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大事な事はパグが教えた  作者: 双鶴


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5/11

雨とタオルと、ちょっとした奇跡

月曜日。

空は曇ってた。

ぼくは窓の外を見ながら、雨の匂いを思い出してた。

濡れるのは好きじゃない。でも、雨の日には“やさしいこと”が起きる気がする。


作戦名:「雨とタオルと、ちょっとした奇跡」

目的:あの人に“世話を焼いてもらう”ことで、距離を縮める。

手段:雨に濡れる。ブルブルする。タオルをもらう。修一さんが感謝する。

結果:ふたりの関係に“やさしさ”が生まれる。


火曜日。

ぼくは水たまりを見つめた。

ぴちゃって踏んでみた。冷たかった。

修一さんが「やめろって…」って言った。

でも、ぼくはしっぽを振った。これは訓練だ。恋のための、濡れ訓練だ。


水曜日。

天気予報が「週末、雨」と言った。

修一さんが「どうするかな…」って言った。

ぼくは耳をピクッと動かした。

雨でも、行く。むしろ、雨だからこそ、行く。


木曜日。

ぼくはタオルをくわえて歩いた。

修一さんが「それ、持ってくのか?」って言った。

ぼくはしっぽを振った。

タオルは、奇跡の道具になる。


金曜日。

修一さんが「濡れるぞ、お前」と言った。

ぼくは目を見つめた。ウルウル瞳、発動。

修一さんが「……わかったよ」と言って、タオルをリュックに入れた。

作戦、準備完了。


土曜日。

雨が降った。

ぼくは窓の外を見ながら、鼻をくすぐる匂いを感じてた。

草と土と、雨の匂い。

ちょっとだけ、さみしくて、でもやさしい匂い。


日曜日。

公園の空は、灰色だった。

水たまりができてて、葉っぱが濡れてて、風がちょっと冷たかった。

でも、ぼくは歩いた。ゆっくり。でも、確実に。


あの人がいた。

ベンチの端に座って、傘をさしてた。

白い靴が、ちょっとだけ濡れてた。

ぼくはリードを引っ張った。

修一さんがついてくる。


そして、ぼくは水たまりに入った。

ぴちゃ。ぴちゃ。

濡れた。冷たかった。

でも、作戦だから。


ぼくはブルブルした。

水しぶきが飛んだ。

あの人が笑った。

「濡れちゃったね」

声が、やさしかった。


修一さんが、タオルを出した。

あの人が受け取って、ぼくの背中を拭いてくれた。

やさしく、ゆっくり。

ぼくは目を閉じた。

その手の温度を、覚えておこうと思った。


修一さんが「ありがとうございます」って言った。

ちゃんと、はっきりと。

あの人が「いえ、かわいいから」と言った。

ぼくはしっぽを振った。全力で。


帰り道。

雨は止んでた。

空がちょっとだけ明るくなってた。

修一さんが「……濡れてよかったな」って言った。

ぼくは胸を張った。

うん、濡れてよかった。奇跡、起きた。


反省点?あるよ。

水たまりが思ったより深かった。

お腹まで濡れた。ちょっと寒かった。

でも、タオルがあった。

あの人の手があった。

つまり、作戦は——成功。


次は、名前を呼ぶ作戦。

首輪に名札をつける。話題になる。名前を聞く。

ぼくはパギー。恋の応援団長。

次回作戦名:「名札と名前と、はじめまして」


いくぞ、来週!


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