む水の壁を、何枚も作り出した。

 水巨人の体は、いかようにも形状を変化させられるのだ。


 ......しかし!




 ズパンッ!


 ズパンッ!!


 ズパパパパンッ!!!


 ガロズグの作り出した防壁の、そのことごとくを突き破り、弾丸は直進する!

 その勢い、全く衰えない!

 と言うかむしろ、何故かここに来て徐々に......その速度が、増している!?


<<<何故だあああああーーーッ!?>>>


 おそらく、弾丸後方からジェット噴射のごとく放出されているエミーのどす黒い魔力が、そのファンタジー挙動に一役買っていることは間違いないが......!


 エミーは、必死だ!

 無意識の内に魔力を操り、最善を引き寄せている!

 ガロズグも、必死だ!

 考察などしている場合ではない!

 オマケ様も必死だし、海面からこの攻防を見上げるザラトプにも、細かいことはわからない!


 だから、誰一人として!

 今、この場で起きている現象に、説明を加えることはできない!




 だがしかし、実際のところ!




 そんなことは、どうだって良いのだ!!




 とにかく、今、ここで重要なのは!


 もはや、どす黒いその、弾丸は!


 何重にも設置された水の防壁を、全て突破し!


 フジツボ・ガロズグの身を守る、分厚い、ごつごつとした殻に!




 ついには、たどり着いたという!




 ......その、事実!!







 チュイイイイイイイインッ!!!







 弾丸と化したエミーは超高速回転し、ドリルが如く、ガロズグの殻に食らいつく!

 金属を削るような、甲高い音が周囲に響き渡り、火の粉がまき散らされる!


 一方のガロズグは、必死に殻を魔力で強化!!

 己の鎧、食い破られてなるものかと、必死で防御力を高める!


「らあああああッ!!!」


<<<おおおおおおッ!!!>>>


 ドオッ!!!


 エミーが弾丸後方から放出し続けている魔力ジェット噴射が、さらにその勢いを増す!


 ミシィッ!!!


 ガロズグの殻から、嫌な音が鳴る!


<<<ふ、ふ、ふざけるなぁーーーッ!!余は、余は、王であるぞーーーッ!?>>>


 ガロズグはもはや、出し惜しみをしない!

 凄まじい勢いで神の魔力を消費し、殻の強化をさらに強める!

 殻の損傷、その進行が、止まる!


<<<ツボボ......ツボボボボーーーッ!>>>


 まだ、神の魔力に余裕はある。

 一方でこの、弾丸と化している陸上生物。

 こいつは何故だか妙に強いが、しょせんはただ、少し強いだけの陸上生物である。

 さすがにこの勢い、長くは持つまい!

 神の力を取りこんだ、ガロズグとは違うのだ!

 さすれば、この我慢比べ、己が勝つは必然である!

 少しだけ心の余裕を取り戻したガロズグは、哄笑した!


<<<諦めよ、陸上生物!滅びよ、陸上生物!!>>>


 ガロズグは嘲りながら、エミーへと語りかける。


<<<余は、王である!王の道程を、邪魔するでない!余は、フジツボ新世界を構築する者!この世の全てを、支配する者ッ!>>>


 減っていく。

 神の魔力が、減っていく。

 しかし、まだまだ余力はある。

 問題は無いのだ。


 故にガロズグは、余裕を持って語り続けた。

 語り続けようとした。


<<<何故なら......何故なら、余は......!!>>>


 だが、しかし。

 ああ、哀れなことに。


<<<余は......余は......!?>>>


 ガロズグの弁舌が、止まった。


 何故か?




 彼は、知らなかったのだ。


 彼が、必死で戦ううちに。


 神の魔力と同時に、消費していた物が、もう一つあったことを。




 それは、妄執。




 彼が取りこんだ妄執とは、一体何であったのか。


 それは、宝玉の魔力に染みついてしまった、思念なのだ。




 神の魔力には、まだ余裕がある。


 だがしかし、妄執については、どうか?


 所詮は、人間の王たちが、数千年ためこんだ程度の、妄執である。


 神の魔力全体から見れば、それに染められてしまったのは、ほんの一部分。


 大量に使えば、すぐになくなってしまう程の、上澄み。


 それが、ガロズグを王たらしめていた、妄執の正体だ。


 支配への欲求を生み出していた、躍進の原動力だ。




 その妄執が。


 気づけば、無くなっていた。


 使い果たしてしまった!


 その、途端に。




<<<余は......王?......何故?>>>


 ガロズグは。

 この、哀れなフジツボは。


<<<全てを、支配......何故?>>>


 そのアイデンティティを。


<<<フジツボ新世界......何それ?>>>


 ......失って、しまった。




 ぽっかりと。

 ガロズグの心に、大きな穴が開いた。


 そして生じる、一瞬の隙。




「らあああああーーーッ!!!」


 ミシ......ミシミシミシッ!!!


 その隙は、殺意の弾丸を前にしている今、致命的なものだった。

 魔力による強化の綻びを突き、弾丸は殻に、ダメージを加え始める。

 嫌な音と共に、数十年かけて肥大化させてきたガロズグの鎧に、ひびが入り始める。


<<<あ、あ、あああッ!?やめ、やめ、やめろおおおおッ!?>>>


 ミシミシミシッ!

 ミシミシバキッ!


 哀れなフジツボの叫びなど、どす黒い弾丸と化し高速回転中のエミーには......届かない!

 ついには懇願空しく、フジツボの殻が、砕け散り始めた!


<<<あ>>>


 そして、ついに。


 バキンッ!


 そんな音を、立てながら。


 殻に、小さな穴が開いた。




 そして、それと同時に。


 このフジツボが、殻の中で大切に保管していた......白い宝玉が。


 外へと、こぼれ落ちた。




<<<ああああああッ!>>>




 あれを、無くしてはいけないッ!

 妄執によって強固に作られた、未だ消え去らぬ強迫観念が、フジツボの体を突き動かす!

 彼は、防御など、かなぐり捨てて。

 無意識の内に、宙を舞う白い宝玉に向けて、その蔓脚を伸ばした。




<<<......あれ?>>>




 だけど。


 なんで、こんなことを?


 蔓脚を伸ばしてから気づく、自らの行動の不合理。




 蔓脚の動きが、止まる。


 白い宝玉は、止まらない。


 海に向かって、落ちて行く。


 そして、弾丸も......止まらない!




「らあああああーーーッ!!!」




 バキンッ!

 バキバキバキバキバキッ!!


 最後のダメ押しとばかりに、魔力ジェット噴射の勢いをさらに増し!

 エミーは、フジツボの殻を、完全に破壊し!

 大穴を開け!

 そして、ついには!


 フジツボの本体を......貫いた!!




<<<ぐぎゃあああああーーーッ!!!>>>




 フジツボの絶叫が、周囲に響きわたる!

 エミーは弾丸の形状のまま、殻の反対側をも突き破り、海の向こうへと飛んでいく。

 水巨人の体は、それを維持していた膨大な魔力の供給が無くなることで、ざばざばと、轟音を立てながら崩れていった。




 後に残った物は......何も無い。


 水巨人が消え去った後、そこには。




 波があった。

 空は青かった。

 雲は白かった。




 つまりは、ただただ。


 いつもと変わらない海の風景が、広がっていた。

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― 新着の感想 ―
やっぱこの主人公鉄血適正高いと思う ドリルとか魔力ジェットとかモビルスーツのそれじゃん
[気になる点] 蛇に頬? ……妙だな。
[良い点]  広がる平穏なる海の風景のナレーションに( ᐛ )وガッツポーズする読者♪ [気になる点]  勝敗は決したが(´Д` )エミーさんの安否は?珍しくも手負いのエミーさんが気になるー!ザラト…
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