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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

賢帝レイオニアスと正妃

帝国アルスファーナ。

統べる現帝王レイオニアスは齢29歳であったが

270年の永きにわたって続いた戦争を調停させた傑物であった。


それゆえ、各国から後宮へ姫や貴族の娘の斡旋がとどまらなかった。


政治的な意味合いもあり、断れぬ姫は後宮へ招き入れたが

どの姫にも溺れる事なく、淡々と雑務をこなすように接していた。


子供が出来ては面倒くさいのでその辺の処理だけは忘れずに。


ー正直、寵愛をかって贅沢をしよう、

 子供を授かり正妃になろうとする姫達に辟易していた。


そんな中、年も年なので正妃を娶れとうるさくなってきたので

正妃選びもしなくてはならなくなった。


ーまったくもって、めんどくさい。


後宮の姫達は誰もが「我こそが」といきり立ち、

普段にもまして化粧をするようになり、香水の香り

婀っぽい仕草、そのどれもに嫌気がさした。


ー絶対に後宮から正妃は娶れないな。


そこで目を付けたのが永世中立国とし、

270年の永き戦争にもいっさい加担せず

のうのうと存在した国ーレイスー


小さな頃一度だけ、遊覧に訪れた事のある国。

緑の山ばかりで美しい自然しかなく、子供心に目を輝かせた事もあったが、

大人になるにつれ所感は変わっていった。


ー270年間、他国では血を流していたのにー


それをただ傍観した国に、レイオニアスは苛立った事もあった。


自国から正妃を選ぶと派閥争いにもなりかねず

他国から政治的結びつきで自国の利益となれる姫を娶れれば一番よし、

と思っていたが、それはそれで偏った結びつきをしてしまえば

また戦争へと発展しかねない。


それゆえ永世中立国の姫ならば、戦争にいたるどころか

平和の象徴として他国にも迎え入れられそうではないか。

のうのうと平和に暮らしてきた姫とやらに

やっと平和になった我が国へ

どうか嫁いでもらおうではないか。


忘れていた苛立ちが再燃しつつもレイオニアスは

客観的に見て一番良いと思われた正妃選びを

実行に移すべく、部下を呼び手配した。



ー数ヶ月後、あっさりと永世中立国の姫はこの帝国にやってきた。

 一人の侍女をつれて慎ましやかな嫁入り道具とともに。


姫の名はアーシェミリー。

黒い髪に金色の目が特徴的だが

かのレイス国は全員このような配色なので

彼女だけが特別なわけではないらしい。


そういう訳で侍女のレイアもそのような配色であった。


金、銀髪の多い帝国では

まるで夜をまとう二人がそこへ降り立ったかのようで

ある意味目立つ二人組であった。


かくいうレイオニアスの髪は金。目の色は鮮やかな緑で

美姫だった母譲りの美貌を受け継ぎ、国民の若い女性達は

それはもうレイオニアスを熱くしたっている程である。


そのレイオニアスの隣りに並んでも遜色のない

白い抜けるような肌に見慣れぬ黒と金の瞳を煌めかせる

アーシェミリーの美しさは後宮の姫達が一瞬で色あせる程だった。


そのことに、少し気をよくしたレイオニアスは

アーシェミリーに近づき言った。


「俺がレイオニアスだ。姫」


アーシェミリーは驚愕に目をみはらせ

顔をこわばらせたまま、おそるおそる言った。


「私は、侍女のレイアでして、こちらがアーシェミリー様です」と。


隣りの侍女だと思っていた女をみれば

女は別段気を悪くした様子もなく

それどころか口をあけてあらぬ方向をみてぼんやりとしていた。


ーこちらが姫だというのか?!

 なんと凡庸な?!信じられぬ!


一国の姫ともあろう者が、このような場面において

口を開けてあらぬ方向をみているという事態も許せなければ

ここまでフ抜けた王族しかいないのかと

戦争もせず、ただのうのうといきてきた王族はこうも凡庸になるのか?!と

かの国への怒りが途端に再燃した。


自分が姫と侍女を間違えた非すら、

正当化したくなるほどの姫の態度と

それから読み取れるかの国の王族達への怒りで

目眩がしたが


彼は270年の戦争を終わらせた実績と経験をもって

そつなく、非をあやまって、そつなくその場を退場し

ようやく、自室でうなり声をあげ、寝室の枕に八つ当たりをした。


式の日取りも決まり

式の日までなんやかんやと理由をつけて姫とは会わぬようにした。

会ってしまえば、考えてしまえば腹が立つので最善の策だと彼は思った。


式の日、

自国の民は自国の王が正妃を娶ったと、

それもあの永世中立国の姫であることから

平和への希望がさらに強まり

国をあげての祝福となった。


選択は間違っていなかった、と満足した彼だが

今後の夫婦生活をおもえば少々頭が痛かった。


後宮の姫達に辟易している彼は

夜の営みも合わせて

女性と接する事がすでに面倒くさい代物になっていた。


世の女性が思う幸せな夫婦生活はないと、わかっていた。

自分の気性は誰よりも把握している。


それゆえ、彼は新婚初夜に先に言った。


「俺が貴女を娶ったのは平和のためだ。

 今後もその為にあんたには正妃としていてもらう。

 子供も産んでもらおう。

 ただそれだけだ。

 子供が出来そうな周期だけ、貴女の部屋を訪れよう。

 だが子供ができて、一人でも産んでくれたらとりあえず自由を与える。

 また子づくりするまで愛人をこさえてもかまわない。

 だがその愛人と子供だけは作ってくれるなよ。

 わかり次第、堕胎してもらうことになるからな。」


平和な姫への怒りもあったので

我ながらひどい事を包み隠さずいうものだ、と感心した。


しかし、それを言われた姫は

「はい。」とだけいってまた、

あらぬ方向をみてはぼーっとしていた。


レイオニアスはまた猛る怒りを感じつつも

初夜なので仕方なく彼女を抱いた。


彼女が処女だろうがなんだろうが

しったことではない。

挿れて、出して終わりだ。


そこに快楽はなく、ただの義務だけがあり、

翌朝、アーシェミリーの部屋を訪れた侍女のレイアは

アーシェミリーの惨状に悲鳴をあげた。


アーシェミリーは出血がひどく医師の診断が必要だった。


その事に、しまったな、と若干おもったレイオニアスだったが

必要以上の罪悪感はなかった。

手折った花にそれくらいの義務は受け入れろ、とまで思っていた。


そんな夫婦生活が一年すぎようとしたところ

アーシェミリーが懐妊した。


レイオニアスはこの国の為にある営みから

しばらく解放されると心の底から喜んだ。


そしてまた一年経ち、

アーシェミリーが元気な御子を産んだ。

しかも男の子である。

喝采だった。


とにかく、一応礼だけでも言わねばと

必要最低限訪れないアーシェミリーの部屋を訪れた。


大きな寝台の上で上体を起こし

子供を抱いているアーシェミリーと

嬉しそうな侍女レイアがいた。


そして礼を言おうとアーシェミリーを見たとき、

アーシェミリーと初めて、初めて目が合った。


その事にも驚いたが

その普段ぼーっとしている表情がひきしまり

意思のある眉に賢そうに閉じられた口元に

レイオニアスの背筋に何かが走った。


ーこの女は誰だろう


いままでのアーシェミリーには魂を感じた事がなく

それゆえ、存在感も希薄であったが

いまは、美しいとおもっていたレイアでさえかすむ程の

凛とした美貌がそこにあった。


そしてその桜色の唇から彼女から初めて話しかけられた。


「よう、王様。これで私は自由だな?

 約束は守ったぞ。

 とりあえず、この宮ってでていいのか?

 でも、こいつも連れてきたいなぁ。

 ここで育っても弱くなりそうだ」


レイオニアスは

話しかけられた内容にもその口調にも驚きすぎて

すぐ言葉がでなかった。


すると侍女レイアが

「そうですね、アッシュ。とりあえずここから御子を

 お連れする事は難しいかと。

 なぁに、アッシュでしたらたまに街へでるだけでも

 楽しく過ごせましょう。

 ここに拠点を置いた方がきっと色々便利ですよ」


ー拠点?

ますますレイオニアスはついていけない。


「だよな。おっしゃわかった。とりあえずここにいてやるよ。

 ちびも鍛えてやんねーとな! 

 しっかしこの2年弱窮屈だったからな

 かなり体うごかしたいぞ。レイア、後で剣につきあってくれ」


またも苛烈なまでの燃える美貌で鮮やかに微笑みながら

侍女にいう姫を、レイオニアスはただ、呆然と見つめるしかなかった。


「其方は、本当にアーシェミリーなの、か…?」


思わずそう聞いてしまったレイオニアスにアーシェミリーは

金の瞳を輝かせて


「あぁ、そうだ」


「だが、人が変わった様に俺にはおもえるの、だが…」


「あぁ、この柄じゃな、姫ってかんじでもないだろ??

 だから父さんや兄さんから、黙って過ごせっていわれてたんだよ。

 けど黙ってろっていわれても思わず口に出ちゃうときあるだろ?

 そういうのを防ぐ為に極力普段はぼーっとして過ごしてたんだよ。

 子供産んだら好き勝手していいっていったしさぁ。それくらいの期間なら

 なんとかぼーっとしてやり過ごせるだろ?」


そういって笑った彼女は、美しかった。

言葉遣いが粗暴なのに、品がないわけではなかった。

光り輝く何かが彼女にあった。


自分の妃の変わりようについていけないレイオニアスに

侍女レイアがレイオニアスにしかわからない小声でいった。


「今頃、気づいても遅いですよ。

 賢帝、傑物とも言われてもこんなものですね。

 アッシュの事を見ようともしなかった。

 ただ平和な国の平和な姫とでもおもっていたんでしょう?

 レイスという国がどういう国かもしらずに…

 

 あの初夜の翌日、正直、わたし陛下を暗殺しようとおもいましたが

 アッシュに言われて思いとどまりました。

 アッシュは潔く、優しく、そして強い。

 そして素直です。

 

 ふふ…。これから身近で、アッシュの魅力に振り回されるとよろしいです。

 けれどアッシュは忘れていませんよ。

 陛下からもらった言葉や態度を。

 そして私が許しませんから。」


晴れやかな笑みとともにこぼされた内容にぎょっとしたのもつかの間

彼の妻が言った。


「おい、王様。

 愛人ってやつはさ、どこでつくったらいいんだ?街?」


レイオニアスは自分の発言のうかつさに目眩がした。



その後、彼はレイアの言うとおり、妻アーシェミリーに振り回されるうちに

色々な事を知る。


永世中立国レイスの国民全員がその自然を戦争の焦土とかさない為に戦争を放棄し、

またその自然を守る為の武勇に事欠かない強国家であることであったり、


侍女レイアはその国の抱える諜報戦闘部員の最高実力者であったり。


そのレイアよりも強いアーシェミリーにはたびたび、過去を詫び

もう一度夜を、と迫っても返り討ちにあい、


「お前がいったんじゃん!王なら発言に責任をもて

 それに夜お前がしてくる事は嫌いだ。

 痛いばっかりだし、

 あんとき意識をそらしてなきゃ、反射的にお前の首折ってたぞ」


とまでいわれ

賢帝レイオニアスがこれから苦労し

正妃に自分を認めてもらう為に

戦争を調停させるとき以上に四苦八苦するのを知るは

ほんの一握りの者達だけである。

























読みにくかったら申し訳です

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― 新着の感想 ―
[一言] 中立国が如何に「中立」を保つ為にどれだけの労力を払うかも知らずに中立国を侮り、中立国である事に憤ってる時点で、賢帝(笑)ですね
[一言] 初めまして<m(__)m> 面白かったです! 因果応報。芯は強いけど生意気でない女の子♡大好きです。素を出したお后さまと振り回される皇帝。。。 お気が向かれましたら又読ませて下さい!
[一言] 続きが気になります!!
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