表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大事な事はパグが教えた  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/11

好きなこと、話してみて

月曜日。

ぼくは、ボールを見つめていた。

赤くて、ちょっと噛みあとがついてて、でもまだ跳ねる。

これが、ぼくの好きなこと。

遊ぶこと。転がすこと。追いかけること。

そして、見てもらうこと。


作戦名:「好きなこと、話してみて」

目的:ぼくの遊びをきっかけに、ふたりが話す。

手段:ボールを転がす。佐和子さんが反応する。修一さんが話す。

結果:ふたりの間に“共通の話題”が生まれる。


火曜日。

ぼくは廊下でボールを転がした。

カタン、コロン。カタン、コロン。

「またかよ…」って修一さんが笑った。

うん、まただよ。だって、好きなんだもん。


水曜日。

修一さんが「パギーって、ほんとボール好きだな」って言った。

ぼくはしっぽを振った。

好きなことって、見てるだけでわかる。

それが、話題になるってことも、あると思う。


木曜日。

ぼくはボールをくわえて、鏡の前に立った。

「お前、見せびらかしてるのか?」って言われた。

うん、そうだよ。見せびらかすよ。だって、見てほしいから。


金曜日。

修一さんが「佐和子さん、犬好きかな…」って言った。

ぼくは耳をピクッと動かした。

好きだよ。だって、ぼくのこと、笑ってくれるから。


土曜日。

風が強かった。

葉っぱが踊ってた。

ぼくはその音を聞きながら、ボールの転がる音を想像してた。

風の音と、ボールの音と、笑い声。

全部が、ちょっとだけ重なる瞬間。


日曜日。

公園の空は、やさしい青だった。

風がふわって吹いて、ぼくの耳をくすぐった。

佐和子さんがいた。

ベンチじゃなくて、立ってた。

白い靴が、ちょっとだけ前に出てた。


ぼくはリードを引っ張った。

修一さんがついてくる。

佐和子さんが「こんにちは」と言った。

修一さんが「こんにちは」と返した。

ぼくはしっぽを振った。準備完了。


そして、ボールを転がす。

コロン、コロン。

佐和子さんの足元へ。

止まった。


佐和子さんがしゃがんだ。

「このボール、好きなの?」

ぼくはしっぽを振った。全力で。


修一さんが「毎日、これで遊んでます」って言った。

佐和子さんが「かわいいですね。うちの子も昔、ボール好きでした」って言った。

修一さんが「そうなんですか?」って言った。

会話が、続いた。

自然に。やさしく。


ぼくはボールをくわえて、もう一度転がした。

コロン、コロン。

ふたりが笑った。

ぼくはしっぽを振った。全力で。


帰り道。

修一さんが「話せたな…自然に」って言った。

ぼくは胸を張った。

うん、話せたよ。ちゃんと、ぼくの好きなことで。


反省点?あるよ。

ボールがちょっと泥だらけだった。

佐和子さんの靴に当たりそうになった。

でも、笑ってくれた。話してくれた。

つまり、作戦は——成功。


次は、最後の作戦。

春の終わりに、はじまりをつくる。

ぼくはパギー。恋の応援団長。

次回作戦名:「春の終わり、はじまりの日」


いくぞ、来週!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ