表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/19

黒衣の影①ヒプナゴジアの嵐

夢と日常が交差するローファンタジー。

ミオラの夢から生まれた存在の魔王ミルア。

2人のやりとりから、新たな気付きが生まれます。


夢で出逢ったキャラたちと、

ほのぼのした日常を過ごしながら、

夢とイメージの世界で様々な冒険も開始!

ミオラの心の成長の物語です。


【黒衣の影シリーズ①】

ミオラ×ミルアの過去編、新章開始です!


ヒプナゴジアとは

入眠時イメージとも言い、

寝入りばなや目覚めの時に見る夢の一種。

つまり眠りが浅い時に見る夢です。


このエピソードはep.5の

癒しの歌と守りの幕:

ひよこのめぴると一つ目鬼ギガテクの魔法

前日譚に当たります。


ミオラ(女性)視点でまとめています。


noteにて登場キャラの

紹介ページを用意しました

イラスト付きです▼

https://note.com/mio_dream_diary/n/n50eb4f6065e8


この数日、眠るたびに

ヒプナゴジアの嵐に見舞われている。

心理的統合が近づいているかもしれない。


だからこそ

夢を一つ一つ丁寧に記録し、

その内容を分析しながら、

自分の心の深い部分と向き合う。


酷い時は30分おきに

ヒプナゴジアで起こされるのはキツい。

でも、やっぱりやっておこう。


この日もそうやって、

けだるい身体のまま、

夢の記録をつけだした。


これまでの男性関係や

恋愛関係にはじまり、

セクハラやストーカーの実体験が、

象徴化されて、連日、夢に現れていた。


夢の中で実際に身体に触れられた!

やめて!!と振り払ってから、

ギョッとして飛び起きることもあった。


目覚めても身体には

知らない男に触れられた

生々しい感触と

嫌悪感・恐怖感が残っている。


私が目覚めておびえていると

そのたびに横で眠るミルアも目覚め、

泣きそうになっている私を

優しく包み込んでくれた。


恐らくこのヒプナゴジアの嵐は

父娘関係にも起因している。

漠然とそう気が付いていた。


そんな夜が何日も続く内に、

ぼんやりと幼い頃を

思い出す時間が増えていった。


ーーーーーーーーー


幼い私は1人の時が怖かった。

電気を消すと

すぐ泣きそうになった。


暗闇の奥から、何かがこちらを

じっと見つめている気がして。


布団に潜って目を閉じても、

耳をふさいでも、

その気配は消えなかった。


むしろ――どこにいても、

必ずついてくるのだ。


黒衣の虚無僧。


頭から足先まで

墨のような黒衣に覆われ、

顔は笠に隠れて見えない。

足は素足に草履履き。


ただ、尺八の音だけが、

どこからともなく聞こえてきた。


低く、湿った調子で、

身体に響くような

深いバイブレーションが

私の背筋をぞくりとさせる。


――また来た。


心臓がどきんと大きく跳ねる。

足音はしない。

ただ、影のように、

いつの間にか近くに立っている。


手を伸ばせば触れられる距離なのに、

絶対に触れたくないと思った。

これ以上近付いてこられたらどうしよう…。


「……いやだ、やめて……

 こっちに来ないで!…お願い……」


声にならない声で必死に祈った。

でも虚無僧は、何もせず、

ただそこに立っているだけだった。

攻撃してくるわけでもない。


けれど、幼い私にとっては、

十分に恐ろしい悪霊にしか見えなかった。


毎晩のように、

夢でも現実でも彼は現れる。

時には日中でも。


誰に話してもそんなものいないと言われるのは

幼い私にも本能的に分かっていた。

だから誰にも言わないようにしていた。


それでも気が付く人はいる。


母がそれに気が付いたのだ。


怯えて不安定になり、

たびたび発熱して

体調を崩すことが増えたからだった。

そして、それは父が知るまでになった。


父は私のことを、

いつも理解しかねていた。


不思議なキャラクターを絵にしたり

想像の世界を物語にして

文章を書き続けるくらいなら、

まぁ、いいだろうと思っていたようだ。


それがついに

幻覚まで見るようになった!

と思ったようだった。


ついには父から

この子は異常だ!と言われ、

小児精神科病棟に強制的に入院させる

という話まで出たようだ。


それを母が何とかして押しとどめていた。


………何年も後になって

そういう風に母が話してくれた。


あの時、母が

必死に父を止めなかったら

恐らく今の私はいないだろう

と後で聞かされて愕然としたのだった。


実の父にそれほどまでに言われていたのか。


そう思うと、いつも父に自分の全てを

否定されたような気がしていたのは

勘違いじゃなかったと思った。


ーーーーー


その後も数年、

虚無僧は、私に危害を加えることはなく、

そばに存在し続けた。


ただ、どこまでもついてきて、

何も言わず、たまに尺八だけを吹き、

漠然とそこに立っていた。


訳の分からない存在を

私は恐れ、徹底的に避け続けた。

見えないふり・聞こえないふりをし続けた。


見えてはいけない・聞こえてはいけない…。

その数年間、自分にそう言い続けていると、

いつの間にか本当に見えなくなっていた。


そして私はその存在すら忘れていったのだ。


ヒプナゴジアの連続で

寝不足と疲労でぼんやりしながら、

その時の虚無僧が急に思い出された。

子どもの時以来、思い出したことも

考えたこともなかったのだった。


――あれは本当に、なんだったんだろう。


成長した今だからこそ冷静に考えられるけど、

当時の私には悪霊ストーカーにしか思えなかった。

子ども心に逃げられないと悟っていた。

だから余計に、彼の存在は恐怖そのものだった。


今、思えば、あれはどこか

幼い私を見守っていたのではないか?


ふと、そう考えた時、

何かが私の中で動いた。


けれど、それを

見守りと解釈できるほど、

幼い私の心は成熟していなかった。


まして少女の私は、それを

両親に分かりやすく伝える術もなかった。

何よりも脅えが先行して、

冷静に考えることもできなかった。


これまで心理学や精神保健、

時には哲学やスピリチュアル・歴史文化まで、

色んな知識を吸収してきた今だから、

やっと、こういう風に

考えられるようになったのだ。


学校では普通の子を装っていたし、

友達もたくさんいた。


一緒に帰る子たち、

互いのおうちに

遊びに行き来する子も複数いた。


成績は中の上くらい。

女の子とも男の子とも

仲良くできる子だったと思う。


当時の私は普通の子になりたい、

が口癖だった。

だから虚無僧の話など

誰にもしたことは無かった。


それでも見抜く人はいる。


一番仲良しだった

男の子が気が付いたのだ。


「お前、何か無理してるんじゃないのか?

 どうして我慢してるんだよ?」


彼の一言が私に胸の内に

深く突き刺さったのを

今でも、よく覚えている。


その男の子とは、

その後、初恋同士で

それぞれの家族も知る仲になった。

 

……今思えば、母が味方でいてくれたからこそ、

私は壊れずに済んだのだと思う。


「この子は病気じゃない。

感受性が強すぎるだけ」

――母はよくそう言っていた。


そしてあの男の子も、

ある意味で感受性が

強い子だったのだろうと思う。


学校の先生も含めて

両親以外の他の誰もが気が付かない私を、

彼だけは気が付いたのだ。


あの少年とは、その後、

私が体調を崩しがちになって、

疎遠になっていった。


どうやら互いの親が話し合って、

やめさせた方がいいとなった

と後々聞かされた。


幼い少年だったあの子の面影が、

ふと、いつものミルアに重なった。

ミルアの乱暴な言葉使いが、

初恋の彼の口調と重なって、溶けて消えた。


横から柔らかく

抱きしめてくれるミルアの体温を感じて、

私はやっと眠りに落ちていった。


遠くで、また低く湿った尺八の音が、

どこからともなく、聞こえた気がした。

だが、今はミルアの温かさに包まれ、

その音も夢の一部にしか思えなかった。

最後までお読みいただき

ありがとうございました♡

毎日22時更新予定にしています。

(更新できない時はお許し下さい)


この黒衣の影は中編シリーズで

展開を予定してます。

少し重いお話になるけれど、

必ず昇華に向かい

ハピエンで終わらせます。


虚無僧はあくまで

象徴的な存在として

現れたものです。


内的キャラとの関係性も

描かれていきますので。

次回もお楽しみに!


私のnoteやXにて

キャラメイクや

制作裏話なども載せています。


noteやXでは物語ではなく

夢分析の切り口で書いています。

興味を持った方はこちらにも

遊びに来てくださいね♡


Mioraのnote:https://note.com/mio_dream_diary

MioraのX:https://x.com/MioraDreamDiary

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ