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悲しみの色  作者: 冴河冴
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だけど だけど だけど だから

「最後の歌」


いつからか

自分の言葉が出てこなくなって

文字を書くのが苦痛になって

無理に書いた言葉は歪んで


何故書いていたのだろう

何のために書いていたのだろう

それさえ忘れて



言葉を奪われることが

これほど辛いものだとは思わなかった

思いを伝えられないのが

これほど苦しいものだとは思わなかった



いつまでも

響いていたはずの歌

ある日急に聞こえなくなって

耳を済ませて聞こえたのは風の音


誰が歌っていたのだろう

どんな思いで歌っていたのだろう

それすらわからなくて



支えてくれていた人がいなくなることが

これほど悲しいなんて知らなかった

いつだって名も知らぬ誰かに

支えられてるなんて知らなかった



「暗闇」


私は暗い闇の底

溺れてもがいて

落ちて 沈んで


悲しみの音が響いてる

誰かが泣いて

私も泣いて


ゆっくり涙が溶けていく

あふれて拭って

こぼれて流れて


さしのべられたその手さえ

拒んだ私

深みに落ちた



私は暗い水の中

ゆらゆら うごいて

ゆっくり 沈んで


泣きたいほどの空の色

水面(みなも)のむこう

月が きれいで



「だけど だけど だけど だから」


耳を塞いでも聞こえる

悲鳴と罵声


息を止めてもわかる

血のにおい


肌が焼けるかのような

灼熱の中


目を閉じているはずなのに

手に取るようにわかる 目と鼻の先の惨状

心が 身体が 覚えている 凄惨な現状


だから俺は 

走って 走って

走って

走って逃げて


逃げたけど 離れられなくて


だから一人 閉じこもって

独りで ふるえて

涙を 流して

全部 忘れようとして


だけど


だけど

だけど


俺の壊したものは 壊れたままで 


俺が傷つけたものたちは 血を流し続けていて



犯した罪は そのままで



泣いても

叫んでも

走っても

時が流れても


意味はなくて

変わらないままで


目を閉じても

耳を塞いでも

息を止めても


忘れられなくて

確かにそこにあって


してしまったことを、今更悔やんで

忘れようとした自分が、憎くて



心が 痛くて


許して ほしくて



変わろうって、決めて



謝ったって 悲鳴は止まない

悔やんだって 血は止まらない


だけど

だけど

だけど


だから



変わるって決めた



目を 開けて

声を 聞いて

息を 吸って


全てを、この手で、この目で、確かめて



逃げちゃだめだから

逃げちゃだめだから




「ひとり」


いつもいじめられている

あいつは一人

あいつは独り


淋しがり屋で自虐的で

みんなに嫌われているけど

変わるそぶりは微塵も見せない


避けられてシカトされて

殴られて『菌』と呼ばれて

頼れる人は誰もいなくて

先生からも相手にされない



きっとかわいそうな子なんだろう

ねえ、やめようよ



そんなことは誰も言わない

だって自分の身に降りかかることじゃないから



今日もいじめられている

あいつは一人

あいつは独り


僕は今日も歌ってる

僕はひとり

僕はひとり

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