2話 世界の法則
「そうか、俺は死んだ……のかな?」
これまでの出来事を思い出した夜雲は、今居る場所について考えた。
辺りいっぱいに広がる真っ白い空間。それがどこまでも続いているように見えるこの場所と、今までの出来事を踏まえて考えた結果
「ここは死後の世界ってことかな?」
と結論した。
しかし、それがわかったところでこれからどうしていいかわからず、その場から動けずにいると、後ろから声が聞こえた。
「上杉 夜雲さんですね。お待ちしておりました」
声の聞こえた方に振り向くと、そこにはバスケットボールくらいの大きさの光の玉が浮いていた。
そして、聞こえてきた声は男や女、子供や老人と言われても通じそうな不思議な声をしていた。
「今声をかけてきたのはその光の玉だよね?」
「急に声をかけて驚かしてしまったのなら申し訳ありません。確かに、今君に話しかけたのは私です」
そう言いながら夜雲の目の高さまで浮上した。
「自己紹介がまだでしたね。私の名はフラカン。これでも一応神です」
光の玉の光が少しだけ強くなり、明るくなった。その姿はまるで誇らしそうにしているようだった。
そんな風に見えた夜雲だが、そのことは口には出さずにいた。
そして、目の前に浮いている光が玉が神だとわかってもあまり驚かずにいる自分に、逆に驚いていた。
「あまり驚いていないのですね」
「これでもだいぶ驚いているんですけど……。それにしても神ってみんな光の玉なんですか?」
「はい、そうです。神は実体を持ちません。故に神は皆このような光の玉をしています」
「なるほど、そうだったんですか」
「君の疑問も解けたところなので、そろそろ本題に入りましょう」
フラカンは声を少し低く、真面目な声でこう言った。
「本題とは、君がここにいる理由についてです」
「……っ‼︎」
そう言われた瞬間、夜雲は体全体に電流が走ったような緊張に襲われた。
なにせ、気がついたらこの場所にいて、今までここがどこだかもわからずにいたのだから。
「最初に言っておきましょう。君はすでに死んでいます。あの事故によって君は引かれて死にました。そのとこは覚えていますか?」
「はい。俺はあの時トラックに引かて意識を失いました。その後、目が覚めたらこの場所にいました」
「そう、君はあの時に死にました。そして、本来なら死んだら死後の世界に向かうことになるはずだった」
「本来なら? ってことはここは死後の世界ではない?」
ここが死後の世界だと思っていた夜雲は、余計に謎が増えるばかりであった。
「そう、ここは神の間。あの後死後の世界に向かうはずだった君をここに呼んだのは私が力を使ったためです」
今の説明でここにいる理由はわかったが、なぜここに呼ばれた理由がわからずにいた。
「その顔はなぜここに呼ばれたのかわからないって顔ですね。なぜ君をここに呼んだかと言うと、私が君に興味を持ったためです」
「俺に……ですか?」
今までの人生、何もかもが普通であったため、興味を持つところなんてどこにもないと思っている夜雲は、余計に謎が増えていった。
「そう、君に。君は死ぬ前に1人の女子生徒を助けていました。私はそのことに興味を持ちました」
「そんなことは誰にもでもできますよ。あの時はたまたま俺が助けただけです」
「君は『世界の法則』を知っています?」
「『世界の法則』ですか?」
そんなのは学校の授業でも習ったことはなく、聞いたこともなかった。
「ではここで一つ質問です。なぜ、生き物は皆死ぬのでしょうか?」
「それは……」
いきなりの質問、それも哲学みたいな質問だったため、答えられずにいた。
「この質問では分かりづらいですね。では改めて、寿命とは何でしょうか?」
さっきとあまり質問の内容が変わってないが、寿命とは何かと前にテレビでやっていたのを見ていた夜雲は今回の質問に答えることができた。
「寿命とは、生命が生存できる期間のこと。それか、あらかじめ決められたと考えられている命の長さのことです」
「そうですね、その通りです。では、どうやって命の長さを決めるのでしょうか?」
「それは、あらかじめ決められてるとしか……まさか⁉︎」
その時、始めてフラカンが言おうとしてることを理解した夜雲は、もしこのことが本当ならとんでもないことではないかと感じた。
「そう、そのまさかです。人の命……いえ、生き物すべての命はこの『世界の法則』によって決められます」
今回は豆知識と裏話の両方です。
本編で夜雲も言っていた通り、寿命とは「生命の存続する期間。特に、あらかじめ決められたものとして考えられる命の長さ」だそうです。後半は多分物体とかの寿命のことだと思いますが、本編ではこれを『世界の法則』として活用しました。
また『世界の法則』のルビですが、『世界』は普通の和英・英和辞書に載っている『world』ですが、『法則』は機械工学の和英・
英和辞書に載っている『formula』を使いました。
普通の和英・英和辞書に載っている法則(law)の読みでルビ振ると『ワールドロウ』になってしまい、変だと思いましたのでネットで探していたら、機械工学の和英・英和辞書の『法則』の読みが見つかり、こちらを採用することにしました。
次の投稿は11/12(土)19時頃投稿予定です。
ご視聴ありがとうございました。