名札と名前と、はじめまして
月曜日。
ぼくは首をかしげていた。
首輪って、ただの飾りだと思ってた。
でも、修一さんが「名札、つけてみるか」って言った。
名札?名前を書くやつ?
それって、ぼくの名前が“話題”になるってこと?
作戦名:「名札と名前と、はじめまして」
目的:あの人にぼくの名前を見てもらう。
手段:首輪に名札をつける。あの人が読む。修一さんが名前を呼ぶ。
結果:ふたりが“名前”を通じて関係を深める。
火曜日。
修一さんが、小さなプレートを買ってきた。
銀色で、ちょっと光ってて、「PAGGY」って刻まれてた。
ぼくはそれを見て、しっぽを振った。
なんか、かっこいい。ちょっとだけ誇らしい。
水曜日。
名札をつけて、鏡を見た。
うん、悪くない。
「お前、アイドルみたいだな」って修一さんが笑った。
ぼくはしっぽを振った。アイドルでも、参謀でも、恋のためならなんでもなる。
木曜日。
修一さんが「名前って、すごいよな」と言った。
「呼ばれるだけで、ちょっと嬉しくなる」
ぼくはその言葉を覚えておこうと思った。
名前って、ただの音じゃない。気持ちが乗るものだ。
金曜日。
ぼくは名札をつけて、ソファの下に潜った。
暗い場所で、光る名札。
なんか、秘密兵器みたいで、ちょっとワクワクした。
土曜日。
修一さんが「明日、見てもらえるかな…」って言った。
ぼくはしっぽを振った。
見てもらえるよ。だって、ぼくが見せるから。
日曜日。
公園の空は、やさしい青だった。
風がちょっとだけ強くて、葉っぱがくすぐる音を立ててた。
ぼくの鼻には、草と土と、春の終わりの匂いが届いてた。
あの人がいた。
ベンチに座って、白い靴をちょっとだけ前に出してる。
ぼくはリードを引っ張った。
修一さんがついてくる。
ぼくは歩く。ゆっくり。でも、確実に。
そして、名札を見せる。
首をちょっとかしげて、光を当てる。
あの人がしゃがんだ。
「パギー…っていうの?」
声が、やさしかった。
修一さんが「はい、パギーです」って言った。
ちゃんと、はっきりと。
あの人が「かわいい名前ですね」って言った。
ぼくはしっぽを振った。全力で。
名前を呼ばれるって、こんなに嬉しいんだ。
「パギー」って言われるたびに、ぼくの胸がポンって鳴る。
修一さんの声も、あの人の声も、どっちも好きだ。
帰り道。
修一さんが「名前、呼ばれたな」って言った。
ぼくはしっぽを振った。
うん、呼ばれたよ。ちゃんと、はじめましてができた。
反省点?あるよ。
名札がちょっと重かった。首が疲れた。
でも、読んでもらえた。名前を呼んでもらえた。
つまり、作戦は——成功。
次は、ふたりの名前を知る作戦。
あの人の名前を聞く。修一さんが呼ぶ。関係が進む。
ぼくはパギー。恋の応援団長。
次回作戦名:「あなたの名前、教えてください」
いくぞ、来週!




