パラドックス
「つまりあれは、仮に名前をNO.iとして時田が前に言ってた仮説を実証できる。」
「負の作用で過去に戻れるってやつですか。もし過去に戻ったら戻って来れないんですよね?」
黒田は花さんに尋ねる。
「いや、私の仮説だと空間認知学の観点からいうと過去に戻っても戻って来れるぞ。」
「え、戻って来れるんですか!?」
「ああ、正確には押し戻されると言った方が正しいけどな。本来この世には物質量が決まってる。そして未来から過去にやって来たその人物の分子はどこから賄われることになるのか。」
「現在…ですか。」
「そう、このタイムトラベルを始めたその場所その人間がそのまま過去に行く。現在ではその空間に穴が空き、過去では分子が増える。その現在に空いた穴を埋めるために過去の過剰な分子を引き寄せる。」
「その空いた穴を塞ぐのに時間はどれくらいあるんですか?」
「そうだな、ただの推測でしかないが長くて1週間、短くて3日と言ったところだろうか。」
「でも、それって防ぐ方法が多分ありますよね」
「黒田の言うとおり、過去に大きく干渉すれば未来が変わりそのタイムトラベルした現在が存在しないことになりパラドックスを起こし改変が起こる。」
「その干渉ってのは具体的なんですか?」
薄々気づいている答えを花さんに求める。
「人を殺すことだ。」




