明日の昨日
「あーあーあー、いーやーだー」
花峰さんが不満を顕著に喚き始めたのは、入学式前日の事だった。
明日から大学生、俺と花峰さんは同じ大学に決まっている。
濃密な高校三年間を過ごした俺達は、とても明日から大学生だなんて思えなかった。
もう仲良かったあいつらと一緒に馬鹿みたいに笑いながら過ごす時間も、無いんだよな。
あの空間であのクラスメイトと授業を受ける事も無い。
休み時間にあいつらと他愛ない話で盛り上がる事も無い。
一緒に弁当食べて、形骸化した部活動の部室で集まって歓談する事も無い。
遅くまで残って帰途に就いて、また明日なって笑いあうことも無い。
休日前には盛り上がって、休日明けには憂鬱になる。
それでも友達に会いたくて学校に通って。
面倒だといくら口で言っても、そんな日々を楽しんでいて。
高校の三年間なんて流れるように過ぎていった。
毎日が楽しくて最高で、絶対に忘れられない日々。
照れくさくて言えるはず無いけど、けど。
俺はあいつらが大好きだった。
「ずっといつまでも、みんなで過ごしてたかったよ」
「……そうだな」
こうやって大人になっていくんだろうか。
いつかまた、今日とは別にあの日々を回顧して感傷に浸ったりするんだろう。
何度でも何度でもやり直したいあの楽しかった日々。
一生、忘れない。