現象15 招集
もう少しで年が明けますな。こんな時くらい、コーラ一気飲みしても罰は当たらんでしょうww。
能力者英雄杯、年に1度の最高10億というふざけた金額を賭けて、世界中の異能者や魔術師なんかが競い合う盛大な大会だ。今年はここ東京で行われるらしく、参加者は大会の主催者権限(?)により有給休暇扱いになる。オレたち(兄貴以外)はこの大会をGのはからいで参加できるコトになった。
「そうそう、ルノンってコも参加してるよ」
G、いくらアンタと当たっても勝つ自信あるよ。って、ルノンも!?この大会に参加してるのか!?
「でもま、賞金10億に相応しいくらい過酷だから。覚悟するんだね」
ご忠告どーも。
「おっ、このビルみたいだぜ」
「昭和臭プンプンですね」
狛江第3ビル、今日の大会の予選会場だ。中に入るといっぱい人がいる。コレ全員参加者、というワケでございますか。
「ようこそお越し下さいました。この大会で実況と司会を務める、Dと申します」
Gの次はDかよ・・・。イニシャルで名乗りたいヤツ多すぎだ、どんだけ個人情報漏らしたくないんだよ。
「それでは1次予選、『バルーンデストロイア』を開始します」
会場中がざわめく。何かカワイイな、でもデストロイアって、等々様々な呟きが飛び交った。
「ルールはSimple is the best、参加者には2つの風船を付けてもらい、互いにそれらを割り合う。
それだけでございます」
「そんな単純なハナシじゃねーぞ、このゲーム」
先生がオレに話しかけてきた。確かにそんな単純なゲームに10億なんてふざけた金額が出るハズないか、ロードも顔をしかめて話を聞いている。
「あと風船2つとも割られた方は、早目に報告をお願いします。報告が遅れた場合、それなりの制裁がくわえられるコトになりますので」
それなりって、おいおいもしかして・・・。
「いくつかの方のお察しの通り、命が消え失せるコトになります」
カッ
奥の方の電気が強い光を放った。下には等身大の人形があり、イスに座っている。
「例えば風船が全て割れてしまった場合、このDめに30秒以内にこのケータイで報告しなければ、予めケータイに仕掛けておいた爆弾で・・」
ズドォン・・
死ぬというコトか。恐らく、発信機も付けられているハズだ。仕掛けたのはDで間違いない。
「それではルール説明が終わりましたので、何か質問はございますか?」
みんな縮こまっている、まぁ命が懸ってるからな。
「制限時間は?それと2次予選に進める人数も教えてくれ」
「制限時間は6時間、2次予選に通過できるのは300人中、200人です」
「なるほど、わかった」
オレの読みが正しければ、2次予選に通過できるのは半分以下だろう。生き残った人数を知る由もない上に、Dに監視されているから助けを呼ぶコトもできないハズだ。しかし待て、この中に遠距離で情報を得られる能力を持つヤツがいたら・・・。確実にソイツの勝ちになる・・・!
「おっし、6時間後に生き残ってたらまた会おうぜ」
「先生は気楽ですね。私とキョーヤはビクビクしてるのに」
ホント、先生の肝据わり過ぎだよ。
「それでは『バルーンデストロイア』、開始です!」
オレはこの時、まだ知らなかった。Gの言っていたコトの本当の意味を。
今回の登場人物
D(?)...能力者英雄杯で司会と実況を務めている人間。声からして男性らしい。人より法が上位と考えている節があり、ゲームのルールをとても厳しくしている。