現象5 人殺し
勉強がイヤになって書きました。
例えば、この世界の文明が衰退して原始時代やらに戻ったら人間はどうなるだろうか?と、オレは社会の肯木に聞いて見た。とくに理由はない。ふと出てきた疑問だった。みんなも、こんなコトがあるんじゃないのか?理由もなくイミフな疑問を他人にぶつけてしまうコトが。
「ま、人間絶滅しちゃうでしょ」
ザックリと返してきた。きっと、オレのふと浮かんだイミフな疑問だってわかっているんだ。
「んじゃ、魔術やら異能っていつから生まれたんですか?」
「!・・・それは、僕も知らないな。僕は社会学部だったからね、そういうのは文学部を出てる国語の松下先生に聞いたらどうかな」
肯木は足早に去っていった。とりあえず、松下先生の所へ行くか。
「ふ~ん、闇洞が魔術やらに興味があるとは。ま、オマエも異能者だ。超人的なモノに関心がいくのもわからなくもないが、そんなコト聞いてどうする気だ?」
「松下先生、オレが異能者だってコトはあまり声に出さないでもらえませんか?オレ、こんな力持ってて、魔術師とまで戦ってるんです。魔術師と張り合えるくらいの人間イコール化け物じゃないですか」
この学校でオレが異能者と知っているのは、師匠であるこの松下功治だけだ。松下先生も異能者で、何も無い所に斬撃を繰り出す裂光火剣を持つ。実際には太陽光を集約させて、空間を焼き切るという恐ろしい能力だ。曇りでも僅かに太陽光は入ってくるので基本的に、いつでも撃てるらしい。
「さ、今日も訓練だ!準備はいいか?」
「はい、大丈夫です!」
今日も訓練が始まった。6年前から鍛えてもらっていて、持続時間も7分から10分まで上げるコトができた。しかしこの人は容赦ない・・・。
ヴォンッ!ヴヴォン!
先生はオレが異能を発動させる前に、攻撃してくるのだ。脳の神経伝達より速いもんだから、必死にかわすしかない。体育の成績が悪いのだって、訓練で体がボロボロの状態で受けるからだ。
「一撃必殺の鉄拳を受けちゃってください!」
ようやくスキができて能力を使えるようになった。しかしこれは、先生の作戦。
「発動!細胞強化!」
ドゴォオッ!
「うげぇ、ぷはぁ!」
先生は日本人でただ1人、二つの異能を持つ男なのだ。細胞強化はその名の通り、肉体を細胞レベルから強化する能力だ。
「いでぇ、どう足掻いても・・・。・・・まさかあれ・・・」
「何か嗅ぎ付けられたみたいだな」
訓練中に現れたのは魔術師だった。隣には、肯木がいた。肯木も魔術師だったのか。
「ご苦労だ、212番。用済みだ」
「そん・・」
ブシャァアアァ!
魔術師は肯木を殺してしまった。なんで肯木が魔術師に殺されなきゃならないんだ!
「コイツは魔術師じゃない、人質を使ってオレ様が動かしていたただのカスさ。家族なんか人質にとってみたら、コイツ簡単に下僕に成り下がってくれやがったぜ」
魔術師にはもはや悪いイメージしかないオレは、魔術師を敵視していた。だから今更魔術師が人殺しをしても、何の感情も感じなかった。
「全てを壊す弾丸をこのモデルガンに」
ズガァアン!
魔術師は跡形も無く砕け散った。同時にオレの腕もぶっ壊れた。全てを壊すって言ったし、まあこうなるわな。
「オマエ・・・、大丈夫か?」
「何ですか、アイツは人殺しはよくてオレはダメだってんですか?」
オレはその場を後にした。その日から、先生の訓練に行かなくなった。
今回の登場人物
松下功治(22)...キョーヤの師匠。二つの異能を持ち、生徒や教師からイケメンと評判。何も無い所から斬撃を繰り出す裂光火剣と細胞レベルから肉体を強化する細胞強化を扱う。
肯木(31)...社会の先生。魔術師に家族を人質にとられた挙句、最後には用済みと殺されてしまった。
魔術師(?)...肯木を操っていたが、キョーヤの怒りに触れて瞬殺される。