現象6 自暴自棄
これを書いてて、昔の自分をみるようでした・・・。
「オマエ、何か怖いぞ」
「あ?いつも通りだけど」
モトキが不安そうな顔でオレを見る。別にオレが自暴自棄になっているワケじゃない。しかしモトキは、オレのここ最近の顔を見てそう感じてしまったようだ。
「そっか、怖いのか・・・。気ぃつけるわ」
放課後になってオレは最近、ある場所へ行くようになった。それは廃工場。他校の不良がよく溜まってるからって、先生たちが近寄るなとギャーギャー喚いてる。
「あーあ、もう死ねよオマエら」
バキィイッ!
「リーダーが・・・、一撃!?」
ドガアァァッ!
オレは楽しい遊びを見つけた、ただそれだけの感覚で不良グループを嬲っていた。学校ではまともな生徒として過ごしているが、蓋を開けたら悪ガキだ。こんな二重人格みたいな性格は、快楽と後悔の無限ループだった。
オレは昔から人付き合いが苦手だ。とくに女子に話しかけられるとすぐに顔が赤くなる。友達は常人よりか少ないし、一人のほうが好きだ。たしか6年前もこんな感じだったかな・・・。
「オマエらジャマだから、死んで」
ドスッ!
「オマエこんなコトして、先生に何言われるかわかったもんじゃねーぞ!」
「知るか」
ドゴォ!
6年前のオレは、今のオレと全く同じだった。学校ではいい子ちゃん決め込んで、放課後になったら、気に入らないヤツを片っ端から嬲りまくるという二重人格を持っていた。
「何かムカツクよね、闇洞って・・・」
「そうそう、真面目っ子でキモイよ」
オレは嬲る対象が女子であろうと関係なかった。オレ以外の人間は、ただの快楽を満たすための道具に過ぎなかったのだから。女子を嬲るのは少々躊躇いがあったが、悲鳴を聞いてそんなのも吹っ飛んだ。
「んま、女子だから5分も持たなかったな。帰るか」
「待てよ、坊主」
その時現れたのは、高校時代の松下先生だった。今と負けず劣らずのイケメンだった。
ザキュゥゥゥ・・・
「がっ・・、何だこれ・・・?」
オレは自分が異能者だったのは知っていたが、他にも自分と同じ人間がいるとはこの時は思ってもみなかった。無論一撃でダウンした。それから先生と師弟関係になり、強くなったのだ。
気が付いたら別の溜まり場で不良と闘り合っていた。ふとそこに、日狩が通りかかってきた。
「アンドーくん、何してるの・・・?」
オレはこんな二重人格を知人に知られるのは厄介だと、日狩と戦闘態勢に入った。
「死ね!日狩流音!」
「白銀の盾、フィグワ・コルドーヌ!」
ガキイイィイン!
そういえば、日狩は魔術師だったっけ。そう、魔術さえ関わらなければオレは、フツーの高校生活を送るコトができたんだ。コイツが線路なんかで倒れていなけりゃ!
「魔術なんてな、人間を不幸にする厄介モノ以外の何もんでもねーよ!」
「アンドーくん、そんなコト・・・」
「あるわボケが!魔術があるせいでオレは多くの魔術師と闘うハメになっちまった!」
そうさ!コイツがいなくなれば、オレは幸せになれるんだよ!
ギュッ!!
「ゴメンね、アンドーくんの言う通りかも。実を言うとアタシ、魔術を使えるようになった時は怖かったんだよね。人と違う世界で生きてるような気がして寂しかった。でもあの線路でキミに会って、同じ人がいるってコトは大きな希望が持てた!嬉しかった、嬉しかったんだよ。だから今度はアタシの番。お願い、自分を嫌いにならないで!」
そっか、今までオレは嫌いな自分を隠すためにこんな馬鹿げたコトをしてたのか。
「何勝手にラブラブ入ってんだ!」
ヤッベ!日狩と衝突した時に超絶欠落を使って、まだ持続してやがった。
「これは友情というのだよ、諸君」
ヴオォン!
松下先生まで出てきた。後で謝ろ。
松下先生はオレのしたコトには何も言わなかった。そしてゆっくりと立ち去った。
「恋人っぽかったぜ、お二人さん」
「違います、コイツはただのダメ人間です」
このツンデレめ、さっきと大違いじゃねーか。
今回の登場人物は紹介するほどでもない人たちばっかなのでしません。