3話
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恋は人を盲目にする。
私は恋に落ちた。
初めての恋だった。
その恋は、絶対に報われない。
そのはずだった。
☆☆☆
「雪菜、ちゃん? 」
僕は、目の前に立つ少女の名前を呟いた。
知らないはずなのに。
話した事も、ほとんど無いのに。
どうしてだろう。
心が満たされていく。
彼女は、僕の頬へと手を伸ばし涙を拭った。
「・・・・ねぇ」
「なんですか? 」
「『付き合ってた』って、ほんとう、なの? 」
僕には記憶が無い。
いや、正確には記憶が曖昧なのだ。
『アリス』に書き換えられ、一年以上前の記憶はあまり思い出す事が出来ない。
そのせいで、昔はよく良いように騙された。
だからこそ、まだ信用は出来ない。
いや、認められない。
「ほんとうです」
彼女は言った。
まっすぐに僕の目を見て。
「証拠は? 」
「ちょっと待ってくださいね?? 」
そう言って、彼女はスマホを起動させると1枚の写真を見せてきた。
そこには、嬉しそうに腕を組む雪菜と、照れ臭そうに頬をかく僕が写っていた。
「・・・・。」
「懐かしいです・・・・。この時、私達初めてキスをしたんですよ? 覚えてない、ですよね。私、本当に嬉しかったんです。楽しかったな~・・・・」
「なんで・・・・」
「はい? 」
「なんで、話しかけて来なかったの? 気付いてたんでしょ?? 」
嘘は吐いていないらしい。
でも、おかしい。
チャンスなら、たくさんあった。
それなのに、なぜ僕と関わろうとすらしなかったのだろう。
「・・・・話しかけられなかったんです」
「? 」
「ずっと、待ってたんです」
待ってた? 何を??
「君がーーーー
「やめろッ!! 」
雪菜ちゃんの言葉を遮る様に誰かが叫んだ。
「かい、ちょー? 」
「帰ろう。ワンコくん。もうここにいる必要は無い」
「ちょ、まだ話してる途中なんですけど」
「いいんだ。君の知るべき事じゃない」
会長がグイグイと僕の腕を引っ張てくる。
会長は、普段からは想像も出来ないほどに焦った様な顔をしている。
「また、ですか? 」
雪菜ちゃんがボソッと呟く。
振り向くと、真っ黒な目をした雪菜ちゃんが立っていた。
その顔を見た瞬間、会長の目には涙が溜まりだす。
「なぜですか? 」
「やめろ」
「なぜ、また、じゃまするのですか? 」
「やめて」
「またーーーー
僕達の周りを、一瞬で炎が燃え上がる。
「わたしからひなくんを奪うの? 」
☆☆☆
ただ、もう一度
もう一度だけ会いたかった
それだけなのに
ただそれだけなのに
「会いたい」
熱い
熱い
熱い
町が燃えている
人が燃えている
『私』が燃えている
「逢いたい」
彼に会いたい
彼に逢いたい
彼に・・・・
☆☆☆
「好きです。大好きです。あなたの事が。あなたの全てが。付き合いましょう。もう一度、付き合いましょう。デートをしましょう。私、動物園にいきたいです。可愛い動物達を見ながら、『可愛いね』って、笑い合いたいです。私、あなたに迷惑かけません。欲しがりません。高い買い物だって、強請りません。お食事だって、みんなは『奢られて当然』って言いますけど、私は割り勘が良いです。二人の未来の為に、お金は必要ですよね? ・・・・え? 『結婚はまだ早い』、ですか? そんな事ないです。私、あなたと結婚しますから。これは絶対です。約束ですよ? そうだ! ひなくんが18歳になったらすぐに結婚しましょう! 式も挙げましょう!! 私、ドレスが良いかな? あ、でも、和装もいいですね! 私ね、結婚したら決めてる事があるの。些細な事なんだけどね? 私、毎朝あなたの為にお味噌汁を作るわ。あなたの好きなもの、好きな食べ物、たくさん作ってあげる。カレーとハンバーグ。大好きでしたよね? ふふっ♪まだまだ子供っぽいですね♪♪ ・・・・あぁ! バカにしてるんじゃないですよ? ただ、『可愛いな~』って思ったんです。あ、そうそう! 子供と言えば、ひなくんは何人子供が欲しいですか? 『サッカーチームが作れるくらい』なんて言う人もいますけど、さすがにそれは厳しいかな? あ、でも、セックスは毎日でも出来ますよ? はしたないって思うかもしれないけれど、あなたと身体を重ねるだなんて、私、幸せ過ぎて涙が出ちゃいます。・・・・あぁ、話を戻しますね? それで、私は男の子2人に女の子1人が良いです。『一姫二太郎』。良いですよねぇ。子供が産まれたら、犬を飼いましょう。大型犬なんてどうかな? 小さい頃は『家族』として、少し大きくなったら『親友』として、そして、いつか『生命』の大切さを学ぶの。犬を飼うって、とっても価値のある事だと思うの。・・・・あぁ、私、犬派なんですよ。『なんで』、ですか? 決まってるじゃないですか! ひなくんが『犬』だからです。あ、もしかして、嫉妬しちゃいますか? 大丈夫ですよ! 私が好きなのはひなくんだけです!! どうですか? 嬉しいですか? 嬉しいですよね?? 」
「なんで、私がひなくんの事が好きなのか、ですか? えっと、少し恥ずかしいですね・・・・。小学生の時ですね。私、牛乳が苦手で。お腹が痛くなっちゃうんです。そうゆう人もいますよね? それで、いつも残してたんですけど、先生に言われたんです。『お前は苦手な事から逃げてばかりでいいのか』って。熱血教師でしたからね。まぁ、正論ですよね。でも、私はすっごく傷付きました。知ってますか? 正論なんて、他人を傷付けることしか出来ないんですよ。だから、何日かは我慢して飲んでたんです。でも、しばらくして、私、遂に吐いてしまったんです。『汚い』『汚い』みんなに責められました。酷いですよね。傷付きました。何より辛かったのは、私に『牛乳を飲め』って言った教師が嫌そうな顔をしてるんです。これって酷くないですか? 私、『もう学校行きたくないな』って思いました。子供心に、とても辛かったんです。本当に・・・・。でもね、1人だけは違ったんです。ひなくん。あなたです。あなたは、いつの間にかバケツいっぱいに水を入れて、雑巾を持ってきてくれたんです。誰もやらないのに。1人でせっせと拭きだしたんです。『汚いからいいよぅ、私がやるよ・・・・』って言ったらね? なんて言ったと思います?? 『汚いから拭いてんだろ』って。一番酷いですよ。泣きそうでした。と言うか、泣きました。でもね、この話には続きがあって、その日、私が帰ろうとした時、急にひなくんが話しかけてきたんです。『今度は何を言うつもりなんだ』って思いました。そしたら、『お前、明日から僕に牛乳くれよ』って。びっくりしました。満面の笑みで言うんですよ? 『こいつは何を言い出したんだ』って周りもザワザワし始めて。それで、続けて言うんです。『お前牛乳飲むの嫌いなんだろ? 嫌いな事続けても意味無いじゃん。別に牛乳飲まなくったって死にやしないよ。な? な?? 無理するくらいなら好きな事しようよ。よし! 約束な!! 』って。その時は、『変な子だな』って思っただけなんですけど、それから段々あなたの事が気になる様になってきて、次第に目で追うようになって。一緒に帰るようになって。それから、気付いたんです。あなたの優しさ。あなたの自由さ。あなたの魅力。あなたに惚れている、私に・・・・。私、たくさん努力しました。ひなくんが好きになってくれる様に。ひなくんが振り向いてくれる様に。そして、日々実感していきました。私、どんどんひなくんの好みに近付いてる。ひなくんの理想の女の子になっている。だって、ひなくんチラチラ私の方を見つめる様になりましたから。気付いてましたよ? それで、中学生になって、私、ひなくんに告白したんです。それでね、ひなくん、私の告白にOKしてくれて。嬉しかったな~。幸せだった。きっと、これからもこの幸せは続くんだろうなって、思いました。どうですか? 何か、思い出し、ませんか・・・・? 思い出してくれたら、嬉しいな。私、ひなくんの事大好きだから。大好きなんです。大大大大好きです。」
「でも、あの日」
「あの女が現れた。」
☆☆☆
目を覚ますと、マリアと源太先輩がいた。
「ワンコくんはッ!? 」
「うわっ!? 」
突然大声を出した私に、2人は驚いてしまいマリアは尻餅をつきそうになっていた。
「会長、落ち着け、深呼吸をしろ」
「そうだよ、それから、ちゃんと説明して」
ゆっくりと息を吐き、深呼吸をした。
「ごめん、なんでもないんだ・・・・」
「私に、言えないの? 」
「うん、そうだね・・・・」
彼女達を巻き込む訳にはいかない。
巻き込めば、きっと2人を不幸にする。
「そっか・・・・」
「ごめんね? 」
マリアはとても悲しそうな顔をしている。
ごめんね。
これは、私の。
私達の問題だから。
気付くと、空から雨が降り出し、雷も鳴り始めた。
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