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大事な事はパグが教えた  作者: 双鶴


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7/11

あなたの名前、教えてください

月曜日。

ぼくは、名前のことを考えていた。

「パギー」って呼ばれるたびに、胸がポンって鳴る。

それって、名前に“気持ち”が乗ってるからだと思う。

じゃあ、あの人の名前は?

修一さんは、まだ知らない。

それって、ちょっとさみしい。


作戦名:「あなたの名前、教えてください」

目的:あの人の名前を知る。

手段:名札の話題から、自然に名前を聞く。

結果:ふたりが“名前”で呼び合える関係になる。


火曜日。

修一さんが「名前、聞いてみようかな…」って言った。

ぼくはしっぽを振った。

聞いてみよう。だって、名前って、関係のはじまりだから。


水曜日。

ぼくは首輪を磨いた。

銀色のプレートを、ぺろって舐めて、光らせた。

「お前、気合入ってんな」って修一さんが笑った。

うん、気合入ってるよ。だって、今週は“名前の週”だから。


木曜日。

修一さんが「名前って、聞き方むずかしいよな」って言った。

ぼくは耳をピクッと動かした。

むずかしいけど、聞かなきゃ始まらない。

ぼくは、そう思う。


金曜日。

ぼくは鏡を見た。

名札が、ちょっとだけくすんでた。

ぼくは鼻でこすった。

「お前、営業マンか」って修一さんが笑った。

うん、恋の営業マンだよ。


土曜日。

風が強かった。

葉っぱがベランダで踊ってた。

ぼくはその音を聞きながら、名前の響きを想像してた。

あの人の名前。どんな音だろう。どんな気持ちが乗ってるんだろう。


日曜日。

公園の空は、やさしい灰色だった。

風がちょっと冷たくて、でも匂いは春のままだった。

草と土と、ちょっとだけ花の匂い。

ぼくは歩いた。ゆっくり。でも、確実に。


あの人がいた。

ベンチに座って、白い靴をちょっとだけ前に出してる。

ぼくはリードを引っ張った。

修一さんがついてくる。


あの人がしゃがんだ。

「パギー、今日も元気ね」

声が、やさしかった。


修一さんが、ちょっとだけ笑って言った。

「ありがとうございます。あの……すみません、お名前、伺ってもいいですか?」


沈黙が、ちょっとだけ流れた。

でも、すぐに、笑顔が返ってきた。


「佐和子です」

声が、やわらかかった。

名前の響きが、風に乗って、ぼくの耳に届いた。


修一さんが「佐和子さん、ですね」と言った。

ちゃんと、はっきりと。

ぼくはしっぽを振った。全力で。


名前って、すごい。

呼ぶだけで、距離が縮まる。

聞くだけで、心が近づく。

ぼくは、そう思った。


帰り道。

修一さんが「佐和子さんか…いい名前だな」って言った。

ぼくはしっぽを振った。

うん、いい名前だよ。やさしくて、あったかくて、春みたいな名前。


反省点?あるよ。

修一さん、ちょっと声が小さかった。

でも、聞けた。答えてもらえた。

つまり、作戦は——成功。


次は、並んで歩く作戦。

ふたりが並んで歩く。ぼくがその間にいる。

ぼくはパギー。恋の応援団長。

次回作戦名:「並んで歩く、春の道」


いくぞ、来週!


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