祇園祭の異世界み
暑いし、今年は行かんとこうかな……
そう思いながらも、毎年向かってしまう先。それが祇園祭である。
この時期、「行かなければならない」とプログラミングされているのだと思う。きっと、そんな人は少なくないはず。
そこまでして行く理由。
それは、「粽」。それだけである。
粽は、飾るだけで基本装備「厄除け・疫病除け」の効力が現れ、あとは鉾によって異なる特殊能力「商売繁盛」「開運」「夫婦円満」などがその力を発揮するありがたい物である。
とにかく、この時期の地元民は粽を求めて右往左往している。
当然、私もふらふらと夕方の四条通へと足を運んだ。
祇園祭の楽しみ方は二種類あると思っている。
一つは、繁華街の大きな通りを通行止めにして昼間に行う「山鉾巡行」。ダイナミック。
もう一つは、山鉾巡行前日の「宵山」、さらに前日の「宵々山」に出る夜店とライトアップされる鉾。ファンタスティック。
しかし、この日はまさに地獄である。人だかり地獄。気温も湿度も高いし、その人いきれは、むせかえるほど。とても、粽を販売している鉾近くのテントまで辿り着けない。
そこで私、近年は「宵々々山」「宵々々々山(正式には引き初め)」の粽販売初日に行くことにしている。
さらに今年は、いつも買っている鉾とは違う鉾で粽を求めることにした。
うちにはもうすぐ十歳になるウサギがいる。爺さんウサギのために、月と兎をモチーフにした「月鉾」に初めて足を伸ばした。
そこで、タイトルの異世界である。
ここで話は変わるが、自分の作品や他の作家さんの感想欄でたまに目にする感想がある。
「その時代に車は存在しない」
「いったい、王は何をしていたのか」
など。
答えは、「異世界ファンタジーなんだからさ」「王が何かしたら話が進まない」しかない。こればかりは価値観や世界観の違いなのだから、仕方がない。作者と読者が合わなかっただけだと思う。しかし、感想欄のチクチク言葉はなぁ……。
などと考えていたら、目の前に現れた。異世界が。
鉾・鉾・バス・鉾・バス・タクシー・ウーバーイーツ……。
夜店が出るまでは基本、交通規制はするものの車両は普通に通っている。室町時代にその原型が作られた鉾と、現在の乗り物が見事に融合している。その横を、馬まで闊歩する日もあるし。
しかもここは、繁華街でありオフィス街でもある。
外国人・外国人・宅配業者・外国人・サラリーマン・私……。
そして聞こえる、お囃子の「コンコンチキチン、コンチキチン」と、横断歩道の「パッポ、パパポ」との融合。
「鉾とバスが共存する異世界、ここにあり」
案外近くに、ジェネリック異世界はあるのかもしれない。
粽も手に入れ帰路に就く。
途中で寄ったドラッグストア。会計中にアジア系外国人が私のかごに商品を入れてきたりと、ここでも小さな異世界を体感しながらも、来年はどの鉾の粽を買おうかと、今から楽しみで仕方がない。




