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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
1 異世界転生用魂オークション編!
3/700

3 虚無と焼肉のかおり

 黒い渦に吸い込まれた先、虚無の中には......何もなかった。

 どこまでも、どこまでも続く真っ黒な空間。

 何もかも真っ黒で塗りつぶされ、何も見えないし聞こえない。

 寒くもなく暖かくもない。


 そんな虚無の中に、私のどす黒い魂だけがプカプカと浮いている。




 ......いや、本当は真っ黒な空間すらないのかも?だって虚無なんだし。

 なんか言っててわけわかんなくなるけど。




 ............はぁ~~~~......。


 ってか何よこの展開。

 ため息もつきたくなるでしょ。




 自分の人生ふりかえってみても、楽しいモノではなかったと思う。


 父親は犯罪者で刑務所から出てこない。

 母は気を病み、私が物心つく前に死去。


 私を引き取った親族たち......“家族”たちからは厄介者扱いされ、幼いうちから住む場所を転々とし。


 友達もできず。


 父親のことでいじめられ、“家族”からも虐待され。




 ......それでも。


 それでもだよ!!


 私はまっすぐに生きようと頑張ってきたよ。

 無理やり笑顔を作って、愉快に過ごそうと頑張ってきたよ!


 頑張って、頑張って、頑張って、不満があっても表にはださず!

 きっといつかこのつらい日々も、良い思い出になる日が来ると、そう自分に......言い聞かせて!!


 その、頑張った結果が、これかよ!?

 わけわからん神々に拉致されて、臭いからってポイ捨てされて!!?


 ふざけんな!ふざけんなよ!!ふざけんじゃねぇーーーーーーーーっ!!




 とめどなく、怒りがあふれ出てくる。

 私の魂が、さらにどす黒く染まっていく気がする。

 怒って、怒って、怒って、己の人生の不遇を悲しみ、嘆き、呪って......ひとしきり喚きたてたところで......。


 なんか、冷めた。


 まぁ......むなしいのよね。

 私がいくら騒いでも、ここにはそれを聞いてくれる人すらいないんだもん。

 疲れるだけ。はーい、やめやめ。別のこと考えよ。




 ......あ~~、おなか減った気がする。

 お肉食べたいなぁ。

 焼肉食べたい。

 私、お肉大好きなの。

 肉食系女子なの。

 前世では、あんまり食べさせてもらった記憶はないけど......来世では、アレだね。

 もうどんどん肉を食う。

 そうやって生きていきたい。

 でも、虚無に捨てられた私に、来世ってあるのかな?


 輪廻の輪?みたいな?

 そんな感じの流れに、今からでも乗れますかね?


 輪......輪かぁ......。

 グルグルまわる、輪廻の輪......。




 グルグル巻きになったウィンナー、食べてみたかったなぁ......。







 そんな風に、とりとめもないことを延々と考えていた私だったんだけど。

 ......ふと、においを感じた。

 ってか、魂の状態で見たり聞いたり嗅いだりってどうやってんの?って思わなくないけど、それはとりあえず置いといて。


 このにおい......。

 これは間違いない。


 肉の、焼けるにおい。

 甘く香ばしい......タレの香りも混じっている。


 焼肉だ。

 焼肉のにおいだ。

 誰かが近くで......焼肉をしている......?


 わたしはプカプカと、そのにおいの方向に引き寄せられ......。




 キュポンッ!という音と一緒に。


 またしてもどこかに吸い込まれた。

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― 新着の感想 ―
[一言] あ〜、この子の生い立ちは現代日本ではこうもなりますね(._.)なまじ庇護する気もない家族づらする存在がいたのも悪影響かと、しかし虚無の中で消滅するどころか お肉を思えるその心ばえは鋼のメンタ…
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