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現象4 零結凍花

テスト10日前ですががんばっちゃいますよ!

 オレは未だに魔術というモノを信じられない。自身も異能者という、人智を超えた力を持っている人間だとしてもだ。馬術部の一件でオレ以外の人間(勝手についてきた30人近く)は、魔術を完全に信じ込んでしまった。そして魔術の存在を前から知っているオレはそのせいで、友達から距離を置かれるようになった。しかし、モトキとナオキはフツーに話しかけてくれた。

「気にするなよ、あれは単にオマエが魔術を知っていた。それだけなんだからさ」

「でもま、敵の情報を知ってるヤツって大概嫌われるもんだよな。あっ、すまん」

「いいんだよ、魔術を知っててオマエらを危ねー目に合わせたのは事実だ」

でも、こういう時に友達がいるとホント助かる。自分を責め続けなくてすむんだから。

 学校が終わって、オレは駅へ突っ走った。正直オレは豆腐メンタルだ、学校で村八分扱いされるなんて耐え難い。一刻も早く学校を離れて、自分の空間を作りたかった。

「なんか虚しいな。はぁ、どうしたものか・・・」

「何が虚しいの、アンドーくん」

目の前には日狩がいた。とりあえず、胸が近い。独り言聞かれるって、恥ずかしっ!

「魔術師って村八分とか、異端児みたいな扱いを受けるのか?」

オレはさらりと聞く。日狩はこう答えた。

「魔術師に関わらず、魔術を知っている人間ははるか昔から弾圧を受けたわ。今でも、人間の心に魔術を忌み嫌うって感情が残ってると思う。でも魔術は人間を平等にする為に、神様がアタシたちにくれた奇跡なんだよ。それを異端だって思うのは、絶対許せない!人間は幸福をただひたすらに求める権利があるんだから!」

日狩は声を荒げた。そのせいでほかの乗客に迷惑がかかってしまった。日狩は正しいコトを言ったんだが、場所が場所だ。オレのせいだな、うん。

「魔術ならアタシが教えてあげようか?」

「どーも、遠慮させてもらいます」

オレは魔術を信じない派なんだ、魔術を覚えてもきっと使わないだろう。もう魔術関連では関わりたくないからな。

「じゃ、また会いましょ♪」

「ああ」

多分日狩と会うコトもないと思う。

 オレは電車から降りて、真っ直ぐ家に帰った。さすがに初夏だ、6時辺りでも割と明るい。

「もう忘れよう、魔術のコトなんて」

「そうだね、永遠に忘れてしまえばいい」

誰かがオレの心に囁いたと同時に、初夏には似つかわしくない北風が吹く。

「ボクはイタリアイオディラ教会配属魔術師、サーバ・スィレコム。闇洞凶夜、キミを教会の命により抹殺する」

魔術関連には関わりたくないと思った傍から、魔術師が現れやがった。しかも、オレを殺しに来るなんてどういうつもりだ?オレは魔術師じゃない、ただ魔術を知っているだけなんだぞ!

「オレがいつ教会の気に障るようなコトしたのかな?してねーだろ、そんなコト」

「いや、キミは重大な罪を犯しているんだよ。日狩流音を知っているね?キミは彼女を教会の刺客から守ったそうじゃないか。この行為が韓国やら中国なんかなら、何の問題もない。しかし日本は、古くから多数のイタリア教会と関わってきたんだ。そのイタリア教会の敵であるフランス教会の魔術師を守った、どうなると思う?」

言うまでもねえ、敵側の人間を庇ったから重罪人だ。そういうコトだろうが・・・。

「罪人に苦悶の息吹を!はああぁっ!」

ビュオオオァッ!

魔術師が指差した途端、オレに向かって突風が吹いた。オレはそれに吹っ飛ばされる。

「うおおっ!」

相手が魔術師である以上、攻撃方法は魔術が中心になる。つまり、オレの異能チカラが活かせる!

「もう一度喰らって、死ねぇ!」

「いかなる突風にも動じない、強靭な肉体を、今ここに体現する!」

ビュウウウウウゥウ・・・・

オレの体はさっき飛ばされた位置から全く動かない。オレの異能はやはりスゲエ。

「くっ、魔術を無効化する力か!」

オレは魔術師に突っ込んでいった。持続時間が10分という心ない制限があるのだ。日狩が魔術を使った時は無意識だった。オレの異能は無意識でも発動するが、その場合は成功率が5割で持続時間が1分も持たない。つまり、オレの異能は短期決戦でないと不利になる。

「キミはさっきの風をただの突風と勘違いしているようだが、体を見てみろ」

体を見ると、なんと体が凍り始めているのだ!徐々に神経も麻痺っていく、そしてオレの異能の最大の弱点があらわに・・・。オレの異能は一度使うと持続時間が切れるまで使えなくなるのだ。

「くそぉ、マジで凍死するぞぉ・・・。初夏で凍死なんて有りえねーよぉ」

「くははは、キミは何もできずにただ凍っていくんだ!そしてボクは身分を5級魔術師から4級魔術師に格上げされるのさ、キミには感謝してるよ!」

そして4分後、体が完全に凍った。が、オレは死んでいなかった。否、凍ったのが皮膚だけで内臓や脳はまだ凍っていなかった。残り後1分、それまでに脳が凍ったらマジで死ぬ。

「さてと、教会に連絡入れないと」

「待てよ、冷凍野郎。オレは、ピンピンしてるぜ」

間に合った、脳が凍らずに済んだ・・・。オレは凍りつかない肉体を体現するコトに成功した。

「お引取り願おうか、魔術師!」

ズダァン!

オレはモデルガンを、魔術師の眼球にぶっ放した。ここだけの話、殺傷力はなくても相手を失明させるくらいの威力はあります。

「そうか、このボクに本気マジでやれと言うのか。くはっ、いいだろう!キミを今ここで!徹底的に実力を見せつけて!何も感じぬまで凍てつかせて殺してやろう!」

魔術師は手を大きく広げ、空を見上げた。

「ゆけっ!新緑の氷柱、零結凍花ハムルエナ!」

パキキキャキャキャァ!

オレめがけて氷柱が落ちてきた。辺り一面白銀のゲレンデになった。しかし、今のオレには何の効果もなかった。

「だからさ、オレは人智を超えたモノ全てを体現できるんだっての。おわかりで?」

バァン!

もう一方の眼球もぶち抜いてやった。両目を潰されたショックで魔術師は気絶した。

 気が付けばもう7時、晩飯の時間だ。今日はいっぱい動いたから腹減ってんだぜ~。

「んっがんが、うめぇ!さすが祖母ちゃん、この親子丼でらウマっ!」

オレは今日あったコトを忘れそうな勢いで晩飯を食べた。が、日狩のコトが心配でならなかった。

(アイツ、あんなヤツらと戦ってあんな目に。それなのに、オレは・・・)

オレは晩飯を食った後、風呂も入らずに寝た。




今回の登場人物

サーバ・スィレコム(19)...イタリアのイオディラ教会の魔術師。弱冠19歳にして、凍結魔術を使いこなし5級魔術師になった天才肌。キョーヤを凍らせるまでに追い込むが、超絶欠落の再使用で両目を潰され敗北。

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