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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
12 ザマーゴの森開拓編!
212/745

212 復讐者は姿を現す

「チワワワーーーッ!!」


 とびかかってきたアサルトチワンワンを、手刀......【蟷螂】で左右に真っ二つにする。


「ミギャーーーッ!!」


 その隙をついて私の横を通りぬけようとするフォレストトポポロックは、【魔力斬糸】で細切れに。


「ブブブブッ!!」


 嫌な羽音をたてながら突進してくるソフトボール大の甲虫は、手で振り払い、叩き潰す。


 続くマウンテントポポロックを殴り殺し。


 死神狼を蹴り殺し。


 ノシテルケッチを殺し。


 殺して、殺して、殺して、殺して、殺して!




 それでもなお、魔物たちの襲撃は止まない!

 皆一様に、よだれを垂らし、瞳を殺意に染めながら、無謀な突撃を繰り返す!


「ふざ......けんな!!」


 つい、苛立ちのせいで、腕を振るうたびに余計な力をこめてしまう。

 思いきり、死神狼を殴りつける。

 脆弱な魔物の肉体はいともたやすくはじけ飛び、私の拳はその勢いを衰えさせることなく地面を殴りつける。


 ズン......!!


 低い音が響き、小さなクレーターができあがる。


 そして生じるは、わずかな隙。


「「「ミギャーーーッ!!」」」


 それを逃さず、拠点内へと侵入しようとするフォレストトポポロックたち!


「アアアアアアアアアアアッ!!!」


 私は怒りのあまり、絶叫する!


 ふざけんな!

 ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!

 そこは、私の住処だ!

 お前らが!

 踏み入って良い場所じゃない!!


 殺す!殺す!殺す!


 地面から、土くれを握り取り、瞬時に投げつける!

 【無限礫】!!


 放たれた土くれは狙い過たず狼藉者共の頭を弾き飛ばし、物言わぬ躯へと変える!


<お、落ちついて!落ちついてください、エミー!怒りすぎです!>


 落ち着けるわけ、ないでしょ!!

 こいつらは!

 この魔物共は!!

 私の拠点を、ぐちゃぐちゃにしようとしているんだ!

 許せないよ!

 皆殺しにするんだ!!


<エミー、拠点を守りたいなら、魔物を殺すことは当然必要です!ですが、落ちついて!動きが大振りになっており、余計に体力と魔力を消費しています!これは持久戦です!それを忘れずに!>


「............」


 あまりにも的を射たオマケ様のアドバイスに、さすがに少しは頭が冷える。

 とびかかってきたフォレストトポポロックの首を掴み取り、引きちぎりながら、深呼吸する。

 【魔力斬糸】で周りの魔物を斬り刻みながら、辺りを見回す。


 死屍累々とは、まさにこのこと。


 私によって叩き潰され、斬り刻まれた魔物たちの死骸が無造作に転がり、地面にはいくつもクレーターや溝ができている。

 それなのに、魔物たちの戦意は未だ衰えず、恐れることなく私に向かってくる。


<なにやら、薬剤が使われているのかもしれません。興奮剤のようなものが>


 興奮剤?


<そしておそらく、多少はエミーも、その影響下にあるのかと>


 ああ、なるほど。

 道理で殺しても、殺しても、怒りがおさまらないわけだ。

 今でも、ふつふつとわいてくる。

 怒りが。

 殺意が。

 耳障りな叫び声をあげ、私の大切なものに襲いかかる、魔物共。

 絶対に、許さない。

 殺す。

 皆殺しだ。


<エミー、落ちついて!>


「............」


 またしても、怒りにのまれそうになった私の精神を、オマケ様の声かけがクールダウンさせる。

 これは......まずい。

 思ったよりも、まずい。


 気持ちのコントロールが、できない。

 そのせいで、確かに魔力を使いすぎている。

 どのくらい、私は戦っている?

 それすらわからないほど、私は冷静じゃなかった。

 大分、疲れている。


<東の山には、竜がいました。他にも同格の強敵が、いないとも限りません。そんな存在に今襲われれば......苦戦は免れません>


 オマケ様は、大分オブラートに包んだ言い方をした。

 だけど私には、オマケ様の言いたいことは良くわかった。

 苦戦を免れないどころの話じゃない。

 死にかねないのだ。

 それくらいには、疲れている。

 大失態だ。


「............」


 よし、冷静に、なった。

 戦い方を切り替える。


 「ミ」

 「ギ」

 「チ」


 フォレストトポポロック、死神狼、アサルトチワンワンを一撃で殺し、素早く肉を抉りとる。

 その肉は、そのまま口の中へ。

 なるべく命を腹の中に詰めて、魔力を回復させる。

 少しずつしか食べられない、己の小さな口が恨めしい。


 「ギ」

 「ブ」

 「グ」

 「グ」

 「ガ」


 これは作業。

 これは作業。

 害獣駆除作業。

 肉を食みつつ、努めて、冷静に殺す。

 不快な叫び声を、あげさせる前に殺す。


<良いですよ、その調子です!冷静に戦えていますよ、エミー!今のあなたはまるで、冷酷な殺戮マシーンですよ!>


 それは果たして誉め言葉なのかな、オマケ様!?


 ......でも、良し!

 今は割と、冷静だ!

 オマケ様にも、つっこみができる!


 懲りずに突っ込んでくる魔物共を引きちぎって殺しながら、私は少しだけ安堵した。

 これなら、まだまだ戦える。

 もっといっぱい、殺せる!




 が、しかし。

 その安堵が、蓄積した疲労が、私に若干の気の緩みを生み出していた。

 隙が、生まれた。


 そしてその隙を、見逃さなかった存在が、いたのだ。




◇ ◇ ◇




 彼は、機をうかがっていた。

 ナンガ山の、高い高い崖の上から、ずっと仇の動向を探っていた。

 驚くべきことに、彼の優れた視力は、遥か麓にできた新しい人間たちの縄張りをはっきりと捉えることに成功していた。

 もちろん、そこに住まう悪魔の様子も、彼には筒抜けだった。

 彼は、じっと身を隠しながら、時を持っていた。

 確実に、悪魔を葬り去ることのできるタイミングを、見計らっていた。




 そして、その時は、ついに訪れたのだ!

 この日、麓の森は、妙に騒がしかった。

 奇妙な赤い煙がいくつも立ち上り、有象無象たちがいきり立って叫び声をあげながら、人間たちの縄張りに襲撃を開始したのだ。


 機が、訪れた!


 彼は確信した!

 そして都合の良いことに、彼の仇である悪魔は、奴の縄張りの東側の端、つまり彼が一方的に観察することのできる山側の場所で戦い始めた。

 彼は、観察を続けた。

 悪魔が体の周囲にどす黒い靄を漂わせながら、腕を振る、足を振る。

 ただそれだけではじけ飛ぶ、有象無象の肉体。

 恐るべき力。

 だが、しかし。


 彼は、己の体に漲る、絶大なる力に意識を向ける。


 己の力であれば、あれに対抗できる。

 己は、鍛えた。

 鍛えに、鍛えた。

 もはやこれ以上、己には伸びしろがない。

 そう、自覚できるほどには、鍛えた。


 母が死に、竜たちが死んだ今。

 この山の主は、名実ともに、彼だった。


 だがしかし、愚かな竜たちとは違い、彼は主の座など微塵も興味はなかった。

 頂に座したから、なんだというのか。

 彼の目的は、復讐。

 ただ、それだけである。




 観察を続けていると、悪魔の様子に変化が現れた。

 それまでは無造作に、まるで雑草を刈り取るように命を引きちぎっていた悪魔の動きが、少しだけ小さくなった。

 殺し続けていることに違いはないが、明らかに疲労を感じさせる動きだ。


 今だ。


 今しかない!


 彼は立ちあがった!

 憎悪により逸り、猛る心をなんとか押さえつけ、叫びたくなるのを我慢し!

 ぐっと、四つ足に力をこめる!


 そしてそれを、思いきり解放した!


 次の瞬間、びゅん、という風切り音を立てながら、彼の巨大な肉体は宙を舞っていた。

 高い高い、ナンガ山の崖の上から。

 悪魔の元まで、一跳び!

 跳躍したのだ!!




◇ ◇ ◇




 それは、突然のことだった。


 私の目の前に、何か巨大なものが、突然降ってきたんだ。


<な>


 凄まじい衝撃音を発生させながら落ちてきた、それは。

 オマケ様が何か言う、その暇すらも、与えずに。

 巨大な、太い何かを、思いきり、横なぎに、私に叩きつけた!


「グ!!?」


 あれは、多分腕だ。

 そう理解したのは、私が吹き飛ばされ、無様に防壁に叩きつけられたその瞬間のこと。


「ゲホッ......」


 思わず、せき込む。

 咄嗟の魔力変換で、多少は衝撃を散らすことができた。

 防壁には、ヒビが入った程度。


 だけど、初撃をもろに食らってしまった。

 私の体は、とても丈夫。

 そして小さく軽いため、強烈な一撃をくらうとまず吹き飛ぶ。

 そのおかげである程度攻撃の威力を和らげることができるのは、この体の大きな利点だ。

 しかし、それでも。

 けっこうな、ダメージだ。

 大分、痛い。


<だ、大丈夫ですか、エミー!?>


 ぐっと、少しめりこんでしまった防壁から体を起こし、地面へと飛び降りる。

 片膝立てて着地。

 立ち上がり両手両足をぷらぷら。

 腰をまわす。


 うん、大丈夫。

 折れてはいない。


<一体、何が......>


 一体何が、起こったのか?

 単純だ。

 殴られたのだ。

 目の前の、デガブツに。


<......!!>


 そう、私の目の前には、どこから現れたのか......大きな大きな......おそらく、前世の二階建ての家よりも大きな......熊がいた。

 熊だ。

 その造形は、あまりにも巨大ではあるけど、間違いなく熊だ。

 そして特徴的なことに、その体毛は、日の光を浴びてきらきらと輝く、黄金色。


 黄金色の、巨大な熊。


 私はこれまで、似たような手合いと、戦ったことがある。

 こいつは......。


「グオオオーーーーーーッ!!!」


「!!!」


 次の瞬間だった!

 黄金熊は、その巨体からは想像もつかない機敏さで跳びあがり、私に向けてその両腕を振りおろした!

 たまらず横跳びして回避!

 しかし黄金熊の攻撃はそれだけでは終わらず、地面に叩きつけた腕を今度は横に振るう!


「ム!!」


 今度は、直撃!

 しかし魔力変換でダメージを減らし、熊の腕の勢いを逆に利用して、わざと少し吹き飛ばされ距離をとる。

 これで、くらった攻撃は二発。


「グルルルル......!」


 それなのに、まだその肉体を保ち、動き回る私に対して、黄金熊は明らかに不満げに唸る。


「............」


 私はどさくさに紛れて拠点に侵入しようとする魔物共を【無限礫】で殺し続けながらも、視線は決して黄金熊から外さない。

 少しでも隙を見せた次の瞬間には、おそらく手痛い攻撃を、またしても食らうことになるのは目に見えているから。


 この熊は、他の魔物共とは、違う。

 理性を保っているし、拠点への侵入にも興味はないように思える。


 あの熊の目的は、私だ。


 あの熊の瞳に燃えるのは、唸り声に交じるのは、強烈な憎悪と殺意。

 私に、対しての。


「......お前は」


 思わず、ぽつりと言葉が漏れる。

 私は、その憎悪と殺意に心当たりがあった。


「あれの......家族か何か......子どもか」


「グオオオーーーーーーッ!!!」


 熊が、人の言葉を理解するわけがない。

 だから、その叫び声は、おそらく返事でもなんでもないんだけど。


 私は、確信した。


 この熊は、仇討ちに来たのだ。

 家族を殺した、私を殺すために!


 そう!

 私には、心当たりがある!

 私はかつて、この熊のように巨大で黄金色をした、熊を!

 死闘の末殺して、その肉を食べている!


 そして目の前にいるこの熊は、あまりにもその時の熊に似ている。

 間違いない。

 こいつは私が殺した熊の、肉親なのだ。


 私が、憎くてたまらないのだ。

 その瞳を見ればわかる。

 声を聞けば、わかる。




 私は。

 これまで生きるために、たくさんたくさん、殺してきた。

 だけど、こんな風に。

 その結果として生まれた憎悪をぶつけられる。

 そういう経験は、あまりない。


 大切な者を奪われた悲しみ。

 大切な者を奪った私への憎しみ、怒り。

 あまりにも正当な、復讐心。


 それを、ぶつけられて。




 私は。




 私は......!




<エミー......!>







 特に、何とも......思わなかった......!







<え、ええ......!?>




 復讐だなんだと、あれは熊のくせに、御大層な背景を背負っているらしいけど。

 結局のところ、私にとっては、ただの敵に過ぎない。

 私の生を邪魔する、障害以外の何物でもない。

 そんなやつに向けてやる同情心など、私が持ち合わせているわけがない。


 生きるために、やったことだ。

 その結果、お前が私を恨む。

 それは、勝手にするが良い。


 だけど。

 だけど私は、お前なんかに殺されてやるわけには、いかない。

 私は、生きる。

 私とオマケ様の命以外の何もかもを犠牲にしたとしても、生き延びてやるんだ!


 私は何か、おかしなことを言っているかな、オマケ様!?


<......いえ、とても望ましい、考え方であると思います......うふふ、少なくとも、私にとっては>




 少し腰を落とし、拳を体の前に構える。

 黄金熊を、睨みつける。


「グオオオーーーーーーッ!!!」


 改めて戦闘態勢をとった私に対し、黄金熊は一吠えし威嚇。

 その叫び声だけで周囲はビリビリと震え、私の背後に生えていたニシャカーシャの大木は、ミシミシと音を立てながら倒れた。


「声と図体ばかりでかい、でくの坊が......」


 私は負けじと、【威嚇】を返す。

 私の周囲を漂うどす黒い靄が、さらにその濃度を増す。


「お前の、復讐の、行く末......教えてやる......」


 【身体強化】により、肉体の強度を高めに高め。

 一歩、前へと踏み出す。

 そして、私は。




「それはッ!!!私のッ!!!腹の中だーーーーーーッ!!!」




 黄金熊へと、全力で殴りかかった!!

 ついに今章のボス、黄金熊ガハリンキジュニア登場!

 ???の正体です。

 どんぴしゃで当たりはしなくとも、“エミーを恨む魔物の子”がその正体であるということは、割とばればれでしたかね。

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― 新着の感想 ―
[一言] そんなのいたっけって探したら6行で書かれてる獲物の話だった
[良い点] \(^▽^)/来た来た!復讐者!! 各地のボス級モンスターで唯一 ナレーションだけで流された黄金熊ガハリンキはこのために詳細が伏せられていたんですな。子沢山だったポイズントポポロッククィー…
[一言] そうか、あのガハリンキの子供だったのか!! ……いやだれやねんそれ。 >>検索中>> あー、いました。ルークリース家編で美味しく頂かれてますね。
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