助手席に魔王が座っています②買い物編
夢と日常が交差するローファンタジー。
ミオラの夢から生まれた存在の魔王ミルア。
2人のやりとりから、新たな気付きが生まれます。
夢で出逢ったキャラたちと、
ほのぼのした日常を過ごしながら、
夢とイメージの世界で様々な冒険も開始!
ミオラの心の成長の物語です。
前回に引き続きドライブデート編②をお送りします。
ほのぼの日常回をお楽しみください。
ミオラ(女性)視点でまとめています。
久し振りに隣町の
産直マーケットまで車で買い物に来た。
今回は初めてミルアと一緒だ。
彼と遠出するのは初めて。
地場産の野菜や
旬のフルーツがたくさん売られていて、
月に1~2回ほど買い物に来る。
ここの野菜は鮮度抜群!
朝採れ野菜が揃うからだ。
良いのか悪いのか、
スーパーの野菜との
違いが分かってしまう。
「着いたよ~」
助手席のミルアに声をかけた。
「広いな、緑が多い!」
助手席から降りたミルアは
大きな体で伸びをしてから、
ゆっくり周りを見渡した。
野菜の直売コーナーだけでなく、
大きな公園やカフェ、
農園も併設されている。
下草が生える公園に入ると、
ふかふかの土が
靴をバウンドさせるようだ。
地味が良いんだろう。
だからおいしい野菜が多いのかも。
ここに来るとよくそう思う。
「まずは買い物を済ませよう」
そう言うと、ミルアは素直についてきた。
野菜の直売コーナーは、
ちょっとしたスーパーほどの広さだ。
肉や魚はないが、
お惣菜やお弁当、
スイーツ・コーナーもある。
「すっげ~!!
見たことないのがいっぱい!」
野菜が大好きな
ミルアの瞳がキラキラしている。
子どものような無邪気さだ。
1人で野菜コーナーに足早に進む。
買い物かごを腕に下げて、
急いで彼の元に行く。
「ミオラ!ミオラ!!
これがいい、これ買ってくれ!」
何を見てるのかと思ったら、
黄色くて細長いプチトマトだった。
手にとって見てみると、
ヘタも緑色で新鮮そうだ。
「黄色いのがいいの?」
「うん!黄色いの!
赤いのは食べたことあるからな」
ミルアがプチトマトに興奮しているのが
おかしくて・かわいい♡
うん!なんて返事、
初めて聞いた気がする。
トマトコーナーに並んでた
使い勝手がいい
普通の赤いトマトも
一緒にかごの中へ。
ミルアはアチコチ
きょろきょろしては
足早に移動する。
小さい子と買い物に来てるみたい。
大きな彼の背中を見て
私は思わず、苦笑する。
そう思ってると
ミルアが、ふ、と後ろの私を振り返り、
困った顔でこう言った。
「荷物を持てなくて悪いな…
本当は俺が持つべきなんだが」
実体の無い彼には
出来ないことも結構ある。
そう言ってから、
彼は私に歩調を合わせて
ゆっくり動くようになった。
それでもミルアの新鮮野菜を見る、
キラキラした目は変わらず、
「ミオラ、これ!」と連発した。
彼が次々に選んだのは、
モロヘイヤや無農薬ブルーベリー、
白いトウモロコシ。
どれも旬のものばかりで、
見るからに新鮮だった。
特にブルーベリーは隣町の作物として
有名だし人気もある。
たくさん並んだブルーベリーから
ひょいっと選んだのが
無農薬ってのも面白いなと思う。
最期にお総菜コーナーを見ていると、
隣のお菓子コーナーから、
ミルアの声が聞こえた。
「これ、うまそう!」
そう言って選んだのが、
地元パティスリー手作りの
和風ミニ・マフィンだった。
やっぱりミルアは
甘いものが好きそうだ。
そういうところ、
魔王っぽくないなとよく思う。
世界最強で全知全能の魔王が、
スイーツに目がないっておかしい。
そう思うと胸がきゅんとした。
一通り買い物を済ませ、
荷物を車に入れてから、
農園やハーブ園を見に行きたいと
ミルアに声をかけた。
「俺も行くよ!」
今度はまるで
人懐っこい大型犬のように
従順についてくる。
私は日焼け対策に
つばひろの帽子をかぶった。
ここに来るとお散歩気分で、
園内を散策するのが好きだった。
深く呼吸をすると、
土と草木の香りが
身体の中に染み渡った。
「気持ちいい~♪
このところ室内ばっかりだったからね」
「そうだな。
まるで身体の濁りが掃除されるみたいだ」
ミルアが日の下で、
緑あふれる園内にいるのが
少し不思議な気もした。
彼もこの場所を気に入ってくれたようだ。
普通の男性だったら
退屈しそうな場所なのに、
彼が喜んでいるのがうれしかった。
周囲にはまだ緑色の葡萄がなってる。
田んぼの稲穂は青々としてるが、
少し実りの香りが漂ってきた。
稲穂の香りが、
かぐわしくて好きだった。
真夏の暑さはあるものの、
昨日の雨のおかげか、
いつもよりも風が涼しかった。
空は青く高く
大きな入道雲が
もくもくしていた。
5分ほど歩くと
薬用ハーブ園についた。
隣はブルーベリー農園だ。
去年、ここでハーブの苗を買って、
庭に植え付けたが、
苗がいいのか大株に育っている。
今は何のハーブの時期?
足を踏み入れようとした時、
アーチに這わせたツル科の植物の
つやつやとした赤い実が
目にとまった。
「これ、、、、」
思わず足を止める。
言葉が出てこなかった。
今朝の夢に見た赤い実に似ていた。
正確に言えば
実の形や枝ぶりは全く違う。
それでも夢で見た実に、
どこか共通点がある気がした。
後で調べようと写真を撮る。
「ハニーサックル、、スイカズラ」
説明書きにあった植物の名前を読む。
それも確認用に写真に収める。
それを、ひとりごとのようにつぶやくと
ミルアが声をかけてきた。
「知ってる植物なのか?」
「ううん、初めて見た実。
つやつやできれいで目にとまって。
今朝の夢に出てきた赤い実に似てるの」
「……意味深だな。
かわいい実だけどな」
ミルアは元々、
私の夢の深層から生まれた存在だから、
こういうところにも目ざとく反応する。
「夢分析との紐づけは、
うちに帰ってからにしよう。
この奥がハーブ園だよ」
そう言って、ミルアと一緒に
ハーブ園に入っていった。
この日はエキナセアが満開。
ピンクの大振りの花が沢山花開いていた。
夏の暑い盛りで、
他のハーブたちは
少しお疲れかもしれない。
エキナセアは生命力が強い植物だから、
この暑さにも元気に花を咲かせている。
「ああ、ここは薬草園なのか」
「いいな、ここは。色んな香りがする」
ミルアは時折しゃがみ込み、
ハーブに触れて香りを確かめた。
その植物を慈しむ様子が、
とても自然で美しいと思った。
彼と生活するようになって2ヶ月経つ。
当初は魔王として生まれ、
圧倒的な存在感を放っていたけれど、
最近はどんどん違う面が見えてくる。
そんな彼の変化が愛おしくもあり
不思議に感じるのだった。
毎日22時更新予定にしています。
(更新できない時はお許しください)
今回、本文中に出てきた夢の分析は、
後日、noteにて掲載予定です。
ミルアに関しては、
私のnoteやXにて
キャラメイクなども載せています。
noteやXでは物語ではなく
夢分析の切り口で書いています。
興味を持った方はこちらにも
遊びに来てくださいね♡
Mioraのnote:https://note.com/mio_dream_diary
MioraのX:https://x.com/MioraDreamDiary