身果
体は地面に押し付けられて
酸素を吸う事を否応なしにされる
神秘だった感情はケミカルに彩られ
浮足立った理性は自然に淘汰されていく
アルジェブラの名の元に赤い果実を落とす神はとても美しい
等式の向こう側にいるのは誰だい
廻る日じゃなく針の回転で生きる事を覚えた僕は
机の上に開かれた本のページの上に染みを作る
その滴は広がり続け自分の主張を語ってやまない
表で誰かが呼んでいる、行かなくちゃ、逃げなくちゃ
僕はその場を後にして深く汚い肥え溜に身を投げ入れる
でも
その身を穢れの底なし沼に窶したとき、浸したとき
僕は確かに気が付いたんだ
ああ、やっぱり綺麗ごとの方が美しい、だって綺麗なんだもの
そんな事に気づいた所で
でももう遅い、僕はここから離れることはできない
もう無理だ、もう無理だ、消化試合だお終いだ
そんな声も枯れて考えるのもやめて
僕は暖かくて気持ち良くて、どうしようも臭い液体に身を投じている
それでもどこかで誰かの声がする、起きなくちゃ、生かなくちゃ
僕は手探りで周りを触り、腹に手を遣った時に伸びていた枝は
僕をこれまで生かしていた何か
なんだ、ここまで来たのか
僕がそう、現身の果実
消化試合とは勝者が決まった試合の事を指していうのですが、この場合の勝者とは誰でしょうか。
漱石の第七夜に影響されています。