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大事な事はパグが教えた  作者: 双鶴


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2/11

ウルウル瞳、発動!

月曜日。

修一さんは、いつものコーヒーを飲んで、いつものパソコンに向かった。

ぼくはソファの下で丸くなって、いつものように耳をくすぐられた。

でも、ぼくの頭の中は、もう“次の日曜”のことでいっぱいだった。


作戦名:「ウルウル瞳、発動」

目的:あの人の視線をぼくに向ける。

手段:目を見つめる。耳の後ろを見せる。しっぽを振る。

結果:修一さんが話しかける。できれば、名前を聞く。


ぼくは、ぬいぐるみのカエルを相手に練習した。

「よし、カエル。しゃがんでくれ」

カエルはしゃがまない。ぬいぐるみだから。

でも、ぼくは見つめる。ウルウル瞳、発動。

……うん、悪くない。ちょっと涙っぽさが足りないけど、まあまあ。


火曜日。

修一さんが「今週は晴れるかな」と言った。

ぼくは耳をピクッと動かした。

晴れなら、作戦決行。雨なら、延期。

でも、延期はイヤだ。ぼくのしっぽが、もう準備万端だから。


水曜日。

公園の夢を見た。

ベンチの下から、あの人の靴が見えて、ぼくがしっぽを振って、修一さんが「こんにちは」って言った。

夢の中では、うまくいった。

でも、夢は夢。現実は、もっとむずかしい。


木曜日。

修一さんが、ちょっとだけ笑った。

パソコンの画面を見ながら、「……いいかもな」って言った。

何が“いい”のかはわからないけど、ぼくはその笑顔を覚えておくことにした。

だって、日曜に使えるかもしれないから。


金曜日。

ぼくは鏡を見た。

ウルウル瞳、チェック。

うん、いい感じ。ちょっとだけ涙っぽさが足りないけど、光の入り方は完璧。

修一さんが「何見てんだよ」って笑った。

ぼくはしっぽを振った。作戦、順調。


土曜日。

修一さんが「明日、行くか」と言った。

ぼくは跳ねた。耳がぴょんってなった。

修一さんが「お前、わかってんのか?」って言った。

わかってるよ。だって、ぼくは恋愛参謀だから。


そして、日曜日。


公園の空は、ちょっとだけ青かった。

風がふわって吹いて、ぼくの鼻の中に草の匂いが入ってきた。

ちょっと湿った土の匂いも混ざってる。春の匂いだ。

鳥がピピピって鳴いてる。ぼくは耳をピクッと動かす。

あの鳴き声、好きなんだ。なんか、元気になる。


あの人がいた。

ベンチに座って、白い靴をちょっとだけ前に出してる。

ぼくはリードをちょっと引っ張った。

修一さんがついてくる。

ぼくは歩く。ゆっくり。でも、確実に。


ウルウル瞳、発動。


あの人がこっちを見た。

しゃがんだ。

ぼくは甘える。耳の後ろを見せる。これ、鉄板。

あの人が「かわいい…」って言った。

修一さん、しゃべれ!しゃべれ!……あっ、モゴモゴしてる。

でも、ちょっと笑ってる。あの人も笑ってる。

これは……進歩だ!


ぼくのしっぽが勝手に動いた。止めたいけど、無理。だって、あの人が笑ったから。


帰り道。

修一さんが「……ありがとうな」って言った。

誰に言ったのかはわからないけど、たぶん、ぼくだと思う。

ぼくはしっぽを振った。ちょっとだけ、誇らしく。


反省点?あるよ。

修一さんの声、まだ小さい。

あの人の名前、まだ知らない。

でも、目は合った。笑顔もあった。

つまり、作戦は——成功。


次は、声を出す作戦。

吠える?いや、うるさいか。

ボールを転がす?うん、それだ。

ぼくはパギー。恋の応援団長。

次回作戦名:「落とし物、拾わせろ」


いくぞ、来週!


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