現象14 勧誘
冬休み突入ヤッホーイ!
兄貴が家に帰ってきてから、毎日能力の訓練が続いている。先生と兄貴は先輩後輩の関係で徹底的にオレを虐め倒してくる、性質の悪いドSコンビと化した。ロードも加わり、魔術に対する訓練も行われた。
「今日は遠距離戦闘の訓練だ。今まで近接戦闘を主にしてきたが、遠距離からの攻撃の対策や遠距離攻撃を身につけるコトも重要だぞ」
「オッケー」
今日は一対一でやっていくみたいだ。実は兄貴は遠距離戦闘が得意ではない。とか言ってるオレも、遠距離の戦闘は不得意だ。
「キョーヤ、加減はしませんよ」
「加減なんてしねー方がいいぜ」
ジャララララァッッ・・・・
「まずは飛火虫!」
「おっとぉ、怖えなコノヤロ」
今日は遠距離戦闘、遠距離系統の武器を使わねーと話になんねえ。
「いっくぜぇ、バズーカ砲だぜクォラッ」
ドゴォオン!
バズーカ砲は遠距離砲撃の中で高レベルの威力を持つが、その分反動が大きい。その証拠に撃ち終った後、すぐに転んでしまった。
「科学の力とはスゴイモノです、蓮伯羽織を所持していなければ跡形も残っていなかったでしょう」
魔術はもっとスゴイよ、ロード。そんな布切れでバズーカ砲が防げるんなら大半の兵器敵わねーよ。
「もう1発放つぞボケ!」
ドガァアアアン!!
「ではこれはどうですか?それっ!」
ロードが針を刺しまくったお手玉を、真上に高く投げた。
「東洋日系魔術、金鴎!」
ジャキィイインッ!
マジかよ、急に針がでっかくなって伸びてきやがった。バズーカ砲は手放すしかない、針の伸びる速度が異常に速い!
バギャアァン・・
「日本というのは、古くからモノに神が宿っているという信仰があるのはご存知ですね?だから魔術も使われなくなったモノを利用して、最大限の力を発揮する。これが東洋日系魔術の原理というワケで、もっともエコロジーな魔術です」
エコとかそういうお話は、コンビニ前でたむろしてる不良どもに聞かせてやりたいね。
「つーかいいのか?エコとか言ってるなら、ここまで無差別に森を壊しちゃダメだろ」
「あ、それなら」
ロードはポケットから、一握りの枯れ草を出した。
「東洋日系魔術、縁棚」
ポポポポポ・・・ポン!
枯れ草を植えた途端、土から大量の若葉が芽吹いた。土は命の塊、新たな命を与える母体。そんなコトを感じた瞬間だった。
「今日は止めましょう、森をこんなにして・・・バレたら刑務所行っちゃいますよ」
ロードは苦笑いした。兄貴たちも練習を終えたようで、こっちに来た。
「今日は終わりだ、オレと先輩は飲みにいくから先帰れ」
「「はーい」」
また飲むのかアンタらは。ロードは足早に帰っていった。
夜の1時頃、オレは夢の中で深層意識の中にいた。
「やぁ、これで2度目だね」
またオマエかとツッコミを入れる。
「今日はお客さんを連れてきたのさ」
客?おいおい、人の心の中に不法侵入させんじゃねーよ。
「邪魔するぜ、キョーヤ」
「こんばんは」
ロードと、先生?
「キミのお兄さんは泥酔状態で深層意識に入れなかったんだよ」
あのバカ、恥かかすんじゃねーっての・・・。
「Gさんは他にどんな人の深層意識へ入ったんですか?」
「うーん、浅田姉妹やらイチローやら・・」
有名人のオンパレードだなおい。
「有名人って苦悩の日々みたいだね。深層意識真っ暗だったもん」
そりゃそーだ。
「あと、ルノンってコの意識にも入ってみたよ」
えっ?その・・どんな感じだった?
「深層意識は桃色がかってて幸せそうだったよ。きっと、いいコトがあったんだろうね」
うおおっ!関係が進展したおかげかなぁ!?なははははは!・・・あ。
「キョーヤ、ルノンと進展したってどういうコトですか?詳しく話してもらえますでしょうか?」
「はぁ、醜い三角関係ができちまったぜ」
ドドドドオドドドドオドドドオドドッドドドドドドドド・・・・・・・・・・・・
本音と建前は上手く使い分けましょう。
「そうだ、今週は能力者英雄杯がこの街で行われるんだけど、キミたち行かない?」
随分と盛大そうな大会だな。
「そりゃそうだよ、何たって賞金が最高10億だからね!」
なっ、10億!?
「10億って一生遊んで暮らせる金額ですよ!」
ロード興奮しすぎ、と言ってるオレも大興奮!
「最低でも2億なんて、こんなすごい大会ないでしょ?」
おい、どうすりゃ参加できる!?
「参加するんだね?じゃ、手続きはワタシが済ませるわ。もしかしたら、ワタシと当たるかもね」
「「「望むところ!」」」
オレたち(兄貴以外)は能力者英雄杯に参加するコトにした。
今回の登場人物
能力者英雄杯...年に1回どこかの国の首都で行われる、能力者同士の最高10億の賞金をかけたバトル大会。最低でも2億というゴールドラッシュの大会。