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サイレントはお好きですか? ~押し付けは美徳ですわ~

掲載日:2026/08/02

ようこそ、『サイレントはお好きですか? ~押し付けは美徳ですわ~』へ。


この物語の主人公、リリアーナ・フォン・クロイツは、悪役令嬢です。


ですが、婚約者をいじめたり、ライバルを陥れたりするような、よくいる悪役令嬢ではありません。


彼女が何よりも愛しているもの。


それは――利益です。


彼女が何よりも嫌いなもの。


それは――責任です。


世界を書き換える力『Silent』を手に入れた彼女は、その力を世界平和のためではなく、自分だけが得をするために使います。


責任は押し付け。


契約書は相手が読まなかったのが悪い。


好感度は利益にならない。


周りがどれだけ困っても、王国が大混乱になっても、彼女は今日も紅茶を飲みながら一言。


「それ、あなたのお仕事ですわ。」


なお、この作品に登場する組織や人物、魔導商会、ドラゴンの素材、ストレスでハリネズミになる部長などは、すべてフィクションです。


……たぶん。


肩の力を抜いて、「こんな悪役令嬢おるか!」とツッコミながら楽しんでいただければ幸いです。


それでは。


世界一、好感度の低い悪役令嬢の物語をお楽しみください。

リリアーナ・フォン・クロイツには、信念がある。


自分が困る未来だけは、絶対に書き換える。


他人?


知らない。


「お嬢様!大変です!」


執事が魔導伝票を抱えて飛び込んできた。


「どうしましたの?」


「魔導伝票の内容が全部違います!」


「そうですの。」


「送り先が魔王城です!」


「そうですの。」


「数量が一万箱です!」


「そうですの。」


「商品名が『よく分からない何か』になっています!」


「そうですの。」


「誰が作ったんですか!」


リリアーナは紅茶を飲みながら答えた。


「わたくしですわ。」


「でしょうねぇぇぇぇ!!」


その頃。


魔導商会の営業は王都中を走り回っていた。


「申し訳ございません!」


「その伝票は燃やしてください!」


「いえ!その前の伝票です!」


「いえ、その前の前です!」


「最新版は今飛んでおります!」


伝書フクロウが二百羽。


空を埋め尽くしていた。


ピコン。


リリアーナの前に管理画面が現れる。


Silent


魔導伝票修正回数


1回 → 58回


「キリが悪いですわね。」


59回にした。


営業は白目をむいた。


数時間後。


王国商業ギルドから黄金のフクロウが飛んできた。


『貴商会の伝票が毎回違います。

ちゃんとしてください。』


執事が恐る恐る差し出す。


「お嬢様……。」


リリアーナは一秒で返信した。


『意味がわかりません。』


さらに続ける。


『契約書は読みましたの?』


最後に一文。


『そちらのお仕事ですわ。』


黄金のフクロウは、ため息をついて飛んでいった。


「お嬢様!!」


工場長が飛び込んできた。


「ユニコーンの角がありません!」


「市場で買ってください。」


「市場にもありません!」


「ドラゴンの鱗もありません!」


「探してください。」


「発注したの昨日ですよね!」


「そうですの。」


「三か月前から予約が必要な素材です!!」


「そうですの。」


「間に合いません!」


「それは商人のお仕事ですわ。」


工場長は床に崩れ落ちた。


さらに悲劇は続く。


魔導倉庫。


巨大な水晶が在庫を管理している。


しかし表示は、


在庫


???


ERROR


魔力不足


「お嬢様……。」


「何ですの?」


「何があるのか分かりません……。」


「確認してください。」


「十万点あります!!」


「頑張ってください。」


「何年かかるんですか!」


「努力不足ですわ。」


そこへ、天敵。


王国最大商会の部長が現れた。


身長二メートル。


筋肉隆々。


怒ると雷が落ちると言われる男。


「リリアーナ様。」


「何ですの?」


「発注してくださいと三か月前から申し上げましたよね?」


「そうですの。」


「なぜ昨日なんですか?」


「昨日、思い出しましたの。」


部長は深呼吸した。


「在庫も管理されてませんよね?」


「そうですの。」


「納期も守れませんよね?」


「そうですの。」


「それなのに全部こちらの責任ですか?」


「そうですの。」


部長の頭から煙が出始めた。


「限界です……。」


ボンッ!


部長は怒りのあまり、


ハリネズミになった。


「部長ーーー!!」


医者が駆けつける。


「重度のストレス性ハリネズミ化です。」


「一週間ほどリンゴしか食べられません。」


その頃。


リリアーナはSilentを開いていた。


責任


リリアーナ 100% → 0%


商人 0% → 100%


クレーム件数


20件 → 200件


リリアーナの仕事


100件 → 0件


他人の仕事


200件 → 5,000件


「完璧ですわ。」


その瞬間。


画面が赤く点滅した。


警告


他人へ押し付けすぎです。


リリアーナは迷わず設定を変更する。


警告表示


ON → OFF


「静かになりましたわ。」


執事が震えながら近づいた。


「お嬢様……社員の皆様が泣いております……。」


「そうですの。」


「営業も泣いております……。」


「そうですの。」


「部長はハリネズミになりました……。」


「そうですの。」


「何か思うことはありませんか?」


リリアーナは少し考えた。


「……。」


執事は期待した。


「……。」


リリアーナは優雅に微笑む。


「では、その件も。」


執事は嫌な予感しかしなかった。


「あなたのお仕事ですわ。」


王都中に絶叫が響いた。


一方その頃。


Silentの画面だけが、静かに新しい通知を表示していた。


世界の好感度


0% → -12%


リリアーナは首をかしげる。


「マイナスにもなりますの?」


そして今日も、誰よりも早く定時で帰宅した。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


ここまで読んでくださったということは、きっとリリアーナのことを好きに……


……なっていませんよね。


それで正解です。


この作品は、「応援したくなる主人公」を目指していません。


むしろ、「なんやこいつ!」「最低や!」「また押し付けとる!」と笑いながら読んでいただけたら、それが一番の褒め言葉です。


リリアーナは反省しません。


成長もしません。


責任も取りません。


困ったら『Silent』で書き換えます。


怒られたら「意味がわかりませんわ。」


契約書を見せられたら「読みましたの?」


仕事が増えたら「あなたのお仕事ですわ。」


そして、どれだけ世界が混乱しても、彼女だけは今日も定時で帰ります。


そんな、とんでもない悪役令嬢を書いていると、「次は何を書き換えようか」と考えている作者自身が一番楽しんでいました。


次のお話では、きっとまた誰かが胃を痛め、誰かが泣き、誰かがリリアーナのせいで振り回されることでしょう。


でも安心してください。


リリアーナだけは、いつも通りです。


それでは、また次のお話でお会いしましょう。


最後に、リリアーナから読者の皆様へ一言。


「最後までお読みいただき、ありがとうございました。感想は歓迎いたしますわ。ただし、苦情は担当者へお願いします。」

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― 新着の感想 ―
やっぱり変わらなかったか~。この方が変わる日はきっと来ないのですね、永遠に。 ……こうなったら行き付く所まで逝ってしまいましょう(この字であっているはず) ストレスでハリネズミになるんだ。次は誰が…
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