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大事な事はパグが教えた  作者: 双鶴


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11/11

春の終わり、始まりの日。

月曜日。

ぼくは、桜の花びらを見ていた。

風に乗って、ひらひらと舞って、地面に落ちて、また舞い上がる。

春の終わりの匂いが、ぼくの鼻に届いてた。

ちょっとだけ、さみしくて、でもあったかい。


作戦名:「春の終わり、はじまりの日」

目的:修一さんが、佐和子さんに“また会いたい”と言う。

手段:ぼくがふたりの間に立つ。空気をつくる。言葉を引き出す。

結果:ふたりの関係が“はじまり”になる。


火曜日。

修一さんが「桜、もう終わりだな…」って言った。

ぼくは耳をピクッと動かした。

終わりって、はじまりでもある。

ぼくは、そう思う。


水曜日。

ぼくはベランダで風を感じてた。

草と土と、花の匂い。

春の終わりの匂い。

ぼくのしっぽが、ゆっくり動いた。


木曜日。

修一さんが「言えるかな…」って言った。

ぼくはしっぽを振った。

言えるよ。だって、ここまで来たんだから。


金曜日。

ぼくは鏡を見た。

耳の角度、しっぽの振り方、歩くときの姿勢。

全部、チェックした。

最後の作戦だから。


土曜日。

風が強かった。

桜の花びらが、空を舞ってた。

ぼくはその音を聞きながら、言葉のタイミングを想像してた。

風の音と、足音と、心の音。

全部が、ちょっとだけ重なる瞬間。


日曜日。

公園の空は、やさしい青だった。

桜の木の下で、佐和子さんが立ってた。

白い靴が、ちょっとだけ前に出てた。

ぼくはリードを引っ張った。

修一さんがついてくる。


佐和子さんが「こんにちは」と言った。

修一さんが「こんにちは」と返した。

ぼくはしっぽを振った。準備完了。


そして、歩いた。

桜の花びらが、ふたりの肩に落ちた。

ぼくはその間にいた。

三つの足音が、ちょっとずつ重なっていく。


沈黙があった。

でも、ぼくにはわかった。

その沈黙の中に、“言葉の準備”があった。


そして、修一さんが言った。

「よかったら、また一緒に散歩しませんか」

声が、ちょっとだけ震えてた。

でも、ちゃんと届いた。


佐和子さんが笑った。

「はい、ぜひ」

声が、やわらかかった。

ぼくはしっぽを振った。全力で。


帰り道。

風がふわって吹いて、桜の花びらがぼくの鼻にくすぐった。

修一さんが「……言えたな」って言った。

ぼくは胸を張った。

うん、言えたよ。ちゃんと、はじまりになった。


反省点?ないよ。

全部、やりきった。

ぼくはパギー。恋の応援団長。

ぼくの作戦、全部——成功だった。


そして、春が終わって、ふたりの時間がはじまった。


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