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34 迫る手

「クラムさん、さっきの………ハグレーラさんって、クラムさんのお友達なんですか?」


なんだかんだ言って、仲がよさそうだったので…、とコールは続けて言った。


「おっ、お友達ぃぃ!!?」


あ、あいつと仲が良さそうだってぇ!?

冗談じゃない。アイツの顔を思い浮かべ、しかめっ面をしてやった。


「何年か前から交流があるだけさ。別に仲が良いわけじゃない。けど……。」


南方商人(サウセラー)であるハグレーラの商的センスは、はっきり言って大陸にいる商人の中でも抜群に秀でている。あまり褒めたくはないが……すごい男であることに間違いはない。


「ま、尊敬はしてるかな。()()。」

「そ、そうですか……。」


一応というところを強調させたからなのか、コールは少し困惑していた。

さて……僕らもそろそろ、行かなければ。


レーヴの街で起きた、穀物不作。

それは、フーロン商会が「管理」と称して畑に介入し売りつけた、“魔力矯正剤”による人為的なもたらしであった。

そしてその“魔力矯正剤”は…“育成剤”と名前を変えて、改良版が出回っている。

もちろん、フーロン商会の名義で。

しかし、それは今までの“矯正剤”とは別物のように、効果があるらしい。実際に見た訳では無いが、ラーズの街では穀物がよく採れるようになったようだし、ほぼ確定で間違いないだろう。

更に言えば、彼らはレーヴが“大陸の畑”に名を連ねる前、つまり“鉱山の街”だった時には何の関与もしなかったのに、閉山後に商店を置くようになった。

そして今、ほぼ同じ条件であるエレッセ国営鉱山のコンペに、出場しようとしている。

あからさまだが……これらを追求するには、証拠が必要だ。無ければすべて、憶測にすぎなくなる。

だから僕らは……証拠を集めた。

ただ、()()()()()()

……色々考えても仕方がないね。

両頬をパンと叩き、気合を入れる。


僕らの目指す、エレッセ王城はもう目の前に迫っていた。



所変わって、レーヴの街の中心部。

その人物は、中央広場を横切り、とある場所へと走って向かっていた。


「はぁ………はぁ………急いで……これを、ウェリス様に届けなければっ…………!!」


足が着くたびに、街道の石畳の隙間にたまった土ぼこりが、小さく舞う。

彼女は息を切らし、一直線に向かっていった。

しかし…。


「……おっと、待ちな。」


そこに、黒いローブをまとった一人の男が両手で行く手を阻み、立ちはだかった。男の後ろでは、小さく魔法陣が消えかかっていた。


「……恨みはないが、許せよ。」


そうぼやき、ポキポキと指を鳴らしながら、男は近づいていく。

その女とは………何かを大事そうに抑えた、セリだった。

男は助走をつけ、一気に取り押さえようとする。

セリはそれをパッと翻り、避けようとした。しかし…。


「残念でーした☆ 追手は一人だけじゃないって、わかんなかったー?」


その先には、黒いローブを羽織り、小さなバッジを胸元につけた少女が立ちふさがった。少女の右手には、炎の魔法装填がなされていた。


「ちょっと待ってください!!何かの人違いじゃないですか!?私はただの一般人で……。」

「……フーロン商会の機密情報を持っているお前が、一般人なのか。」

「………っ!?」


男のその一言で、セリは反射的にポケットを覆うよう、手を回す。男はそれを見て、察した。


「やはりな。()()()の言う通り、この女が、フォクサル※だったってわけか。」

「セリさん……()()()()()()()()()()。あなたのことは、調べさせてもらったよ♪」


二人はそう言いながら、魔法装填を進める。


……迂闊でした。こんなことなら、素直にあのクラムとかいう商人に、最初から引き渡しておけば良かった……。

そう考えるセリは、胸の中でぐるぐると、色々なものが渦巻いていた。小さく、ため息をつく。


「一つだけ伺いますが……あなた方は、一体何者でしょうか。少なくとも、私が予想していた人々とは……姿が異なるようなので。」


そう言い、セリは二人の服装を見る。羽織る黒いローブの下から、服がちらっとだけ見えるが……緑色ではない。それに、赤のワンポイントがないことから、少なくともフーロン商会の制服を着ているわけではないことが伺える。

セリは、これまで会ってきたフーロン商会の関係者と顔を照らし合わせるが………該当者はいない。

ならば…、何処の誰なのか。


「……答えるわけにはいかないねー、()()()との約束だから、さ。早く渡してちょーだい。」


その時、耳元についたアクセサリーが、小さく揺れた。それは……ハグレーラと同じ、南方商人(サウセラー)の特徴である。

※…この世界で使われる、特徴的な比喩表現、慣用句表現です。

フォクサル…地球でいうところの、キツネに似た魔物。一匹いっぴきはかなり弱いが、三、四匹で群れて集団として襲いかかってくるため、油断は禁物。騎士団や冒険者が初心者研修の一環として討伐を課される魔物でもある。

「ずる賢さ」を表す比喩表現としても使われる。

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