夢という異界⑤~これがラスボス?!トラウマの核と向き合う~
夢と日常が交差するローファンタジー。
ミオラの夢から生まれた存在の魔王ミルア。
2人のやりとりから、新たな気付きが生まれます。
夢で出逢ったキャラたちと、
ほのぼのした日常を過ごしながら、
夢とイメージの世界で様々な冒険も開始!
ミオラの心の成長の物語です。
【夢という異界シリーズ⑤】
前回の中ボス戦で終わりじゃないの?!
初回のチュートリアル的な
簡単なクエストだと思ってたのに~!
夢という異界シリーズの最終話です。
このエピソードは
魔王ミルアとミオラが出会う前の話です。
ミオラ(女性)視点でまとめています。
noteにて登場キャラの
紹介ページを用意しました
イラスト付きです▼
https://note.com/mio_dream_diary/n/n50eb4f6065e8
サイクロップスが消えた後、
隣家の部屋の中で
ぽっかりと空いた空間を見つめながら、
私は息を整えた。
中ボス戦が終わったはずなのに、
どこか重苦しい空気が残っている。
まるで、戦いの残滓のように、
暗く不穏な気配が漂っていた。
戦いとゆーか、実質は、
めぴるの歌で弱体化したころに、
私が一言声をかけただけだ。
それで巨体の
一つ目サイクロップスは消滅してしまった。
あれは何だったんだろう?
呼吸を整えるために
そんなことを考えていると、
めぴるがかわいい声で
小さくつぶやいた。
「……ミオラ、来るよ。。。
大丈夫だから見てて…」
その瞬間、目の前で
サイクロップスのみぞおちから漏れていた
黒いもやもやが濃く集まり、
形を変えながら立ち上がる。
それらが濃縮されて、
小さなブラックホールのような
塊になっていった。
光をほとんど通さない漆黒のガスの塊は、
その中に何かを閉じ込めているかのように
チカチカと光が反射している。
人の影、過去の記憶、避けてきた痛み
――その全てが一つの塊の中で
蠢いているようだった。
高密度のガス生命体のように、
ゆらゆらしながら、
目の前で浮かんでいる!
「めぴる、、あれは?」
そう問いかけても
めぴるは何も言わなかった。
ガスのような存在なのに、
同時に美しい鉱石のようでもあった。
中に瞬く光をじっと見てみると、
小さな映像がいくつもいくつも
詰まっているようだった。
泣いている少女。
怒鳴っている男性。
高原の上にそびえる1本の木。
何かの石像。
割れた食器のようなもの。。。
私の心臓は早鐘のように打ち、
身体の奥から緊張が押し寄せる。
圧倒的な存在感。
これに少しでも触れたら、
ひとたまりもない気がする。
それほどの禍々しさだった。
向こうがその気になれば、
こちらは一瞬で吹き飛ばされ
跡形もなく消し去るくらいの、
強いエネルギーが凝縮されてるのだろう。
おそらく戦うべき対象としてではなく、
向き合うべきものとして
目の前にあることを直感で理解した。
そもそも、これは今、
向き合うことしかできない。
これほどの高密度のエネルギーの塊は、
消し去るなんて、できそうもない。
とてもじゃないけど、
倒せるような存在ではないからだ。
これは抑圧されていた恐怖やトラウマの象徴。
サイクロップスが守っていたために
表に出なかった影の核が、
ついに姿を現したのだと思った。
私は自然と呼吸を整え、焦らず、
恐怖を押さえつけようとせず、ただ見つめた。
「倒す…のじゃなくて、
受け止める…しかない…
理解するだけでいい。。。」
ひとりごとのように、
そう、つぶやいた。
自分にそう言い聞かせながら、
私は、この恐怖に向き合うことにした。
黒いガス塊は、静かに、
しかし圧倒的な存在感でそこにある。
目の前にあり続けるだけだった。
見つめることで初めて、
このガス塊を制御する可能性が探れる。
心の中で少しずつ共存可能な範囲に
縮小していくような感覚だった。
こんなにも大きな存在が、
私の中にあったのか。。。
…今は対峙するしかできない。
それだけ大きなトラウマの塊だった。
恐らく私個人のものだけではない。
集合意識レベルのトラウマだとしたら、
戦うことも・倒すことも・
消滅させることも不可能だ。
これは人類が心の最奥で共有している、
根源的なトラウマだからだ。
私1人の力で、
どうにかできるものではない。
そう思った。
そうだ、これに、名前を付けよう。
仮称でもいい。
きっと今後も向き合うことになるだろうから。
だったら呼称があった方が理解しやすい。
そう考えることで
私はどんどん、
落ち着きを取り戻していった。
「めぴる、、、あれ、
ニグレドって呼んでも平気かな?
初めてだけど、たぶん、
また向き合っていかないと
いけないものでしょう?」
ユング心理学で
黒化と呼ばれる段階
……ニグレド。その名を借りよう。
「うん、分かった。いいと思うよ」
めぴるはかわいい声でそう答えた。
その声でやっと身体の緊張がほどけてきた。
もう一度、ニグレドに目を移すと、
中の映像で一つだけ
特に気になるものがあった。
長い髪の、美しい異国風の女性だった。
そうしてる内に、ほんの少しだけ
ニグレドはガスの圧力を弱めたのかもしれない。
闇の密度が和らいだ気がした。
戦闘ではなく見届ける――
これがこの「ラスボス初回遭遇ミニクエスト」
の意味だと思った。
これ以上、ニグレドを消去することはできないが、
認識することで心は軽くなり、
次に向けた準備が整う。
心理学上も筋が通っていると思った。
私はこの瞬間、心理的統合の
第一歩を踏み出していたのかもしれない。
あとあとになってそう気が付いた。
恐怖やトラウマを無理に消す必要はなく、
受け止め、存在を認めることこそが、
力を弱め、共存の感覚を作るのだと
体感したのだった。
ーーーーーーーーー
自分の呼吸に意識を向ける。
肺が動く、胸が隆起する。
腹式呼吸を意識して、
おなかまで呼吸を送る。
そうすることで身体感覚が戻ってきた。
これがイメージワークから
覚醒するルーティーンだった。
手や足の指先を少しずつ動かす。
ゆっくり目を開けると自分の部屋だった。
時計を見るとイメージワークを始めてから
40分ほどしか経っていなかった。
体感では3時間ぐらい
経ってる気がして、
思わず苦笑した。
やっぱりリアル体感VR・RPGね。
没入感がハンパない。
横になってるだけなのに、
かなり疲労を覚えていた。
深く息を吐き、もう一度目を閉じた。
すると小さなひよこのような存在、
めぴるがそばで優しく歌い始める。
「…めぴる…?いるの??」
ひょこっと何かが動き、
横になる私のおなかの上で声がした。
「うん、当たり前じゃないか~。
ミオラ、疲れたでしょう?
今、歌を歌ってあげるね♪」
もはや夢とイメージの世界が
現実を侵食し始めた。
大丈夫かな?私?
そんな戸惑いも強かったが、
心身の疲労がひどくて、
めぴるの歌の心地よさに身をゆだねる内に、
それもどうでもよくなった。
その歌は、戦いの余韻で
緊張し硬くなっていた、
身体と心をじんわりと癒し、
無意識の奥に残った不安を
優しく包み込んでくれた。
めぴるの歌は、夢の中だけでなく、
現実世界でも癒しを発揮する。
心の奥底で縮小したニグレドの存在を、
受け止めたまま静かに
共存できるようになる兆しかもしれなかった。
ほんの少し小さくなったニグレドの気配が
まだ胸の奥にある気もしたが、
めぴるのおかげで
だんだん気にならなくなっていった。
黒い塊は消えなかった。
けれど、見つめ、名をつけたことで、
何かが変わるはずだ。
今は、それで十分だった。
もう一度、ゆっくりと呼吸を繰り返す。
私はめぴるの温かい歌声に浸った。
そのまま夜は更けていったのだった。
最後までお読みいただき
ありがとうございました♡
毎日22時更新予定にしています。
(更新できない時はお許し下さい)
このお話は中編シリーズ
としてまとめてきましたが、
今回でいったんまとめです。
①~⑤まで読んで下さった方、
ありがとうございました。
今後は魔王ミルア×ミオラの過去編や
新たな冒険も始まる予定ですので、
お楽しみに!
私のnoteやXにて
キャラメイクや
制作裏話なども載せています。
noteやXでは物語ではなく
夢分析の切り口で書いています。
興味を持った方はこちらにも
遊びに来てくださいね♡
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